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ピコピコハンマーパンチ!

ちよっと頭のいいお猿さんに
スケートボードを渡してやると、
北山通から京都駅までは
少しの助走で滑走しそうな
北高南低の京都盆地。

その北山通のさらに北の奥、
小さな畑が点在する
比較的穏やかな住宅地に
おいしいラーメン店が出来たのを
知ったのは、ちょうど5年前の
今日のような粉雪舞う日だったと思う。

当時ボクはラーメンについて
裸同然だった。
行きつけが3〜4店、
それで十分満足していたし、
ラーメンそのものについて
特別に意識することなどなかった。

それがたった一杯の「鶏白湯らぁ麺」で
思いがけない魅惑の園へと誘(いざな)われ、
あれよあれよとこの世界にどっぷりと
浸ってしまう事になろうとは、
夢にも考えなかった。

その時の感動をこのように留めている。

『芋の煮っころがしや菜っ葉の炊いたんを
食べてきた舌が、いきなりアスパラの
ポタージュを口にした感じといえば
わかりやすいだろうか。いや、わからんな。
金髪の店長がミッキーやドナルドみたいな
ディズニーの鳥キャラに変わり、
広げた手羽が大きなゲンコツに
デフォルメされ、こちらの胃袋を
「これでもか、これでもか」と連打する。
そのパンチはピコピコハンマーのように
優しく、胃袋を旨味でコーティングし、
とどまらない至福感を与え続けてくれる』

とにかく衝撃的で、その一杯から
先入観にとらわれず、いろんなラーメンを
食べてみたいと願うようになった。
様々なお店にお邪魔し、見向きもしなかった
つけ麺、まぜ麺に至るまで、可能な限り
チャレンジしてみようと思った。

今のボクがあるのは、言わばこちらの
おかげということになる。

そんな粉雪舞う記憶を辿り、
久しぶりにお邪魔したこちらで戴くのは
最もシンプルなデフォの【鶏醤油らぁ麺】。
複数の有名地鶏から引いた力強いスープと
非加熱の生揚げ醤油をベースとしたカエシ、
清湯ながらどこまでも奥が深い。

うまいなあ.. あの時に扉を開けてなかったら..
” 無化調 ” という言葉を初めて教わった
こちらのお店にリスペクトを込めて、
麺の一本、スープの一雫まで味わい尽くす。

【らぁ麺 とうひち(藤七)】

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