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ノイズ
2020年4月30日 17:01
時刻は3時をまわったころで、人の気配も感じない。眠れない夜は眠ろうとしても仕方がないと諦めて、散歩するのが癖になっていた。夜遊びの時間は終わっていて、朝帰りには早いような中間の時間に自分だけがいる、そんな空間が春川(はるかわ)は結構好きだった。ポケットに手を突っ込みながら、冷たい空気に驚くように鼻の奥がつーんと疼いてシャツ一枚で出てきてしまったことに気づく。春は近いはずなのに、朝晩はまだ冷え込ん
2020年6月3日 00:12
雨が降っていた。少し暖かな空気を孕んだ風が髪にまとわりつくような空気の中に勢いよく飛び出したせいで傘を差す暇もなかった。大粒の雨に打たれ、だんだんと服が重みを増し、靴下も濡れ、気持ち悪さを感じながら足早に歩みを進めている。行く当ても考えてない。ただ、その場から逃げ出したかった、それだけが私を動かしていた。「おい、待てよ」 後ろか叫ぶ声が迫ってくる。しばらく無視して歩いている私の後ろをついてき
2020年10月1日 01:46
雨宿りしてけば?という誘いに頷いたのは、雨の止む気配がなかったのと、家に帰りたくなかったから。この状況で夏希が家にいるとは思わないけれど、夏希の気配が残る家に戻りたくなかった。今は、何も、嫌なこと、感じたくなかった。 春川の部屋はマンションの4階、角部屋だった。お邪魔しまーす、と小さく呟きながら家に上がる。玄関からのびる廊下の先に、一人暮らしにしては広めのリビングがあって全体的に黒と白で統一さ