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電子メールの功罪を意識して働き方改革

7年以上前の記事ですが、電子メールを常に意識していると生産性が低い、ということをたった5日間、13人という小規模ながら、実験で示したものがありました:

実験期間中はメールを読むのも返信も禁止です。

 「さあ、考えるか。」「今から頭を使い始めよう」と言って、ノートPCの蓋を閉じる人を何人か知っています。日本、米国、ドイツにいます。

「メール休暇の具体的な効果は、被験者がコンピューター画面上の各ウィンドウに費やす時間が平均して2倍近く延びたこと(メール使用中は75秒だったのに対し、メール休暇中は2分超に及んだ)、そして、ウィンドウを切り替える回数が半減したことだ(メール使用中は平均で1時間37回だったのに対し、メール休暇中は同18回だった)。これらの結果は、電子メールを処理せずにすむことで、労働者の集中力の持続時間が長くなり、また、仕事中の緊張感が緩和されたことを示唆している。」

当たり前の、予想通りの結果だったと思います。定性的には、次のような効果があったと言います。

「・・・被験者たちは、電子メールに生活を左右される習慣が身についているため、メールを使わない日々は新鮮な気分だったと報告している。ただしこのことは、今回の研究のひとつの弱点を明らかにしている。電子メールから強制的に引き離されるという研究に参加を申し出るのは、そもそも電子メールに生活を支配されていると感じている人たちだろう。また、研究に参加した労働者たちの同僚は、電子メール休暇による悪影響は特になかったと報告しているが、同じオフィスで働いている同僚なら、メールを使わなくとも簡単に連絡を取り合うことができるはずだ。」

確かに、同僚や取引先は迷惑を被り、そのように感じていたかもしれませんが、そのことは報じられていません。

 昨日Nikkei Style に長い書評が出てアクセス1位をとった「AIに勝つ!」では、パナソニックさんの「働き方改革」の見事な成功例を描いています。書中では明記できなかったですが、実は、社員が電子メールを読み書きしている時間を退勤時に本人に見せてフィードバックした結果「3時間」とか見るとショックを受け、自発的に改善するようになって、平均でメールの処理時間が半減し、見事に時短目標を達成できたという事実もあります。

 働き方改革全体では、時短などはごくごく限定的な効果しかありません。社員は、マズローの欲求の中でも大変高度な欲求を満たせるときに働き甲斐を感じることが明らかになりました:

「社員が、自身の成長と会社の成長の両立につながる施策を自発的に考えて提案し、良いものは採用され、実施されると何が起こるか。働きがいが改善されます。先に紹介した越川氏がパナソニック100周年記念行事*2 で、CNS社良いものは採用され、実施されると何が起こるか。働きがいが改善されます。先に紹介した越川氏がパナソニック100周年記念行事2 、CNS社*3 の樋口泰行社長とともに講演した際に公開した22社、16万2000人へのアンケート結果によれば、働きがいを感じるのは次の6つの機会でした。

 「お客様から評価頂けた時」「必要とされている時」「チームで目標を達成した時」「プロジェクトを完遂した時」「社会貢献できた時」「自分のやり方で仕事に没頭できた時」です。マズローでいえば、4の承認欲求、5の自己実現、さらには、6の自己超越の域に達し、他者の幸福に貢献できたときこそ、働きがいを感じるという社員が多数派を占めたようです。」」

 本当に素晴らしいと思います。大企業社員なら、もう四半世紀も前から電子メールの弊害を自覚していたと思います。コミュニケーション・メディアの使い分けという観点で、電子メールを選択したことによる失敗、例えば、電話や対面なら2分で済むところ、電子メールで長文を30分、1時間かけて書いて、かえって相手が理解できなくなった、誤解が広がったようなことはないでしょうか?

 残念ながら、こんな経験のない時代遅れの若者が、私が出演した2019/1/13放映のTVタックルで、電話は迷惑だからメールにしてほしい、という幼稚な主張を繰り返しました。おかげで現代におけるメディアの使い分けの切実な問題について具体的に公開討論するチャンスを失ったのは誠に残念でした。

 長時間集中できる時間を取り戻すことは、創造性の向上(回復)に直結します。また、メディア使い分けリテラシーの点では、研究開発者など、ここ数年で、スラック、git、ナレッジ、フェイスブック他のSNSをどう使い分けるか、という風に複雑化し、5年前より格段に難しくなっています。しかし、その方法を教える大学の講義があるなど、寡聞にしてしりません。

 メデイアが増えて多種多様になるだけでなく、その変遷も激しくなっています。万人向けのリテラシー教育など無理かもしれません。どのメデイアを使うかの選択では、なんの為に最適化するかという価値観の軸をブラさないことが大事かと思います。そこに「創造性の最大化」が入っていない人とのコミュニケーションは今後、AIの時代には極力避けなければならないでしょう。一生雑用に追われ続けないようにするためにも。

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メタデータ(株)の野村です。人工知能研究40年、WordNet活用研究への貢献から、言語学の深みを活かした自然言語処理応用で知識処理、文書分析、対話、要約を高度化へと研究開発を展開。産業、社会、行政、教育(特に芸術、人文科学)の様々な問題について、なぜ?と自問自答し続けています。
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