ノンマリ連載短編小説 「龍のコインが来て、そして」 #1 寝返りするコイン
あらすじ:龍の模様が刻まれたコインを手に入れた「私」に起こる、ささいだけれど不思議なできごとをオムニバス形式でつづる連作。
1.
『寝返りするコイン』
家に帰ると、財布から小銭を全て出すことにしている。ある日、いつものように硬貨をトレーに移していると、見慣れないコインが混ざっていることに気づいた。
日本の古い硬貨。明治三十年、五十銭とある。いつ紛れ込んだのだろう。フリマサイトなんかで売れるかなと思って調べてみたけれど、値打ちのあるものじゃなかった。
裏返すと龍の模様がある。へえ、龍の模様がある硬貨なんて日本にあったんだ。思いついて、占いをしてみることにした。コインを投げて、龍の方が出たら、これからしばらく素敵なことが起こる。出なければ、現状維持、今のまま。
トスしてみた。案の定、五十銭と書かれた、龍がいないほうが出たので、そのまま棚に置いた。まあそんなものだよね、いまの私って。お気に入りのブローチもなくしてしまったし。
でもまさか、そのコインが、夜の間に寝返りを打つだなんて。
翌朝、龍がとぼけた顔で上をむいていた。
—第2話につづく
龍のコインが来て、そして / 中臣モカマタリ
龍の模様が刻まれたコインを手に入れた「私」に起こる、ささいだけれど不思議なできごとをオムニバス形式でつづる連作。
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