木露尋亀ノノート

木露尋亀(巣々木尋亀改め)のノートです。

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ノノートノート

2022/07/11 尋亀ツイノベよりぬきノノートの2投稿 2022/03/19 小小説「籤」公開 2022/01/30 小小説「アドバルーン」「白鳥の湖」公開 2021/1121 twnovel 朗読動画を2本投稿。ツイッターノベル用のマガジン開設。 2021/1120 twnovel no.084「切符を拝見」朗読動画を投稿。 2021/1024 tobe小説工房落選作「コーヒーゼリー」 公開。 2021/1012 アイコンを変更。(ツイッターと統一しました)

    • 尋亀ツイノベよりぬきノノートノ3

      人が殺された。犯人はわかっていない。 探偵が現れて一人の人物を指差した。「犯人はあなたです!」探偵に指差された人物はがっくりとうなだれて、罪を告白した。 こうしてまたひとつ、謎が死んだ。 (095) A person was killed. The culprit is unknown. A detective appeared and pointed to a person. "You are the culprit!" The person pointed to by t

      • +18

        イメージ用のストック集ノノート230608

        •  光速船に乗り込んだ選びぬかれた七人のクルーが最初の冬眠から目覚めた朝に、第一回目の抽選が行われた。七本の紐の中に一本だけある短い紐を引いた者が、次の百年間の眠りの間、残りのクルー達の栄養分として分解吸収されるのだ。  七百光年先にある目標の惑星に生命を送り届けるためにはそれがもっとも理にかなった方法なのである。それは、世界でもっとも優秀とされる人工知能の出した結論だった。  当選者は次の冬眠までの一週間を自由に過ごすことができたが、しばらくは動揺を隠しきれず、一人で窓の

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        • best of 尋亀2020 渦
          12本
        • vest of 尋亀 2019
          15本

        記事

          白鳥の湖

           それは子供の頃の印象で、とても大きな湖のようにおもっていたのだが、いま見ればそれほどでもないのかもしれない。そこにはいつも水鳥が泳いでいて、ワタルは子供の頃よく家族でその湖に遊びに行っては、売店で買った餌を水鳥に投げて遊んだのだった。  ワタルが投げた餌が水面に落ちると、まるで餌に吸いつけられるように水鳥が集まり、首をのばして我先に餌を奪い合った。今度は別な方に餌を投げると、水鳥たちはくるりと一斉に向きを変え、また餌に向かって群がるように泳いだ。ワタルはそんな水鳥たちの様

          アドバルーン

          「パパバイバイ」 自転車のハンドルに取り付けたチャイルドシートから娘が私の方を振り返った。 「うん?もうお家帰る?」 娘の言うバイバイは帰りたいという意味であることが多い。しかし娘はブンブンとかぶりを振り、陽が傾き始めアンバー成分が増加の傾向を見せ始めた空に繋ぎ止められた、銀色のアドバルーンを指差した。やれやれ今度はあのアドバルーンを目指せということらしい。私は電動アシスト付き自転車のペダルを踏んだ。  自転車に乗って娘の行きたい方へどこまでも走ってゆく。まだうまく会

          見たことのない絵

          「たのしみだなあ」少年は白い包帯で覆われた目で遠くを見るようにしてそういった。  もしかすると少年はそのときすでに、包帯の下で閉じられた瞼越しに淡い光を感じていたのかもしれない。包帯が取れたらパリのルーブル美術館へ行いけるのだ。そして夢にまで見たモナリザを見ることができるのだ。「たのしみだなあ」少年はまた遠くを見るように、まるでそちらの方向にパリがあるように顔を上げてそういった。  少年は生まれながらにして盲目だった。医者は、移植手術を受ければ目が見えるようになる可能性はあ

          見たことのない絵

          best of 尋亀 2020 「渦」あとがき

           昨年に引き続き、2020年に書いたショートショートの選集を作りました。メインタイトルの「渦」はコロナ禍の「禍」の文字に引っ掛けたものですが、昨年後半に始めた回文ショートショートのイメージも重ねています。  回文ショートショートというのは、回文をお題にして物語を作る形式で、昨年10月からGINZAという雑誌で始まった、満島ひかり(回文)と又吉直樹(小説)がコラボした連載を真似たものです。回文には以前から少し興味があったので(村上春樹も回文集をだしているなど)試しに回文を作

          best of 尋亀 2020 「渦」あとがき

          ローカル線の旅

           ピリンピリンピリンピリンピリンピリン  エコーのかかったようなホイッスルの音にはっとして反射的に列車から駆け下りたが、自分が寝ぼけていたことに気がついたときには、もう、深緑色の車両は動き始めていた。幸いリュックは手にしっかり握られていて、忘れ物はしていない。朽ちかけたコンクリートが周囲の自然と見事に調和しているプラットホームには、「たつのみや」と駅名の書かれたサビの浮いた看板が立っていた。  最近世間では、休暇は無理にでも消化しなくてはならない、という新しいルールが追加され

          ローカル線の旅

          流れ星

           宇宙ステーション・そらの人工知能は、今日も補給船からの連絡を待っていた。  嘗てそらには大佐以下七人のクルーが常駐していたのだが、現在のそらは無人である。ただグルグルと地球の周りを回りながらクルーの帰りをずっと待ち続けていた。  そらにクルーが常駐していた頃、月に一度の補給船はクルーの何よりの楽しみだった。新しい味の宇宙食、諸々の生活用品、壊れた機材のパーツ、そして交代のクルー。そらでの半年の勤務が終了したクルーは、毎月ひとりずつ交代で地上へ帰って行く。クルーは皆自分の勤務

          回文ショートショート・サンタクロースの実存

          呼ぶよ。トナカイ、行かなと。サンタさんサタンさと。仲いいかなと。呼ぶよ。  サンタクロースは煙突から家の中に入ってくるという話にはあまり現実味がなく、そのことがサンタクロースの存在を否定する根拠とされるケースがまま見受けられるが、いうまでもなくそれは間違いである。一体どういうわけでそのような話が広まってしまったのか、いまとなっては確かめようもないのだが、あるいはそのような荒唐無稽なストーリこそ、サンタクロースという存在の神秘性と非合理性を受け入れるために人々によって生み出さ

          回文ショートショート・サンタクロースの実存

          回文ショートショート・ 柿太郎

          蔵暗く 鹿、案山子、狗ら苦楽 くらくらくしかかかしくらくらく 上 案山子とイヌ  柿から生まれた柿太郎  あられぽりぽり鬼退治  あらあら鬼さん泣き出した  柿太郎印の柿あられ  鬼の格好をした売り子がそんな唄をうたいながら、タレの焦げる匂いをプンプンさせた屋台を引いて歩くと、屋台の後には子供たちの長い行列ができた。子供たちが面白がって鬼に合わせて唄うと、今度は大人たちまで何事かと窓から顔を突き出した。タレの焦げるいい匂いがする。お試し品をちょっとつまむ。ピリ辛で南蛮風の

          回文ショートショート・ 柿太郎

          老人とカエル

          「ひと雨来そうだな。」見回りボランティアの詰め所の窓から覗くと、空には厚い雲がたちこめていて、老人は半透明の雨ガッパを羽織って詰め所を出た。  見回りボランティアというのは、地域の高齢者有志が当番制で地域を巡回する、軽い運動を兼ねた社会活動だ。公民館にある見回りボランティアの詰め所は、体(てい)の良い寄り合い所になっていた。とはいえ、下着ドロボーを発見したり、遅くまで遊んでいる子供に声をかけたり、徘徊老人を保護したり(それはメンバーの顔見知りだった。)それなりの実績もないわけ

          回文ショート・ショート/時計塔

          時計叫ぶ、今朝、行け!と。  その小さな市には、市の規模からすればやや不釣り合いなくらい大きな古い時計塔があった。その麓にひとりの男の赤ん坊が捨てられていたのは、いまから何十年も前のことである。赤ん坊は時計塔の管理人夫婦によって発見され、そのまま、子供のいなかった夫婦に引き取られた。ところがいったいどういう訳か、管理人夫婦は赤ん坊に名前を付けるのを忘れていて、赤ん坊のことをただ”坊や”と呼んでいた。そんなわけで近所の人たちも、その赤ん坊のことを”時計の坊や”とか”時計小僧”

          回文ショート・ショート/時計塔

          マイネームイズマイナンバー

           あたしの名はルナ。美少女戦士。黒い霧一味からこの世界を護るため、放課後になると同じ学園の仲間と一緒に戦ってる。  ところでなんで美少女が巨大な悪と戦わなきゃならないか、君たち真剣に考えたことある?その秘密はね、恋するパワーにあるって思うんだ。ほら、恋ってすごいエネルギーの塊みたいなもんでしょ。だから恋する乙女のパワーは最強なんだよ。  そりゃもちろん男の子だって恋はするだろうけど、なんとなく恋する乙女の方がサマになるっていうか、絵になるっていうか。あたしの言いたいこと分かっ

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          帽子の似合う叔父さん

           母の叔父に当たる吾郎叔父さんは、いつも贔屓のチームの野球帽を被っていたので、子供の頃、私は叔父さんのことを帽子のおじさんと呼んでいた。比較的近所に住んでいた叔父さんは、父親のいない私を気遣ってか、頻繁に我が家に遊びに来ては、父親代わりに私の遊び相手になってくれたものだった。  いつもは野球帽を被っていた叔父さんだったが、葬式や結婚式など少しかしこまった集まりのある時は、黒いニット帽を被っていることもあった。ただ一度だけ、外国の探偵が被るような帽子を被って家に遊びに来たことが

          帽子の似合う叔父さん