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ノンマリ連載短編小説 「龍のコインが来て、そして」 #7 あ、うんの呼吸

7.
『あ、うんの呼吸』


オフィスからの帰り道、めずらしく神社にお詣りした。狛犬さんが、あ、うん、と両脇に鎮座している小さな神社。龍のコインが来てからというもの、小さな不思議はあるのだけれど、決定的にいいことがあるわけでもないこともあって、つい、神様を試してみたくなった。で、「神様、おられるんだったら、その存在を私にも示してください」とお願いをしてしまったのだ。

神社の近くのカフェに入った。珈琲をたのんで、ああ、シュークリームもつけたいけど、つけたら効果てきめんだと思って、あきらめた。
そうしたら、あうんの呼吸というのだろうか、店員さんが「お客さま、もしよろしければこのシュークリーム、サービスでおつけしますので召し上がって下さい」と言ってくれたのだ。たぶんバイトの、まじめそうな男の子。
 
ああ、やっぱり、神様はいたんだ。お願いしてからあっという間だった。あうんの呼吸で、私のリクエストに応えてくれたのだ。
 

—第8話につづく

龍のコインが来て、そして / 中臣モカマタリ
龍の模様が刻まれたコインを手に入れた「私」に起こる、ささいだけれど不思議なできごとをオムニバス形式でつづる連作。


「nonmari(ノンマリ)」

おひとりさまのおひとり時間に寄り添うWEBマガジン「nonmari(ノンマリ)」。ひとりで過ごす夜をテーマに、短編小説やエッセイなど更新しています。 お仕事を終えてほっと一息ついた時、寝る直前のベッドの中で。おひとり時間を過ごすあなたが、心おだやかな夜をすごせますように。


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