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お酒。

先日、有難いことに尊敬致します社のお若い方と一献頂いてまいりました。

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お店で待ち合わせのところ、お店の前で寒い中待っていてくれたのですが、遠目に違和感を思いつつ、近づいてまずこのいで立ちでいらっしゃるところにしびれるわけです。私はこのような「細かいことを気にしない方」「図太い男」「飾らない人」かのようなタイプに好感を持つ傾向にあります。次に念のためお寿司でもなんでも召し上がりたいリクエストをと確認しお伝えしたところ「ここの焼き鳥がいいです。美味しいし好きなんです」と安いお店のセレクトが続く返しにまたやられます。とはいえ繊細な心の所有者でもあり、優しさに溢れているところもあり、そして何よりこの方の「多くの個性を飲み込む」器みたいなものは稀有に大きく僭越ながら一目置くところを感じております。こうしたご縁に感謝を致しつつ、それをまた潤してくれるお酒も有難く思うところです。

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とあるお取引先30代男性で、過去に類をみないような、いわゆる「できる営業マン」かのような方がいるのですが、多くがヘアスタイルから靴や鞄まで卒なく整えるかのようなケースが多いかと思われる中に私も身なりは気を使ってきたほうですが、その方は清涼感は持ちつつもいつも寝ぐせがあって、それがまたしびれるほどに恰好よく見えてしまいます。夜中の23時であろうと、0時であろうと、契約書を持って社に来たことが数度ありました。という意味で類をみないのですが、面白い方です。「なんでそんなにがんばるんですか」と聞いたことがあるのですが、私を軽く指さし微笑ながら「一緒ですよ」というたった一言返しをしてきた寒く冷えた日の午前0時が懐かしく思い出されます。

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お酒の話題に戻しますと、30代の10年間はときにビジネス上の相手を口説く有用なツールとして、ときに虚勢や威勢を張るために、単に飲みたいと思ったときもあったかもしれませんが、散々浴びるほどを通り越して浸かっていたほど飲んできましたが、40代となってからは、相手を慮るようになり、かつ一段とお酒が弱くなったのもあり一切私から誘うことはしないようになりました。「酒の席」は好きですが、「お酒」は元来ビール1cm飲むだけで倒れるほど下戸なのもあり根本的にはかなり苦手で、本来的に体がお酒を欲することなくどころか無意識としては体に入れたくない拒絶なので晩酌もしないため、むしろ非常に楽になり、私自身が一番助かった環境変化かもしれません。

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そして有難いことに、お酒を一切誘わなくなると、むしろこうしておじさんへ20代の方々から時折お声がけを頂くようになりました。口では「どこまでもお供します」といいながら本音は「早くかえりてー」「つかれたー早くベッドでねてーよー」「業後にまで上司と一緒に飲みたくない、いや一緒に居たくすらない」「家でゲームしたい」「あぁ今日は本を読もうと思ったのに」「家で待たせている恋人に会いたい」「子供や家族と一緒にいたい」「職場の飲みはしたくない。残業代つかないやん」という世間の声があり、多くのケースでの本音という認識でしたが、しかしこうしてお声がけを頂くと、あるいは飲みにいけば「人生の一番辛いときを過ごしてきた中、もっと早くに出会いたかった」と言って頂くケースもありますが、絶対行きたくない派から、飲めるなら誰でもいいから行きたいよ派までと、その間のグラデーションがありつつ、多くのケースでは根底的には多少の需要がありつつ、同時に多くのケースでは飲みの時間が供給過多の状況なほどよさがないだけでバランスの問題である、という認識へシフトもしてみています。

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職場においては、同僚同士の飲みは自由ながら、半ばまたは完全強制的となるような社が主催する・推奨勧告する、上司が声を掛ける、キックオフ、懇親会、これら「仕事上」と考えられる性質の飲み、という類を不文律的に一切なくし、つまりはゆるやかに空気として禁止になった時期もあります。そうしてほどなく経つと社の飲み会ではノンアルコールで通していたような若い女性から「会社のみんなと飲みたいです」というお声を頂戴したり、実際にお若い人同士の飲みの機会や企画が増えたり、お若い方々からの「飲み」の設定が増えて来るという現象がおきました。

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「なんで職場の人と飲みにいかなきゃいけないんですか」というごもっともでクールな時代の流れという世相一辺倒なのかと思っていると、けしてそうではなく、何かのご縁で共に働くことになった、共有する時間も多い「仲間と飲みにいきたい」「酌み交わしたい」「そういう日があったっていいじゃないか」と思う人がいるのもまた自然なことであり、そうした需要につき再発見があったこの数年かもしれません。ちなみに最近キリンデリシャスシャルドネを買ってみましたが、大変美味しく頂きました。しかし半分で十分酔いました。


お店のお姉様が私のカメラで撮った一枚を借用します。

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そうしてコロナが来たわけですが、今年はごくたまに誰かの声がけで社内で缶ビールやら缶チューハイで小さな粗宴が開催される、という機会もありました。不倫の話題など赤裸々に語ったり、なかなかの裏モード的逸話が潤滑油かのように恵まれ、それら小さな人生の幸せな時間にも感じた日もありました。


※ニューハーフ様の足です。

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「今月で辞めることにしました。実家帰る。体力の限界・笑」というメールを頂いていたゆえ、律儀にお店へ顔を出しておくことにしました。

昭和の時代は「酒豪」という言葉がありました。偉大な歴史上の人物や、銀幕スターの名優も「酒豪である」ことは豪傑であり、派手に飲むことは経済力の象徴でもあり、どこか能力や人格、あるいは人としての器という概念と紐づけられ、酒豪というワードがより強固な讃美歌に塗り固められた時代があったように思います。それがタバコとセットで大人であると幻想もした思春期を過ごし、お酒が強い程に強い男であり、それが特段に格好よく、お酒が弱いことはヘタレであり、男たるもの女性より飲めなければならず、ジェームズボンドもそうであり、これらが下地に「俺の酒がのめねえのか」という風潮も当たり前に、飲めるほどに偉い、強いかのような昭和の支配的価値観があったかもしれません。この価値観を引きずって平成を生きた人も多かったのではないかと思いますが、私はそうした一人だったと思います。しかし実は酒豪であるほどにお酒に頼るそれは弱さやシグナルであり、ということも段々分かってきた科学的根拠としての解明や社会的理解の流れもあるのかもしれませんが、長らく居座っていた酒豪という言葉が確実にパワーワードではなくなっている手ごたえを感じもします。

「ねぇねぇ撮って撮ってー」「はやくー、この体勢きつい」という中でピントも合っていませんが一枚。

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隣にいたお客様と話してみればユーチューバーの方で、そのお母さまもユーチューバーでしかも50代後半だったかご自身で動画編集もなさるとのことで、時代を思いつつ、M様実家に帰ってゆっくり静養していただければ幸いです。欧米人に比べればお酒が弱い傾向にある東洋に住む人々のほうが、重度のアルコール依存症、中毒者が少ないように思い、またはその社会的深刻度合いが軽いように見受け、俯瞰してみれば下手に強いほうが絶対的摂取量が多くなる結果、依存症になりやすいようにも感じています。

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中学生の頃「おいNON、今日泊めてくれないか。またおやじが暴れてる」と血相を変えて夜中によく学友が来ました。学友の父親が、包丁を持って追いかけて来るほどの「酒乱」だったからです。その方は全国に困らないほどの拠点を持つ政府と呼ばれるところが勤め先の国家公務員で、のちにお酒の失態を重ねてとある小さな島に異動させられ単身赴任しまさに「島流し」となり、その島でも酒乱としての失態を重ね島民から「出ていけ」と運動まで起こることになりますが、その息子たる学友もまた酒乱であることが高校になって共にちょっぴりお酒を飲むようになると判明していきます。酒乱ぶりは段々エスカレートをしていき、酔うととにかく看板など目につくものを手当たり次第に、しかも楽しそうに、拳を真っ赤に染めながら破壊行為をするようになっていきました。

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人生で4名ぐらいだったか、酒乱の方を身近で見受けてまいりました。お一方は渋谷のビックエコーでアルバイト仲間だったW大生でしたが、この方は当時泥酔してお若いまま社会に出ることなく、虹を渡ることになります。

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もうお一方は仕事関係の方で、比較的大人しい酒乱でしたが、やはり酔うと粗暴になり、普段とは異なる行為態様となり、そして記憶はなく、線路に落ちて危うかったときもあったようでしたが、

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確かに迷惑に感じる「酒乱」も、時代が違えば、英雄だったとも思う次第です。「おいお前、この杯を空けて、敵のところに攻めゆけい」「ようしやってやる」という戦乱の時代であれば、これはもう勇猛果敢で御殿様や軍師にとっては有難い勇者的存在だと思うわけです。

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攻撃的な性格・性質も、痛みを抑制しながら獲物を捕ったり、敵と戦うためにアドレナリンが出やすい本能の名残というには退化していない素養であると思い、それが過度にあれば時代とマッチしないことがあるかのように、

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酒乱も勢い付けが過度に出てしまう個性として時代とマッチしていないだけで、時代が違えば優秀な能力という見方ができるのではないかとも考えたりしつつ、つまりは絶対的に悪いことなのではないという認識が僅かでもあってもいいかもしれず、

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しかしやはり時代や平穏には合っていないわけですから、周りが大変なのと同時に、実はそれを望んで生まれてきたわけではないご本人がもっとも苦しんでいるのではないかとも思う次第です。

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酒乱が悪であったり、下戸がヘタレであったり、職場の飲みが理不尽とされたり時代背景にときに踊らされながら、あるいは誰しもが多少の失態が付きまとうのがお酒でもありつつ、

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古くから人類はお酒で酌み交わし、ときに戦いをお酒で祝い踊り、ストレスを薄め、長い付き合いできたわけですが、長い付き合いの割りにはなかなかうまく付き合えていないところが目立つのがまた人の機微でもあるように思い、

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自警警察もいる中ではありますが、例年よりが大幅にお酒の席がない師走に助けられながら、

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飲みで出会ったお二方と何かのご縁かととも思い、近々相談に乗るためにお誘いを受けまして飲んでまいります。

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その前に一献、友とありますが、これは鍋をつつきながら自宅飲みとなりそうで、またそれも楽しみです。もうしばらくは、お酒と交わりながらの人生が続きそうです。

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