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晴れの日も雨の日も

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そのとき感じたことを感じたままに綴るエッセイ集。晴れの日のように澄みきった気分のときも、雨の日のように翳りに覆われるときも、その気持ちを、透明な言葉で伝えたい。
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#ライフスタイル

ハレの日の美術館

よく晴れた5月のある日、私たちは美術館で結婚式を挙げた。 結婚式といっても、参加者は私と…

如月桃子
2年前
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おとなだって、夏休みを楽しむのだ

夏休みがはじまってから、たくさんの子どもたちが美術館にやってくる。 普段学芸員室の自分の…

如月桃子
2か月前
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「つづかない」私がつづけている朝の習慣

継続は力なり、という言葉がちょっぴり苦手だ。 なにかを毎日コツコツとつづけられる人たちに…

如月桃子
4か月前
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どこでも住めるとしても、きっと君の隣を選んでしまう。

私が、初めて自分で決めた場所に暮らしたのは、大学4年生のときのことだった。 それまでずっ…

如月桃子
1年前
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しあわせのつくりかた

こうしたら、絶対にしあわせになれる、という方法はおそらく存在しない。 「善く生きる」方法…

如月桃子
2年前
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ふつうがいちばん…

小学生の頃、長期休暇の前にはかならず成績表が配られた。 家に帰ると、私はまずそれを母に見…

如月桃子
2年前
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もう海に沈めなくてもいいように

「コンクリートに括りつけて、海に沈めてしまいましょう」 同僚が言い放ったその物騒な言葉を、お守りのように胸に抱いていた時期がある。 その同僚と出会った職場は、博物館だった。 私は、大学を卒業してから、正職員の学芸員になったが、1年半ほど働いたのちに退職した。そのときの私は抑鬱状態だった。 半年ほど何もしない日々を送った末、私は、博物館の非常勤職員と大学の非常勤研究員として働くことになった。 博物館では、学芸員としてではなく、来客対応をする解説員として採用された。チケッ

サンタになった日

季節外れにもほどがある。 ということは、私も重々承知しているのだが、今日はクリスマスの思…

如月桃子
2年前
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休みが終わってしまうとしても

長かった夫の休みが終わってしまう。 「終わってしまう」と少し感傷的に書いてみたけれど、実…

如月桃子
2年前
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いつだって、甘やかしごはんだった

対面キッチンのある食卓は、実家の東側の一番大きな部屋にある。 食卓に朝日が差し込む前に、…

如月桃子
2年前
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雨上がりの夜に教えてもらった、優雅な朝

挽き立ての豆で淹れたコーヒーと、焼き立てのパン、じっくり煮込んだスープに、サニーサイドア…

如月桃子
2年前
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歯の浮くようなセリフを噛みしめて

ある映画で、イタリア人の男が言う。 ”I thank God for fear…”と。 直訳すれば、「恐怖をあ…

如月桃子
2年前
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キラキラ指輪物語

私たち夫婦が、結婚指輪を手にするまでのお話です。(糖度高めです) 私たちは、今年の5月に…

如月桃子
3年前
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放課後のような街に暮らしたい

放課後の空気が好きだった。 校庭や体育館で汗を流す人。 吹奏楽部の誰かが奏でるトロンボーンの、どこかとぼけたような音。 美術室に染み付いた油絵具の匂い。 職員室の前や、図書館で勉強している人たち。 思い思いに過ごす、夕暮れまでのひととき。 放課後って、一つのユートピアだよな、と思う。 そんなことを言うと、ただ郷愁に浸っているように思われるかもしれないが、放課後を懐かしく思うのは、大人になってからそんな時間をもつのは容易くないと感じているから。 人によっては忙し