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おとおとの フルパワーの話

高校時代の親友タグチくんのお話。

高校時代
僕とタグチくんを含めた親友4人グループは同じテニス部で日々厳しい練習に汗を流しながら青春を謳歌していた。

おとおとはご存知、肥満児なので柔道、相撲ならともかくテニスなどの体重をいかした戦術が全く通用しないスポーツは万年補欠。
それとはうって変わってタグチくんはおそらく市内でもトップクラスのスピードを誇るサーブを武器に当校テニス部内ランキングで堂々の1位に君臨していた。

だが、、

だが、、

タグチくんの超S級ハイスピードサーブは
フォームが独特だった。

いや、でもねでもね!
スピードはめちゃくちゃ早いんだよ!
試合もめちゃくちゃ勝つし
ハンサムだし
クラスに彼女とかいたし
クールだけど涙もろい
とにかくいいやつなんだ!

だけど
サーブのフォームが独特なの。

思い切って言っちゃうとダサい。
ものすごくダサい。
さわやかフェイスでいいやつなのにサーブのせいで同部女子からは全くモテない。
残念フェイスで偏屈なボクくらいモテない。(ほっとけ!)

しかも本人はこのサーブのダサさに気付いていない。
きっと彼の脳内ではナダルかフェデラーのそれなのだろう。

そしてそのダサーブがめちゃくちゃキレッキレで試合に勝ちまくるから尚のことタチが悪い。

そんな高3のある日
部活を引退する3年生は写真屋さんがちゃんとしたカメラで写真を撮って額に入れて貰える特典がある。
僕らもサーブやらストロークの写真を撮ってもらうのだが、我らがタグチくんはもちろんサーブ!!

カメラマンのおじさんから
「試合じゃないから軽くでいいからね」
といアドバイスを聞いたタグチくんのサーブは

フルマックス!!

なんなら先日出場した市の大会のどのサーブより早い。
でもフォームがいつも通り独特!!

シャッターを連続で切ったカメラマンが
「試合じゃないからねー軽くで」

フルマックス!!!

「あのね、サーブの軌道はすごくいいんだけど試合じゃな...

フルマックス!!!!!

「うん....うん....肩の力を...

フルマックス!!!!!!

「きみ。はなしを...

フルマックス!!!!

カメラを向けられて燃えたのか
打ち込まれるサーブはどんどんスピードに乗り
なんなら現役最速になっているのではないかと。

ここでサーブの撮影は終了し、ストロークの撮影へ。
しかしタグチくんはお得意のサーブが終わったので軽い感じでストロークの撮影も2枚くらいで終わった。

数日後。

出来上がった写真の見本をみてタグチくん愕然。
そこには5枚くらい撮られたタグチくんのサーブの写真がいわゆるしぇーの状態で口元がいがみ、そしてすべての写真で奇跡的にタグチお気に入りのKAPPAのパーカーのヒモが顔に被っているのだ。

そらそうだ。
70くらいで打ってくれというオーダーに135で答えたのだから、口はいがむし眼は白目になる。

固まるタグチくん。

気まずそうな後輩たち。

呆れる女子たち。

地面をたたき腹がちぎれるほど笑う僕ら親友たち。

そして卒業式の翌日行われたテニス部三送会でタグチくんに渡された額縁には肩の力が抜け、さわやかにストロークするあの2枚のうちの1枚が写っていましたとさ。

以上。フルマックスの話。。ではなくフルパワーの話でした(笑)

あのタグチくんのサーブの写真買っとけばよかったな。

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