大阪26期とかいう全お笑いオタクの門戸
現在お笑いオタク・お笑いファンを自認する人間のほとんどが「大阪26期」を通っているのではないだろうか。
特に、現在よしもとの芸人が好き、劇場に通っているという層の人間に関して、この説は全く大げさではないと思う。
「大阪26期」というのはよしもとの芸人養成施設「NSC」の「大阪校・26期生」のことを指す。
そしてこの期の排出した芸人は、かまいたち、和牛、天竺鼠、アキナ(山名)、アインシュタイン(河合)、藤崎マーケット、バイク川崎バイク(BKB)など、ビッグネームばかりだ。
この期の芸人がお笑いファンになる人間の最初の門戸となりやすい理由としては、大きく「コンテンツ供給・メディア露出の量」、「各コンビの魅力」、「同期内の関係性の充実」が揃っていることが挙げられるだろう。
ここからは、この3点について掘り下げながら、改めて「大阪26期はなぜお笑いオタクの門戸だと言えるのか?」ということを説明していく。
大阪26期が「門戸」たる3つの理由
①コンテンツ供給・メディア露出の量
まず、大阪26期がお笑いを好きになるきっかけとなりやすい理由。それはまず、単純に「売れている」からだ。正確に表現すると、売れて、芸能界にきちんと残っているコンビが他の期に比べて多い。
それゆえ、コンテンツ供給・メディア露出の量が多いのである。
彼らが提供してくれる「お笑い」は、劇場に行かずとも触れられるものが多い。
今で言えば圧倒的なテレビ出演本数を誇る「かまいたち」。そして、M-1で多くの人の心を掴んだ「和牛」は、レジェンド世代の芸人を除いたらかなりの知名度なのではないだろうか。彼らは主にテレビでの露出で多くの人にその名を知らしめている。
もちろん、関西のテレビで多くの出演を果たしている「アキナ」や、超若手の頃から名を知らしめていた「藤崎マーケット」や「天竺鼠」も含め、大阪26期の芸人の多くが「劇場に行ったことのないお笑いに関心のある層」にお笑いへの興味をもたせるきっかけになっているのだ。
また、彼らの特徴として「いまだに劇場出番が多い」ということも挙げられる。
これだけ人気になっても、まだ劇場に出続けていることこそが、彼らが「門戸」となる所以なのだと思う。
彼らをテレビのネタ番組で観るだけには飽き足らず、「生でネタを見たい!」「見たことのないネタが見たい!」と劇場に足を運んだ人間が、彼らを門戸としてヘビーなお笑いオタクとして育っていくのだ。
なぜなら一度劇場に足を運んでしまえば、「生のお笑いの迫力」「劇場の以外な小ささ(舞台の近さ)」「チケットのとりやすさ、価格」に驚いて、どうせまた行く羽目になる。
そして、行ったライブが目当ての芸人の単独ライブでもない限り、絶対に「目当ての芸人以外にも面白くて気になる芸人」が出てくる。
その後は新たに好きになってしまった芸人を目当てに、劇場へ足を運んだり、血眼で「キングオブコント」「M-1グランプリ」といった賞レースを観るようになるだろう。
逆に、彼ら以外の若手芸人を最初に好きになってテレビや劇場で追い始めたとしても、バラエティなら番組MCとして、賞レースなら過去の強者として、劇場なら貫禄の先輩芸人として、どうしてたって目にすることになる。
どこから入ってきても、26期をまとめて好きになるのは時間の問題だ。
②各コンビの魅力
前の見出しでは、「単純に売れているから目にする機会が多くて好きになりやすい」みたいな雑なことを書いたが、その前提としてはもちろん各コンビの魅力あってこそ。
例えば普段あまりお笑いを見ない人からしたら、かまいたちがなぜここまでテレビに出ているのか不思議だったりするのかもしれないが、それらは全て「実力・実績」に基づいている。
「M-1」「キングオブコント」などの賞レースで勝っていることだけがコンビの魅力だとは言わないが、世間的に評価されるネタを作ることのできる強さみたいなものの証明にはなるだろう。
まずテレビの露出から彼らを知り、それが最近のことだったしても、深く知っていくうちにここまでに積み重なった歴史とそれに対する計り知れない努力を目の当たりにする。
こうした深みのある魅力で人を引きつけることができるのは、もはや中堅と呼ばれるような芸歴となった彼らだからこそのものだ。
また、「テレビの露出」などではなくM-1、キングオブコントといった賞レースからお笑いにハマった人も、その賞レース自体の歴史を追っていくうちに26期の歴史にぶち当たることは避けられないだろう。
③同期内の関係性の充実
オタクが「関係性」という概念を好むことに例外はない。
それぞれが全く違った活躍をしている26期の芸人たちを、こうしてまとめて好きにならざるを得ない対象として語っているのは、彼らの関係性にまつわるエピソードが非常に充実しているからだ。
それぞれが養成所時代から関わっており、各々違った活躍をしているからこそそれぞれにリスペクトが感じられる。
26期のどこか1組を好きになってしまったが最後、「関係性」の力で「期」ごと好きになってしまう。
また、アキナ・和牛・アインシュタインからなる「アキナ牛シュタイン」やかまいたち・天竺鼠・藤崎マーケットからなる「かま天マーケット」といったユニットライブが存在しているのも、大変有難案件である。
こうした「公式で押しだされている関係性」を嗜むことで、「関係性」の良さに気づく人間もいるだろう。
そうして、各人が好き好きに自分の好きな26期芸人の、26期以外との関係性を調べ始め、よしもと漫才劇場だったり、東京19期の面々だったり、大宮だったりにたどり着いていくという仕組みになっている。
「門戸」から全員が行き着く場所
やがて「お笑い箱推し」へ
よしもとの芸人を追うにあたって大阪26期の芸人を目にする機会が多くなるのは事実だとは思うが、まあ、本当のところを言うと「門戸」なんて人それぞれだ。
特に、最近だと「第7世代」と括られる若手芸人たちをきっかけにお笑いを好きになった人なんかも多いのではないだろうか。
よしもとの話ばかりをしてしまっているが、他事務所のライブやK-PROのライブがきっかけの人、ラジオがきっかけの人もたくさんいると思う。
そして、その思い入れを抱えたままだんだん守備範囲をひろげ、やがて「お笑い箱推し」になっていく。もともとは特定の芸人が好きだったのに、気づいたらそのカルチャー自体が好きになっていく。
はあ、こんなに書いたのに、結局オタクの思考回路とその末路を言葉にしただけだった。お笑いじゃないことにも言えるような、普遍的なことにたどり着いてしまった。
私の場合
私は26期からお笑いを好きになった人間だ。
ここまでつらつらと語っているわけだから、そうじゃないと筋が通っていない。
しかし今は26期の芸人をそこまで一生懸命追っているかというと、そうではない。
強いて言うなら、よしもと漫才劇場や∞ホール所属の芸人を特に応援している。
これも、思い返せば26期のいるライブを観に行った結果出会うことができた人だったり、26期が注目していると口にした人だったり。
特に、彼ら自身が若手と呼ばれていたところから、若手を紹介したり、若手が挑戦するような場を作る立場に変化していったことも大きかった。
そんな若手芸人を応援すると必然的に賞レースを追うことになる。賞レースを追うことで、出会う芸人の幅はどんどん増えた。
そして例に漏れず、私も立派な「お笑い箱推し」だ。
今年のM-1グランプリとか、超最高の大会になったらいいのにな。こんなに楽しい思いをさせてくれているきっかけになった大阪26期への感謝は、いつまで経っても忘れられないんだろう。
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