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【エッセイ】あなたを透明人間にさせない

 最近、よく耳にするヤングケアラーという言葉。障害や病気のある家族に代わり家事や幼い兄弟の世話をしたり、目が離せない家族の看病や介護をしたりと「子どもが子どもらしく過ごせない子どもたち」をそう呼びます。
 そして近年、国もそんな彼らの支援策を打ち出します。この支援を多くの子どもたちに行き渡らせるためには、そういった子どもたちを見つけ出すことが必須です。


 実は私の母も、物心がついた時から統合失調症でした。今でこそ、この病名で呼ばれていますが、以前は精神分裂病と恐ろしい名で呼ばれ、家族は母の病気をひた隠しにしていました。なぜなら、当時それを恥と捉えており、世間に知られれば家族全員が差別の対象となりうるからです。


 今でこそ社会が精神疾患患者に多少の理解を示すようになりましたが、だからといって精神疾患の親を持つ子どもを学校側が見つけることも、ましてやそういった子から学校や先生へSOSを出すことも、とても難しいと思います。きっと彼らもそれをひた隠しにしているだろうから。
 それなのに、そんな大変な彼らが親の手を離すことが出来ないという事実。私もそうでしたが「もう嫌だ……」と手を離してしまいたいのにそれが出来ない。彼らは面倒を見ることが当然だし、そして親を愛し、欲しているからなのでしょう。


 そこで、同じ境遇にある者同士が気軽に話をしたり相談したり、同じ思いを共有することが大事だと思うのです。自分だけじゃないと気づけば、一人では出来なくても、分かり合える誰かとSOSを出せる。そして子どもたちを支援の場まで連れて行くことが出来ると考えたからです。
 また、見つけ出した彼らにしてあげたいこともあります。
 まず本来、親がごく当たり前にしていることを病気で手いっぱいの親御さんに代りサポートする。例えば、親に代わり授業参観等の学校行事の参加や役員代行、また子どもの成長に合わせた体操服や上履きの管理、成長に伴う体の悩み相談。他にも、宿題や勉強、成績や進路の相談、進学に際しての金銭面など、そういったサポートも彼らやその両親と信頼関係を築ければ、後は病院、行政、学校と連携し多方面から行えるのではないでしょうか。


 でもそれは相当困難だと思います。ですが「透明人間」のように誰からも救いの手を伸ばしてもらえない子どもはなくしたい。だとしたら、どんなに困難でも未来のためにできることはこれなんだと思います。
 


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