見出し画像

Q.自尊感情って何なん?(読書記録『自尊感情革命-なぜ、学校や社会は「自尊感情」がそんなに好きなのか?-』)

今回の「何なん」は自尊感情。
世の中には数多の"自尊感情向上本"がある。
「私は自己肯定感が低い」「うちの学校の子どもたちは他より低い」といったこともちらほら耳にするが……
そもそも自尊感情って何なん?んで、測れるもんなん?高けりゃいいの?
学校は何をしたらええのん?
いきなり「革命」から入るのはどうかとも思ったが、本書『自尊感情革命』は大丈夫、"アンシャン・レジーム"についても充実していましたw

自尊感情は、恐怖管理(テラー・マネジメント)の一つ

 人生には様々な脅威が待ち受けている。
 自尊感情の高低により、落胆・挫折の度合いは異なってくる。
 脅威を感じたまま生きる不自由から逃れる仕組み = 恐怖管理
 その一つが、自尊感情

自尊感情は、性格

 本書でいう自尊感情は、感情にとどまらず、認知、思考、態度、行動といった特徴をカバーする概念 = 性格

自尊感情の方程式

ウィリアム・ジェームズの自尊感情の方程式

画像2

この比が1より大きくなると自尊感情は高まる。
自分が重視する領域でこの比が1より大きくなることが大切。
自分が重視しない領域でうまくいかなくても落胆はしない。


望ましい自尊感情

×「非常によい」⇔○「まあ、良い」(ローゼンバーグ)
 ×「非常に良い」・・・不安定である
   ・自分は他人よりも勝っていると思う。
   ・自分が自分に設定する基準に照らせば不十分
  ⇒比較対象との優劣で自尊感情が変動(随伴性が高い)

 ○「まあ、良い」・・・安定している
   ・自分は平均的な人間。他人より優れているとは思わない。
   ・今の自分を敬っていて、自分についてかなり満足している。
   ・自分の不完全さと不十分さに気づいている。
    その欠点を克服できると確信を持っている期待している。
  ⇒随伴性が低く、安定性が高い。

新種の自尊感情「自律的自尊感情」
 自律性
 ①内発的動機づけ、②他者信頼心、③自己信頼心が揃った複合性格
 └ 【①内発的動機づけ】やること自体に興味を持ち、
            好奇心旺盛に頑張る動機づけ
  ⇔金銭、名誉等外的な事柄に左右される動機づけ(外発的動機づけ)
 └ 【②他者信頼心】他者を好意的に見て、他者からも好意的に見られて
          いるという安定した感覚のもとに他者を信頼する性格。
 └ 【③自己信頼心】自分に自信があり、有能であると捉える性格で、
          同時に不安や攻撃性が低く、他者信頼心を伴う概念。

 3パターンに分類
  ○自律的自尊感情が高い(内発的動機づけ、他者信頼心、自己信頼心)
  ○他律的自尊感情が高い(外発的動機づけ、他者不信心、自己不信心)
  ○無気力・絶望感(いずれの自尊感情も無い)

性格は、非意識の世界

認知、感情、行動といった特徴をカバーする概念 = 性格

【認知】外界の把握は、非意識によって操作される(ex.錯視)
【感情】男女の色恋ですら、非意識が影響している(ex.吊り橋効果、貧しいと太った人を好きになる)
【行動】知識(意識の世界)が行動に移されるときは、情動や感情の記憶(非意識の世界)が先に呼び起こされ、それに引きずられるように行動が出現する。どれだけ頭で正しいことが分かっていても、情動や感情と一体となっていなければ行動に移せない。(ソマティック・マーカー仮説)

性格は、非意識において私たちをコントロールする。

「自律的自尊感情」を測る

自尊感情は性格の一つなので、非意識の世界の話。
質問紙で「自信がありますか」と質問すると、意識を仲介することになり、正しく測れない。
※現在、世界でもっとも使われているローゼンバーグの質問紙では、他律的自尊感情を測れこそすれ自律的自尊感情を測ることはできない。
そこで、潜在連合テストで測る(詳細は割愛)。

幸せな人生のための「自律的自尊感情」

何が幸福か。
 ①健康であること
 ②他人との交わりに安らぎを感じること
 ③自分がやりたいことをして、自分だけのものを創っていくこと
マズローの欲求段階説に照らせば、
 ①生理的欲求・安全の欲求
 ②社会的欲求・承認の欲求
 ③自己実現の欲求
に対応するか。
こうして見ると、自律性の構成要素(内発的動機づけ、他者信頼心、自己信頼心)が揃った状態は、高次の欲求を満たすのに必要なように思われる。

「他律的自尊感情」が高い「タイプA人間」

他の人との比較は不可避。社会生活に適応するためにも、他律的自尊感情は自然と高まる。しかし、高すぎると問題が生じる。
他律的自尊感情が高い性格タイプ「タイプA人間」
○生き急いでいる
○競争的・他人に対し敵意を持つ
○日々精力的に活動
○単純作業は得意だが創造力や判断力に欠ける
○疲労や痛みといった感覚を抑制し、病気の発見が遅れる
○夫婦関係の満足度が低い
○リラックスしてよいときにできない
○要求水準が高く、実際の実行水準を常に上回るので失敗感の連続になる
⇒心臓病・うつ病の原因に。

「自律的自尊感情」を育む~乳幼児期~

☆生後2年ほどで基盤が出来上がる。
 ①生理的欲求を満たそうと、泣く
 ②親の献身的愛情を受ける
 ③生理的欲求が満たされる
⇒泣くと満たされる経験を通し自分への自信や有能感が高まる(自己信頼心の向上)。
⇒愛情を注いでくれる他者(親)への信頼も高まる(他者信頼心の向上)。
※「独立は依存によって達成される」……「甘えん坊」の克服は、次の発達課題。甘えん坊になっても良い。
自律的自尊感情を損なう道筋
○子どもの求めに親が応答しない
 ⇒依存・消極的性格に。無気力になる。
○応答が親の気分やリズムに左右され、子どもの求めに対応していない
 ⇒親の気を引くため競争的になり、暴力的性格に。他律的自尊感情が高くなる。

「自律的自尊感情」を育む~児童期~

新たな教育実践「トップ・セルフ」
 情動や感情を掻き立て、それに結び付けながら見方、考え方、振る舞い方を学習させる。
 普段の生活においても、記憶化された情動や感情に呼び起こされ、学習した見方、考え方、振る舞い方が適用される。
 乳幼児期と同様、
  ①何かをやろうとして他者と関わり、
  ②他者の助けを受けて
  ③達成
という経験を盛り込む。

「自律的自尊感情」を育む~青年期以降~

 育成は難しくなるが、不可能ではない(人間の可塑性)
 自尊感情を知り、自律性を欠いている自分に気づき、行動を変える。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?