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ノンマリ連載短編小説 「夢語部(ゆめかたりぶ)」 #11 ナイトメアイドル


第十一夢
『ナイトメアイドル』

悪夢さんというアイドル歌手がいる。彼が歌う歌はポップスでもロックでもメタルでもなく、民族調歌曲だ。彼は山羊の骨で出来た弦楽器を引き鳴らしながら、伸びの良い低く穏やかな声で歌う。

彼の生歌を聞いたものは、その日一日呪われて酷い悪夢を見るらしい。興味が湧いて一度コンサートに行くと、悪夢さんは青い紗布のワンピースドレスを着て立っている。彼は男性だが、コンサートに登場する時はいつもワンピースドレスを着るのだ。

「貴方にも救済が訪れますよう、悪夢のお時間でございます」

悪夢さんが歌い出すと、何人かのファンが興奮に倒れた。驚くべきことに、興味本位で立ち寄った私までもが。しかしそれは興奮による失神と言うより、まどろみからの深睡と言うべき倒れ方で。夢の中の私は、土の中に埋められて琥珀になる夢を見た。

悪夢と言うにはあまりに美しかったそれは、きっと私の救いなのだろう。


作:白旗ラメント

★一話先行公開中★
第十二夢『夢の果て』
https://nonmari.jp/series/s001112/


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