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メイクと言葉

イガリシノブといえば「おフェロメイクの人」という認識までだった。
彼女がプロデュースしているフーミーのコスメも持ってはいるけど、色味が好きであって「イガリさんのブランドだから」という理由ではなかった。

プロフェッショナルのイガリシノブ特集。テーマは「コンプレックスを、カワイイに」だった。このテーマじゃなかったら、私は素通りしていたかもしれない。

イガリシノブが発する言葉や思い、「自分を大事に自信を持って、かわいいよ」「普通とかそんなものの前に、まず自分だよ。普通とか常識とか関係ない。自分自身だよ」と伝わってきた。
私が聞きたい言葉で、私も私自身や人に伝え続けたい言葉たちだった。

コンプレックスを隠していると隠れていっちゃうから 自分も
普通なんてないから大丈夫
普通は何もないと思ったほうがいいよ
打ち破った方がいい 常識なんて考えない方がいい
本来の奥にいる自分の顔が見えないでメイクだけが見えちゃう人っていっぱいいる
だからその奥にあるものが全部前に出ればいいのにって思ってる
私はその人の素材をドドドドドドって出したいって感じ

イガリシノブは「美人」や「黄金比」に人を「はめこむ」ためにメイクしているのではなくて、「そのひと自身」のかわいさやきれいさを引き出していくメイクをしていることを知った。該当する、モデルがある美しさやかわいさじゃなくて、そのひとが持つ、そのひとだけが持っているかわいさを見つけて手をとって、明るいところに行けるよう背中を押していた。

自分のいいところはもっと良くするのはいいと思う
けど欠点を隠すと、メイクを取ったときに欠点が出ちゃうから
どんどん陰に入っていっちゃう 気持ちが
コンプレックスがあったからこそふさぎ込んだ時代があっておしゃれするようになって
でも全部味方だったな 自分にとって

イガリ自身も肌が弱く自分自身にメイクができない、というコンプレックスや劣等感に苦しんだ経験があって、その経験があったからこそ考え導き出した先に「おフェロメイク」「イガリメイク」が生まれたことを知った。

イガリシノブにメイクされませんか?企画応募に選ばれた、コンプレックスに悩む女性のインタビューがあった。
柳川さんという名前の彼女をひと目見て、私は「かわいい」と言った。かわいいのに、どこにコンプレックスを感じているのだろう、と。

柳川さんは自分自身の顔の嫌だと感じている部分と理由を言葉にしながら、悲しそうに笑う。
「なんで私はこういう顔なんだろう」「外に行くのがけっこう怖くなってしまった」
柳川さんが自分の顔に対して選んでいく形容詞、その言葉が発されるごとに、彼女のひとつひとつの顔のパーツが暗い影を落としていくのがわかる。
世間に植え付けられている美人や黄金比などの枠組みに入らないと判断した自分自身の顔を、言葉というもので存在否定していく。そしてその言葉を、自分自身の耳が聞いている。
それはきっと彼女だけじゃない。今この瞬間、世界のどこかでも、とりわけ日本では誰かが毎分毎秒ごとにその行為を起こしているのかもしれない。

メイク企画当日、イガリと柳川さんが会い、イガリは柳川さんの話を聞いていく。ナレーションは「柳川さんの気持ちをほぐしながら話を聞いていく」と流れた。

メイクに入る。イガリが顔のマッサージで柳川さんの骨格やパーツの特徴を知りながら、話しかけ、心を知ろうとしていく。

コントロールカラーやハイライト。厚ぼったく塗って色や形を変えるのではなくて、薄く塗ることで、今まで隠れていた良さを呼び起こしていた。

柳川さんが鏡に映る自分自身からずっと目をそらさなかった姿が、とても印象的だった。
メイクが完成に近づくにつれて、今まで暗い影を帯びていた顔のパーツのひとつひとつが輝いていく。眼差しもどんどんまっすぐ向いていく。

イガリは柳川さんが最もコンプレックスを感じている箇所ほど、メイクを重ねたりしなかった。隠そうとしなかった。

隠すことで、隠すたびに、傷ついているのかもしれない。隠しても、なかったことにはできないから。
「どうして自分の顔の○○はこんな形でこんな大きさなんだ」
嫌だからメイクで形や大きさを変える。けれど、心の奥にいる自分は泣いているかもしれない。自分自身が人から、自分から否定されないためには、自分自身の見た目を否定して、持つものを必死に隠して形や色を変えないと存在できないのか。
変えないと、価値がないかのように。

メイクが完成したとき、柳川さんのコンプレックスは「コンプレックス」という名前ではなく「かわいい」という魅力になっていた。

「いつもと違う」「こういうメイクだったら、自信が持てるかなって」

柳川さんから、笑顔と言葉があふれていく。

「私は何もしてないよ。もともとの自分の顔だよ」とイガリはさらっと言う。
「そのままじゃない?ただちょっと位置変えただけとか、塗り方変えただけとか(*^-^*)」
持ってたものを、呼んだだけだよ?もともと持ってる「かわいい」だよ?

私が劇的に変えたわけじゃない。0から作ったわけじゃない。もともと自分の中にいたよ。最初からあったんだよ。

だから自分に自信を持って(*^-^*)

イガリシノブはメイクと言葉でコンプレックスは味方だよ、「かわいい」なんだよ(^^)と伝えてくれた。

この記事を書くために何度も再生したイガリシノブの言葉、柳川さんの言葉とかわいい表情に、書きながら涙が出た。

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