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stomachache

 お腹が痛い。下腹部の臓器を内側から絞られているような、大きくて鈍い痛みの波が寄せては返すこの時間が、あと何十時間続くのだろうかと想像するだけで気持ちが悪くなってくる。どんな体勢をとっても痛みが付いてくるこの状態を、身の置き所がないと表現するのだろう。横になって何もしないでいる方が、幾分楽になる気はするが、薬を飲んでこうしてじっとしている他に、為す術がないのがなんとも悔しい。
 何かをしていた方がむしろ気が紛れるのかもしれないが、痛みに気を取られてしまって何も手に付かない気がする。眠っている間は痛みを忘れていられるのが唯一の救いだが、もうこれ以上は眠れないというくらい、睡眠という手札を使い果たしてしまった私は、もうお手上げ状態だ。なんとなく胃のあたりも気持ちが悪くて、夕飯時というのに食欲もない。
 もしも、この痛みが治らないもので、死ぬまでこの痛みと付き合っていく必要があると言われたら、どんな気持ちになるだろうか。この痛みを、私の人生の新しい"当たり前"として受け入れて、これまで通りに平気な顔して生活することが果たして出来るだろうか。目が覚めてから眠りにつくまで、意識と共に痛みがある生活に、私はいつまで耐えられるだろうか。薬を使ってある程度緩和することが出来たとしても、なくなることは決してない痛みに自分の意識を支配される気分はどんなだろうか。「生きていても辛いだけだから、はやく殺して楽にしてくれ。」そう懇願しないでいられるだろうか。身体の中で躍り狂う痛みに耐えながら、愛する人たちとの時間を大切に過ごすことが出来るだろうか。心配させて、不安に感じさせてしまわないだろうか。笑って、楽しい思い出を作れるだろうか。
 きっと、美しい終わりなんてほとんどないんだ。生きることは概ね苦しいものだから。願はくば、見栄を張れるだけの愛しい人々に、最期まで見守られて逝きたい。そんなことを考えた。
 やっと薬が効いてきたのか、痛みが無意識の範疇に入ってきた。急にお腹も空いてきた。痛みのない生活は、なんて幸せなんだろう。私の意識は、すっかり今日の夕飯に向いてしまった。

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