最高だったよ。—おやきと文学—
微熱ブックカフェに行ってきました。
微熱ブックカフェでの時間は、まだ自分のなかにしまっておきたいような気もします。
でも、やっぱり、最高だったよ、と伝えたくなりました。
行きたくても行けなかった方、羨ましがらせてしまったら、ごめんなさい。
先に謝っておきます。
東京のとあるビルに向かって私は走っていた。
ワークショップのはじまる時間ギリギリになっていたから、かなり焦りながら。
部屋の前で、ここで合っているかな、と扉の前でスマホを取り出して確認しようとすると、扉が開いて、きゅるん、きゅるん、ふわふわなかわいいおねえさんが、「ねむいねこです」と言って登場する。
ひょえー、ねむいねこさんって、こんなかわいらしい人なのかとドキドキしながら、会費を支払う。かわいらしい人なのだろうということは、普段のnoteから想像してはいたのだけど、あらためてこんなステキな人に、あんなにやさしい言葉をかけていただいていたなんて、と恥ずかしいやら、うれしいやら。
ワークショップにはすでに参加される皆さんが着席していた。藤のコースターのつくりかたを教えてくれるくまさんが、ワークショップに参加されるみなさんのことを紹介する。
紹介の言葉選びが、その声のトーンが、ああ、ここにいるのは本当にくまさんなんだと教えてくれる。
みんなの緊張をほぐしてくれるやさしい言葉。
くまさんからのコメントが、私は大好きなのですが、それをくまさんの声で聞ける贅沢さよ!
はじめましてのリチさん、そして、ほのぱぱさん、かなこさんと、ワークショップに参加した。
手元には、途中まで既に編んだ籐が配られた。手元に集中しなければいけない、と思いながらも、なんだかこの夢を見ているような状況に私はまだついていけない。
だって、だって。いつも画面の向こうにいる皆さんが、隣にいるんですよ。
この状況に、クラクラしてしまう。
ふと意識を手元に戻すと、コースターがぐちゃぐちゃになっている。
しかも、平面をつくっているはずなのに、私だけ立体になってきてしまう。巻きつけかたが不十分で、ふわふわと藤がふくらんできてしまったのだ。
noteで何度か手先が不器用アピールはしてきたものの、たぶん普段の料理の写真やらイラストで私のイメージをいだいている人は、幻滅させてしまうかもしれない。でも、これで私の不器用アピールが嘘ではないということがお分かりいただけたと思う。
くまさんに何度か助けを求める。くまさんは、立体になってきてしまった私のコースターも、このままカゴにしたらきっとかわいい、と優しくフォローしてくれる。
こうして、歪な私のコースターは、ちょっと不恰好だけど、かわいいカゴになった。
作業中、はじめましてのtreeさんが、昨日おだんごさんの記事で紹介されていたよね?と話しかけてくださったり、あやしもさんがコースターづくりの様子を気遣ってくださったりして、すごくうれしかった。でも、今回は、不器用なあまり、まともな返事ができなかったことがとても申し訳ない。
ワークショップのあとは、微熱さんのおやきの時間!
私はかぼちゃ味をいただいた。かぼちゃはほくほくふかふか。ほんのり醤油が香るみたらし味。生地は、薄すぎず厚すぎず、ふわっと、もちっのいいとこどり。
ほかほかのおやきをみんなで頬張っていたら、くまさんが「ああ、しあわせ。私、すぐしあわせって言っちゃうんだよね」と誰にともなく言う。
そんなくまさんの言葉に、みんながにこにこしている。
みなさん、noteの文章のイメージどおり。
ひだまりのなかに爽やかな風が吹いているようなほのパパさん、上品さと快活なスポーツマンらしさが共存しているかなこさん、みんなのことをやさしい目で見守っているあやしもさん。
イメージどおり、と言ったけれど、ちょっとちがうかもしれない。
話しているうちに、少しずつその人の書く文章と、目の前の像が結びついていくような感じだった。
みんな普段のnoteから、ステキなイメージをもっていると思う。
でも、実際に会うと、期待を裏切らない、どころか、もっともっとステキだった。
微熱さんが、みんなにおかわりをしないか尋ねていた。
私も、内心、もっともっと食べたい!と思ったけれど、すごくすごくおいしかったから、ぺこりんにも食べさせたいな、と思った。ぺこりんは、かぼちゃが大好物だから、きっと喜ぶだろうなと思って。
ひとつお持ち帰りにしたい、と微熱さんに言うと、まわりにいたみなさんが、そっか、ぺこりんさんに持ち帰るんだねと、私はまだぺこりんのぺの字も出していないのに、わかってくれている。
それがすごく心地よくて、くすぐったい。
ももこさんにおうちで全部食べてもらおうっと!と言って、微熱さんは袋いっぱいにおやきを詰め込んでくれる。
そう、まだ微熱さんのことをお話ししていなかった。
まったく微熱さんという人は、なんて人なのでしょう!
微熱さんのエッセイを読むと、映画を観ているような、小説を読んでいるような気持ちにさせられるのは、私だけではないはず。
そして、微熱さんのエッセイを読んでいると、微熱さんって、まるで村上春樹の小説の主人公のように、どこに行っても、モテるなぁと思っているのも、きっと私だけではないはず。
でも、微熱さんに会って納得した。
この人が歩けば、それだけで映画になりますよ、小説になりますよ。
全人類が軽率に恋に落ちちゃいますよ。
いや、ちがうな。
みんなが、真剣に、恋しちゃうと思います。
狭い部屋のなかで、くるくると回って、一生懸命お話ししてくれて、すごく楽しそうで、すごく自然で。
みんなそれぞれに対して、ひとりひとり、特別扱いしてくれていた。
「ねぇ、ねぇ、桃子さん。ブックカフェの店長さんのはずだったのに、ただのおやきやさんになっちゃったよ」とちょっとだけ困ったように、微熱さんはかわいく笑っていた。
猫のエプロンと、真っ赤なシャツと、碧のアイラインが、素敵に似合ってました。
微熱ブックカフェでは、自分の大好きな本と、誰かの大好きな本を交換できる。
私は大好きな漫画、カシワイさんの『光と窓』を持って行った。
ブックカフェコーナーには、太郎さんがソファに座っていた。私はソファーに座りながら、本を選びはじめる。
本の並ぶテーブルの向こうには、といさん夫妻が和やかに本を読んでいる。
ここで、私はひとつかなり後悔していることを告白しよう。それは、このブックカフェに参加する前に、太郎さんのnoteを読んでいなかったこと。帰りの電車で太郎さんの記事を読んで、どうしてこの人の記事を読んでいなかったんだろう、とすごく後悔した。
けれども、太郎さんは、そんな私のnoteも読んでくださっていたようで、出身も、仕事も、そして夫の出張先まで覚えていらっしゃって、かろやかに会話を繋げてくださる。
そんな太郎さんの記憶力と、引き出しの多さに驚きつつ、やわらかなお話の仕方がとても心地よくて、(太郎さんは他の方ともお話ししたかったのでは、と思うのだけど)しばらくはじめましての太郎さんの隣で私はまったりしていた。
ブックカフェ用の本とは別に、微熱さんにあげたい、と思って持ってきた本を私はリュックから取り出す。
それは、永井宏さんの『サンライト』という本。
この本を微熱さんに渡していると、太郎さんが、わぁっと顔を輝かせる。
私が、微熱さんみたい人のエッセイです、と言いながら、微熱さんに渡すと、隣で太郎さんが「うんうん、なるほどね、たしかに、そうだね」と言って顔をくしゃっとさせる。太郎さんと意見が一致したことが、とてもうれしい。
これ、あげちゃっていいの?と太郎さんは聞いてくれた。
宝物みたいな本だ。だけど、だからこそあげたいなと私は思う。
と言うのは照れくさいので、他にも永井さんの本を買ったから、と言い訳した。
私が持ってきた『光と窓』は太郎さんがもらってくれた。
太郎さんがそれを手に取ったときは、私が薦めたから無理に受け取ってもらってしまったかな、と思ったけれど、太郎さんがもらってくれてうれしかった。太郎さんにも気に入ってもらえるといいな。これも私の親友のような本です。
私がいただいた本は、4冊。
・江國香織『泣く大人』『泣かない子供』(江國香織さん、大好きです。)
・カルヴィーノ『むずかしい愛』(『まっぷたつな子爵』しか読んだことがないので、他のも読んでみたい)
・仁平綾『ニューヨーク おいしいものだけ』(ニューヨークは一度行ったことがあります。またいつかいきたいな。写真を見ているだけでも、うっとりできそうな本)
持っていった本が2冊で、もらった本が4冊というのはちょっといかがなものかと思う。
でも、微熱さんから「持ち帰るの大変だから、たくさん持っていって」とお願いされたのだから仕方ない。
大切に読みます。
微熱さんは、参加したみんなにブックカバーと栞くれた。これだけでも参加費分以上の価値があるよね、というブックカバーとしおり。
親しみやすいかわいらしさの奥に、微熱さんの熱が込められた作品たち。のびやかな線とポップな色づかいはとてもシンプルなのに、物語がそこにあることを感じさせる奥行きがある。
しばらくもったいなくて使えなそうだけど、眺めるたびに、この日を思い出してにこにこしちゃうと思う。
この日、素敵だなと思ったのが、参加された方々が、最後の片付けまで楽しそうにしていたこと。特に、にこにこと台所の隅から隅までお掃除しているおひたちさんの姿が印象的でした。
途中で帰るのがもったいないというか、ただもう少し長くいたくて、私もスタッフの皆さんと一緒に最後まで残ってしまった。
私が家に帰ると、この日仕事だったぺこりんはちょうどお風呂から出たところだった。
私の顔を見るなり、「楽しかったんだね、よかったね!」とぺこりんに言われる。
言わなくても伝わってしまうくらい、すごく楽しかったのだ。
翌朝、ぺこりんとお土産のおやきをいただく。
微熱さんは、おやきを6個も包んでくれていた。
かぼちゃ味はもちろんのこと、インドカレー味も、ピザ味も、うま!うんまっ!としあわせそうに食べている。
今度は一緒に行こうね。きっとまた次もあるはず。
この日、私と会った人はたぶんわかっただろうけれど、私の場合、面と向かって話すほうが、noteの記事を読むよりも情報量が少ない。
口に出す言葉のほうが、心の中で思っていることよりずっと少ないから。
たぶん、noteの記事を気に入ってもらっていたとしても、私と会ってもちっともおもしろくないかもしれない。地味だし無口だし無表情だし。
それでも、私は、会いたいなと思う。
思っていたよりつまらんやつだと思われてもいい。
人からどう思われるかなんて、どうでもいいよ。
だれかと一緒に楽しい時間を過ごせたら、それでいいじゃん。
そう思える日だった。
そんな時間をつくってくれたのが、微熱さんであり、微熱さんのもとに集まった人たちだった。
本当に、本当に。最高な1日だったよ。