#3応生「麹菌とバックパック」
[プロフィール]
加藤晴朗 Kato Haruro
・東京農工大学大学院 農学府 応用生命化学専攻 修士2年 遺伝子機能制御学研究室
・硬式庭球部
[目次] ○研究内容 ○この分野に進んだ理由 ○問題意識 ○学生のうちにやりたいこと ○将来やりたいこと
研究内容
私の研究のテーマは「麹菌の分生子の発芽メカニズムの解明」です。
麹菌は日本酒や味噌、醤油を作る際に用いられていて、醸造産業で大きな役割を果たしているカビです。ゲノム解析1技術が開発された時、麹菌は他の菌に先立って全ゲノムの配列が解明されました。日本人の生活に密接に関わる重要な菌なので全国の研究機関で研究されています。
研究内容を簡単に言うと麹菌が増えるときの胞子(分生子)がどうやって発芽しているのか、またその時分生子の中で何が起きているのかを見ています。麹菌が増えるときは分生子が水を吸って膨らんだ後発芽して、菌糸と呼ばれる糸状の細胞を伸ばして成長します。この時どのような遺伝子が発現してどのような制御が起こっているかは未だ明らかになっておらず、それを解明したいと思っています!
実際に分生子の中にあるメッセンジャーRNA2を調べて、分生子中で一番多く存在しているあるメッセンジャーRNAを発見しました。
現在は遺伝子組換え技術を用いてこのメッセンジャーRNAが存在しないようなものを作製し、元の麹菌と比較しておかしなところがないかを調べています。
この研究を社会に役立たせるとすれば、産業において豆や小麦や米等を栄養源とした麹菌の成長をコントロールすることができるかもしれません。
醸造産業は未だに職人と呼ばれる人に頼っている部分も大きく、そういったところに科学的にアプローチできるのは利点だと思います。
医学・医療界においてもメリットが有るかもしれません。麹菌は日本の発酵食品で多く使われているのにもかかわらず、例えば麹菌とたった1%遺伝子が違うだけなのにとても危険なカビも存在します。そのような麹菌の近縁に属する菌達が世界中で猛威を振るっています。毒を出すやつもいるし、感染症を引き起こすものもいます。感染源は人が空気中から吸い込む胞子で、この胞子の発芽を制御できれば感染を防ぐことにつながるかもしれないと思います。
注 1) ゲノム解析:生物のDNA がもつ遺伝情報を明らかにするため、DNA の構成要素である 4 種類の塩基の配列を決定すること。 注 2 )メッセンジャーRNA :DNA に含まれる遺伝情報をタンパク質に変換するための中間体のこと。
この分野に進んだ理由
いま所属している研究室を選んだのは大学1年の時に大学のパンフレットを見て「この研究室の雰囲気良いな」と思ったことがきっかけでした。最初は微生物には興味がなかったのですが、今お世話になっている教授の授業を受けるのが楽しくて微生物の研究に興味を持ちました。
私はもともと人体の中で遺伝子がどのように作用するかを研究したいと思っていましたが、麹菌の遺伝情報がタンパク質になる基本的な仕組みは人と同じであり、この研究室で自分のやりたかったことが出来ると感じて配属希望を出しました。
問題意識
まず農工大にいて感じる問題としては、外からの情報が足りないと思っています。世界が狭く閉鎖的であり、刺激が少ないのではないかと感じています。それは単科大学で同じような人が集まってしまうから仕方ないことだとも思いますが。せっかく近くに東京外国語大学や、一橋大学、学芸大学、法政大学等たくさんの大学機関があるのだからもっと日常的に交流の幅が広がればいいなと思います。
あとは社会問題という面で見たら、今は一人ひとりの個性を大事にして尊重しようという風潮があると思います。
でも、社会にそういった個性を受け入れられるような状況が整っているかは疑問です。
例えば、教育のシステムでも「大学までは進んで名のある企業に入りましょう」見たいな風潮が未だにあると思っていて、それは昔から変わっていないと思います。
だからもっと若いうちから専門性を高められるような教育の仕組みを作ることや、大学に行かなくても良いという考えの人でも当たり前に活躍できるような社会作りが必要なのではと思っています。
全然農学と関係なくてごめんなさい(笑)。
あとは自分も含めてだけど、問題意識を持とうとしないことが問題かなと思います。我関せずというか平和ボケというか、一人ひとりが積極的に問題意識を持とうとする姿勢が多くの人にはないのかもしれないなと思っていて、それはやはり問題なのでしょうね。
学生のうちにやりたいこと
一番は、もう一度長期間の旅行をしたいなと思っています。日本でもいいけどやっぱり海外が良いです。
長期で旅行するのは学生でしかできないからです。大学を半年間休学して世界半周をしたことがあって、その続きでも良いし、まだ行ったことのない所に行ってみたいです。
あとは「全国利き酒選手権大会」に出場して優勝したいです。一般の部で優勝したら、一升瓶52本もらえるんですよ。一週間に一本ですね(笑)。去年は入賞できませんでした。結果は良くなかったけど、貴重な経験が出来て良かったです。 あと、バンドをやりたいです(笑)。
教授を学園祭のステージに立たせるのが夢で、今年の学園祭に出場しようと思っています。うちの教授はとっても歌が上手いので是非皆さん聞きに来てくださいね!
将来やりたいこと
将来は海外に住みたいと思っています。2,3年でいいから経験として。海外にいるときって自分に素直になれて、自分らしくいられるんです。日本にいると日本人的に見られたいと思って自分を作ってしまう部分がどうしてもあって。あとは海外にいるとやっぱり新しい刺激がたくさんありますよね。
将来はカフェを開くのもいいなと思っています。コーヒーが好きで、毎日自分で淹れていて。これは会社を辞めた後にでもやりたいと思っています。
でもやっぱり今は、研究者としてモノづくりに携わって活躍したいです。みんなが使って、幸せになるものを作りたいです。それは、医薬品でも日用品でも食べ物でも良いです。みんなの生活をより良くするためのモノづくりに携わって活躍出来たら良いですね。
2018年3月23日 文章:上木康太郎
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