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晴れの日も雨の日も

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そのとき感じたことを感じたままに綴るエッセイ集。晴れの日のように澄みきった気分のときも、雨の日のように翳りに覆われるときも、その気持ちを、透明な言葉で伝えたい。
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#ライフスタイル

ハレの日の美術館

よく晴れた5月のある日、私たちは美術館で結婚式を挙げた。 結婚式といっても、参加者は私と…

如月桃子
1年前
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どこでも住めるとしても、きっと君の隣を選んでしまう。

私が、初めて自分で決めた場所に暮らしたのは、大学4年生のときのことだった。 それまでずっ…

如月桃子
1年前
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しあわせのつくりかた

こうしたら、絶対にしあわせになれる、という方法はおそらく存在しない。 「善く生きる」方法…

如月桃子
1年前
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ふつうがいちばん…

小学生の頃、長期休暇の前にはかならず成績表が配られた。 家に帰ると、私はまずそれを母に見…

如月桃子
1年前
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もう海に沈めなくてもいいように

「コンクリートに括りつけて、海に沈めてしまいましょう」 同僚が言い放ったその物騒な言葉を…

如月桃子
1年前
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サンタになった日

季節外れにもほどがある。 ということは、私も重々承知しているのだが、今日はクリスマスの思…

如月桃子
2年前
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休みが終わってしまうとしても

長かった夫の休みが終わってしまう。 「終わってしまう」と少し感傷的に書いてみたけれど、実際のところはあまり寂しくも悲しくもない。 むしろ、少しうれしい。 夫が休みのほうが、もちろん楽しいのだけれど。 休みが終わっても、夫と一緒にいられる。 ただそのことがうれしいのだ。 遠距離で暮らしていた間は、休みが終わるということは、しばらく夫と会えなくなることを意味していた。 夫と会う休みの日は、特別で、非日常だった。 非日常が、日常になっていく。 それは、特別感が薄れていく

いつだって、甘やかしごはんだった

対面キッチンのある食卓は、実家の東側の一番大きな部屋にある。 食卓に朝日が差し込む前に、…

如月桃子
2年前
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雨上がりの夜に教えてもらった、優雅な朝

挽き立ての豆で淹れたコーヒーと、焼き立てのパン、じっくり煮込んだスープに、サニーサイドア…

如月桃子
2年前
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歯の浮くようなセリフを噛みしめて

ある映画で、イタリア人の男が言う。 ”I thank God for fear…”と。 直訳すれば、「恐怖をあ…

如月桃子
2年前
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キラキラ指輪物語

私たち夫婦が、結婚指輪を手にするまでのお話です。(糖度高めです) 私たちは、今年の5月に…

如月桃子
2年前
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放課後のような街に暮らしたい

放課後の空気が好きだった。 校庭や体育館で汗を流す人。 吹奏楽部の誰かが奏でるトロンボー…

如月桃子
2年前
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壊れかけのマグカップの行く末

お気に入りのマグカップにヒビが入ってしまった。 ホットミルクを作ろうとして、マグカップを…

如月桃子
2年前
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先輩の芥川賞受賞に寄せて

夕飯を食べながら、何気なくテレビを見ていたら、芥川賞のニュースがやっていた。 今年は直木賞と二人ずつの受賞なんだ、 芥川賞を受賞したうちの一人は宮城県の出身でドイツ在住 ふーん… と思っていたら、次の瞬間テレビに映った受賞のインタビューを見て、口の中のものを吹き出しそうになる。 テレビに映し出されていたのは、私の研究室の先輩だった。 「研究室の先輩だ…」 と放心状態になった私を心配したのか、近くにいた親が「大丈夫?うれしい?悔しい?」と聞いてくる。 そのとき、私の胸