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夢帰行17

仁志の後悔2

「ごめんね変なこと言って。遙が起きるかもしれないから、私もう家に行ってくる。今日は来てくれてありがとう。起きてる遙には会えなかったけど、また来れたら会いに来て。」
「ああ、近いうちにまた来るよ」
聞きたいこともほとんど聞けず、話したいこともほとんど話さないうちに、清美は自宅へ出かけて行った。

今の清美の生活拠点は、あの病室だ。
世の中から隔離されたかのような、あの狭い病室だ。
自分の時間などない、気持ちを休める暇もない。
僅かの間だけ遙の側を離れ、自宅で用を済ます。
と言っても、風呂に入ったり、食事したりするだけのこと。
人間が生きていく上で最大必要な時間を最小限に止めている。
いつ変化するか分からない遙の病況では、1分たりとも無駄にできないのだろう。
遙に会わせるために仁志に来てもらったが、遙に父親が来たことを認識させることは出来なかった。
それでも清美は、ひとつ仕事を終えたつもりで仁志の前を後にした。

25歳の女とは思えないほど、疲れた清美の後姿をベンチに座ったまま見送った。その後ろ姿には、病室での遙の姿が重なり、映っているようだ。

清美と遙は自分に何を求めているのだろうか。
仁志の病室に突然やってきた姉の幸江が、問いかけた言葉が蘇ってきた。
「お前は、何をしてたんだ」
本当に何をしていたのだろうか。
遙を見捨てたように話す姉の幸江には、仁志の考えていることなど理解されないのだろうか。

病院の入口ロビーの椅子に腰かけて、幸江は待っていた。
幸江の前を清美が通り過ぎ、母が乗ってきた車で病院を後にする様子をひとり見送った。
幸江はその後ろ姿に手を合わせていた。

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