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世界史から考える古くて新しいキャリア論

人間が変わる方法

人間が変わる方法は3つしかない。1番目は時間配分を変える。2番目は住む場所を変える。3番目はつきあう人を変える。この3つの要素でしか人間は変わらない。最も無意味なのは『決意を新たにする』ことだ。

こちらはキャリア選択に関する大前研一氏の言葉だと言われていますが、これは人類史・世界史的な観点から見ても、正鵠を得ているように思えます。

人種ごとのキャリア

ジャレド・ダイアモンド氏はその著書「銃・病原菌・鉄」において、人類の歴史(=キャリア)がユーラシア大陸、アフリカ大陸、アメリカ大陸などの大陸ごとに異なるのは、その大陸ごとに地形・環境が異なっていたからであり、人種としての優劣があるためではないと指摘しています。

具体的にどのような違いがあったのかというと、 主として①栽培できたり家畜にできる動植物の分布状況、②大陸が東西方向に伸びる陸塊であったか、南北方向に伸びる陸塊であったか、③情報の伝播を妨げる環境的障壁があったか、④それぞれの大陸の大きさや総人口の違いという4点において違いがあったとのことでした。

不正確になることを承知で簡単にまとめてしまうと、具体的には、ある特定の人種は、①たまたま栽培・家畜化できる動植物が周囲に存在したから、農耕牧畜を開始することができたのであり、②たまたま東西方向に伸びる大陸に居住していたから、農耕牧畜の技術を他所から取り入れることができたし、③たまたま大陸に大きな砂漠がなかったため技術の伝播も簡単だったし、④たまたま総人口が多い大陸だったから、発明の数もそれに比例して多かったのです。

きちんとした説明は是非ジャレド・ダイアモンド氏の「銃・病原菌・鉄」で読んでいただきたいのですが、ここで強調したいのは、これらが全て、本人たちの努力とは関係のない、環境的な要因であるということです。人の成長や発展は、自分の意思とは無関係に、周囲の環境によって決定づけられるというのがジャレド氏の主張です。

人の変化・成長は、ほとんど環境で決まる

これを大前氏の言葉と照らし合わせてみると、「時間配分を変える」という点は本人の意識的な行動が必要となるものの、「住む場所を変える」「つきあう人を変える」というのは、人種ごとの歴史(=キャリア)の決定要因に通じるものがあることに気づきます。

住む場所を変えることよって、たまたま新たなスキルの習得が可能な環境に身を置くことが可能になりえますし、たまたま自分の才能を開花させてくれる人々と出会うことも可能になりえます。また、つきあう人を変えることによって、自分に伝播してくる情報の性質がガラリと変わることは、誰もが多かれ少なかれ経験しているところではないでしょうか。

思い返せば、決して学校での成績がよくなかったり(もともと意味のある指標でもないのですが。)、頭の回転が速くない(と周囲から評価されている)人でも、いつもなぜか「おいしいところ」にいるため、結果として誰もが羨むキャリアを歩んでいるという人も少なくありません。

これが本能的な嗅覚なのか、それとも意図的にやっているのかは定かではありませんが、人間の変化・成長・発展は、「どこに身を置くか」に大きく左右されることの証拠の一つになるようにも思えます。

キャリアに悩んでいるか否かを問わず、周囲の環境が自分にどのような影響を及ぼしているのかを改めて振り返るのもいいかもしれません。

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