長い長い夏休み。
その年の夏休みは、少しいつもと違っていた。
お母さんの実家がある、佐賀県の田舎。
数年に一度、お母さんは、私達4人の姉妹を連れて里帰りしていた。
「 よ〜きんしゃったねー」
大きな庭と、裏はすぐ山になっている、お母さんの実家。「田舎のおばあちゃん」はいつも、しわくちゃの顔をさらにくしゃくしゃにして、私達を迎えてくれた。
🍉
いつものように、夏休みに母娘で遊びに来て、しばらくしたら、大阪に戻るはずだったのが、その年は、何日経っても帰る気配がない。
「 もう大阪には帰らないから。」
記憶には残ってないけれど、たぶんそんな話だっただろうと思う。夏休みの間に転校手続きが済まされ、私達は、そこが新しい家になった。
母に詳しい事を聞こうとも思わなかったし、元々父は家庭をあまり省みる人ではなかった。
時々、釣りに連れて行ってくれたり、遊んではくれたが、昼間から碁会所で碁を打ったり、夜は寿司屋の板前をやり、大将、大将とスナックのママさんにちやほやされるような、
遊び人を絵に描いたような人だった。お父さんを呼んで来てと、母に頼まれ、昼間から碁会所に呼びに行くことも日常茶飯事の出来事だった。
じゃりん子チエというアニメがあったが、アニメに出てくるチエの父親「テツ」、はうちの父がモデルじゃないかと思ったほどだ。
バカボンのパパもしかり。
そんな父だったから、お母さんは愛想を尽かしたのだろう。
正直、もしかしたら、私もじゃりん子チエだったのかもしれない。そんな出来事があっても、全く悲しくはなく、挨拶やお別れもせず、転校したにも関わらず、新しい生活を受け入れていた。むしろ、わくわくしていたと言っても過言ではない。
都会からくる転校生が珍しかったのだと思う。
転校初日には、休み時間になると廊下側の窓に隣のクラスからも鈴なりに人が押しかけ、大阪からの転校生を興味津々に見にやってきた。
友達になろうよ!と声をかけてくれた。
「田舎」、こんな風にいうと失礼かもしれないが、私にとって「田舎」という言葉は、いい意味でしかない。
田舎をバカにする人がいたら、その人がバカなんじゃないかと思うくらいに田舎が好きだ。
だから、私が田舎という言葉を使う時はいい意味で聞いて欲しい。
田舎の人は、みんな優しい。
ケンカだってしているのだけど、なんていうんだろう、都会ほど複雑でないのだ。
転校してすぐに、2人の女子が、私を取り合ってケンカしていた。1人が交換日記をしようと、誘ってくれたので、そういうのもいいなと思ってやっていたら、
また別の女子がズルいと言って、その子とケンカを始めたのだ。
ケンカをやめて、2人を止めて、私のために争わないで、もうこれ以上
そんな歌を聴くと思い出す出来事。
彼女達が話す言葉、方言がわからなかったので、当時小学校の5年生だった私は、わからない言葉があると、
「それは、何ていう意味?」と標準語での意味を教えてもらった。
後に、中学でわりと英語を楽に勉強出来るようになったのも、このおかげかもしれない。
大阪弁を話してみて、と色んな人に何度も頼まれたが、恥ずかしくて、頑なに標準語で通した。大人になっても、こてこての大阪弁がなんだか、気恥ずかしく、どこか丁寧になってしまって、自分、どこの出身?と時々聞かれるのもその名残り。
大阪の学校の友達は、夏休みの間に急にいなくなったクラスメイトにさぞかし驚いただろうが、それでも、先生に引っ越し先を聞いて、手紙をくれた友達がいた。しばらく文通をしていた。
思えば、あの頃から、手紙やら、日記やら、結局書く事が嫌いではなかったんだろうと思う。友達もいたけれど、本も友達だった。
夏しか知らない田舎だったけれど、冬を越し、田舎の暮らしにも馴染んで来たある日、
また突然、帰ることになったと告げられた。
これは、とても寂しかった。別れが辛かった。
でも、決まったのならしょうがない。
これも、割とすんなり受け入れた。
後で知った話では、
ケンカをして愛想を尽かされた父の母、
父方のおばあちゃんが、
「あんたは、男やねんから1人でもどうにでもなるか知らんが、子供達はどないなるねん。あんたがそんな無責任な事、するんやったら、親子の縁を切る」
とまで、言って、父に謝りに行かせたらしい。
こちらのおばあちゃんは、強かった。
さすがは、テツのお母さんだ。
うちの母とは、全く気が合わず、会えばケンカで間に挟まれる私はいつも大変だったけれど。
そんなこんなで、長い長い田舎の夏休みは、半年ほどで終わりを告げ、元いた小学校にまた通うことになる。
転校して初めての登校日は、集団登校で近所の班の子供達と登校していた。
小学校が見えた時、当時、副班長だった男の子が親切に
「ほら、あれが〇〇小学校だよ!」ととびきりの爽やかな笑顔で教えてくれたのを、知ってる…と言えずに吹き出しそうになりながら、うんと頷いた事、
先生に連れられて、静かに廊下を歩き、
先生の
「新しい転校生を紹介します。はい、どうぞ」
との前フリのあと一歩教室に入った時の
「なんや〜転校生ちゃうやん😆😆😆」
のクラスメイト達からの、総ツッコミで、
なんだか、新しい転校生に対する期待を裏切った事に多少の申し訳なさを感じながら、
私の長い長い夏休みは終わりを告げたのでした。
あとに残ったのは、入れ違いで習わなかった、算数の「確率」の範囲がきっかけで数学がすっかり苦手になってしまった事だろうか。
でも、構わない。知らなかった事でも、勇気を出して人に聞いたり、調べたりすることで、人は学ぶ事は出来るのだ。
どこに行っても、どんな時でも。
長い長い夏休みの、それはもう一つの宿題だったのかもしれないな。
暑中お見舞い申し上げます。
あの頃のみんな、お元気ですか?
私は今も元気です。
あの時はありがとう。
とっておきの、夏の思い出。
📖✏️📖✏️📖✏️📖✏️📖✏️📖✏️📖✏️
…どうでしょうか?
仕事から帰ってきて、いつものようにスキをくれた方を見に行って、
かっちーさんの記事を読んでいたら、
とても素敵なお話。
曲でチャレンジ、2作目書かれたんだ〜
いい曲、いいお話だった^ ^
さ、次は誰を見に行こうかな…
と思ったら。
8月の他の課題
ん?
課題?
あ、違った、
8月の他の企画
企画だった^ ^
夏が来れば思い出す〜♪
思い出かぁ〜
という訳で、今回はこちら、riraさんの企画に乗って、書いてみました^ ^
エッセイとはなんぞや?
なんとなくしか、知らなかったので調べてみると
だそうです。体験、感想とかなら、こんな感じでもいいのでしょうか?
有名人でもない私の体験など、読み手のニーズがあるのかは甚だ疑問ですが、大人の夏休みの宿題ととらえて、したためてみました。
riraさん、いかがでしょうか^ ^
よろしくお願いします🍉
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