【映画】キリエのうた 感想

キリエのうた

とてもよすぎたので、是非見てほしい。

あらすじ(あんまりネタバレなしで見てほしいのでネタバレなし気味に書きます)
東京で家がなく、路上で歌っている「キリエ」。「キリエ」は歌以外で声が出せない。そんなキリエの歌をプロデュースすると言い出した「イッコ」と名乗る少女。「キリエ」と「イッコ」はお互いに過去に知り合いのようで、本名も知っているが、今はお互い「キリエ」と「イッコ」として生きている。生きる場所のない、そんな中でも、「キリエ」が歌い、「イッコ」がそれを広める日々。そんな暮らしも長くは続かない。徐々に明らかになる二人の関係性や、それぞれの過去。そして最後は…
という話です。

ネタバレなしにするとあんまり良さが伝わらないのですが、救おうと思っても救えない、どうにもできない、それぞれが様々な重みを抱えながらも生きてます。

(ここらへんからネタバレはあんまりないけど、匂わせはあります笑)

なので、終始明るい映画ではないのです。
それでも「キリエ」や「イッコ」がお互いを大事に思って、二人で過ごす日々や、「キリエが」歌を歌い「イッコ」がそれを聞く日々は、辛い人生とかの一言で片付けられない、確かな友情、輝きがあります。
最後のシーンは「キリエ」の力強い歌と、それを聞きに行こうとする「イッコ」の姿には号泣しました。

また、キリエや「イッコ」の過去に「夏彦」という男性が深く関わっています。
また、「キリエ」の過去には「フミ先生」も関わっていて、二人の視点からもキリエや「イッコ」が語られます。
特に「夏彦」の視点の過去の回想ではキリエに深く関わりがあり、夏彦視点のキリエが時に可愛らしく、時に残酷に描かれます。
どの物語もとても苦しく、救えたのか、救いはあったのか、というものです。
その反面、確かに楽しい時間、みんなで笑い合って音楽を楽しんだ時間もあって、だから私の人生はずっと辛かったんだとばかり本人たちは思ってはないとも感じます。

彼女たちは元々どこで、どのように出会ったのか。
なぜ、「キリエ」や「イッコ」たちは本名を捨てたのか。
なぜ、彼女たちには帰ることのできる家が無いのか。
なぜ、「キリエ」は歌は歌えるが、声は出せなくなったのか。
それらが徐々に判明していき、涙が止まりませんでした。

また、「夏彦」の視点もかなり重要で、キリエに対する複雑な思いや、「キリエ」に対する様々な経緯でのやるせなさも、最後の彼の言葉につながったのだと思うと、こちらも泣けますし、考えさせられます。
「夏彦」には「夏彦」なりの苦しみや葛藤、抑圧された日々があるのはすごく伝わりますし、こちらも苦しくなるほどです。
一方、「夏彦」が「キリエ」に焼肉を奢るシーン等があり、生活基盤の差を感じさせるのも、さり気ないシーンの演出で分かります。
「夏彦」とキリエたちは高校生時代に一緒にいて同じ経験をしていますが、それで「キリエ」は何もかも失っているし、「夏彦」はなんだかんだ大学に行こうと思えば行けたけどボランティアをしたり、牧場で働いてみたりと、皮肉にも金はある状況なのも、格差が描かれていると思いました。
しかし、金銭面で恵まれているといって、「夏彦」もずっと色んな意味で苦しかったですし、抱えているものは重かったです。

それぞれの視点、それぞれの重みがありました。
もっと多くの人に見てほしいなと思って、感想と文を書きました。
ぜひ見てほしいです。

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