見出し画像

ノンマリ連載短編小説 「龍のコインが来て、そして」 #4 ひつじの入った箱

4.
『ひつじの入った箱』


仕事帰りの電車の中で、小学生ぐらいの男の子から、「おねえちゃん、これあげる」といって、箱に穴が開いた絵をかいた画用紙を貰った。ああ、これ、わかる。ひつじが入っているんだよね、というと、男の子は嬉しそうな顔をした。サン=テグジュペリの『星の王子様』の最初に出てくるエピソード。

そういえば、最近、寝つきが悪かった。たぶん、寝る直前までスマホの画面を見ているのがよくないのだろう。睡眠不足は、お肌にとって大敵なのだけれど。

夕方にエクササイズをこなして、体温を上げた。ちゃんと寝る90分以上前にはお風呂に入った。からだの芯の温度は下がってきて、皮膚の温度はベッドにはいって上がっていく、その差が縮まっていくときが眠りにいいらしいから。

ベッドに入ると、もらった画用紙から、小さなひつじがわらわらと出てきて、何匹いるか数えているうちに眠ってしまった。
 

—第5話につづく

龍のコインが来て、そして / 中臣モカマタリ
龍の模様が刻まれたコインを手に入れた「私」に起こる、ささいだけれど不思議なできごとをオムニバス形式でつづる連作。


「nonmari(ノンマリ)」

おひとりさまのおひとり時間に寄り添うWEBマガジン「nonmari(ノンマリ)」。ひとりで過ごす夜をテーマに、短編小説やエッセイなど更新しています。 お仕事を終えてほっと一息ついた時、寝る直前のベッドの中で。おひとり時間を過ごすあなたが、心おだやかな夜をすごせますように。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?