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「ありがちな恋愛」

高校の最寄駅のホーム、古ぼけた人形を手にした若者がある人を待つ。その人は来ないとわかっていても、、、

恋に不器用な高1男子の美月、男前だが、恋愛の仕方がわからない。

ある日、夢の中で違う学校だが同じバイト仲間の女子、星野の夢をみる。その中で、星野は命を落とす。美月は夢の中で号泣し、目が覚める。美月は胸の高鳴りを覚え、枕は涙で濡れていた。

美月はこの時、星野に恋している事を知る。

男前で、モテる美月だが、デートにどう誘うか、何を話したらいいかわからない。つまり、付き合ったらつまんない男と思われてふられてばかり。

バイト先で星野に夢の話をして、その勢いで好きだと伝えたら、星野がうんと応える。
晴れて2人は付き合うことになるのだが、美月はどうしたらいいかわからない。

デートも、どこに行けばいいかわからない。デート指南の本を読んでもさっぱりわからない、、
とにかく不器用なのだ。

学校帰り、駅で待ち合わせしてショッピングモールへ行った、それが唯一のデートらしきものだった。

しばらくすると、星野は何も言わずにバイトを辞め、連絡がつかなくなる。LINEも電話も繋がらない、連絡の取りようがない、、、
なぜ、、、やっぱり愛想尽かされたのかな、、


本当に好きなのに表現できない、相手を楽しませられない、そんな自分がほとほと嫌になった美月。

月日が経ち、卒業間近になるが、美月は誰とも恋愛できず、ずっと星野を引きずっている。
あの時、こうしていれば、、
もうこのままでは誰と恋愛しても同じなんだ。


せめてこのまま卒業したくない、美月は意を決して思いを伝えることにした。
思い?どんな?何を伝える?
これで諦めがつくのかはわからない。
でも、ダメな自分はダメなりにやってみよう、そう思った。

バイト先で星野の住所を聞いて、手紙を書いた。

そこには、

自分の思いのたけを全て詰め込んだ。
どうして好きになったか、自分がどんなにダメな男か、、、
最後に、「3月12日、13日、14日のどれでもいいから、あのショッピングモール行く時待ち合わせた駅のホームで待っていてほしい、夕方の4時から5時、その間の少しでいいから。」と綴った。

卒業直前である。


ポストに投函したあと、思い出のショッピングモールへ向かい、あの時星野が気に入った、古ぼけた人形を買いに行った。

手のひらくらいの大きさ、手彫りの木でできた、子供のおもちゃのような人形だ。
板チョコを包んでいたアルミホイルで作った指輪をみて星野が笑った事を思い出し、
またアルミホイルで指輪を作って人形の首にかけた。
笑ってくれるかな?、、、、、

そして

3月12日、、星野は現れなかった
3月13日、、この日も現れなかった

最後の日、3月14日、、
約束の時間に電車一本遅れた美月。
時間はもう4時を回っている。
ホームに降り立ち、急いで真ん中のベンチへと向かう
階段をよけ、自動販売機の群れを過ぎたその先、

そこには、、、

こっちに気づいた星野が照れ臭そうにすわっていた。

間に合った、、正確には少し遅れた、、
ゆっくり近づく美月。しかし、言葉が出ない。嬉しいのか、悲しいのかわからない。ただ、少しずつ歩みを進める。

星野の目の前に立ったものの、言葉が出ない美月。顔を見ることもできない。
結局何もできないままなのか、、、

星野がはなし出す

「もうすぐ卒業だね。手紙ありがとう」

美月は少し星野をみてそっとうなずいた。

「私、あれから彼氏ができてね、もう2年になるの。で、美月にもらった手紙の事言ったら、行ってこいといってくれた。それで、今日来たんだよ」

美月はゆっくりと2度うなづいた。
そのまま、顔を上げることができない。
月日の経ったことを感じたと同時に、目の前の星野は優しさに包まれているように見えた。


来てくれたという優しさと、新しい彼氏の深い愛情を感じた美月。
「ありがとう」
自然と、口からこぼれた。
星野が少し微笑んだ気がした。

ホームに電車が入る


「ごめんね、行くね。」

星野はそう言って、開いたドアから電車に乗り込む。

ドア付近ににこちらを見て立っている星野

ゆっくりと去っていく電車が、遠く見えなくなるまで見送る美月。

その顔は、悲しみの顔ではなく、何か吹っ切れたような、清々しささえ感じられた。

自分の中で、霧が晴れるようにもやもやした何かがなくなったのだ。

星野が来てくれたこと、その彼氏が行ってこいと言ったこと、星野は新しい人生を歩んでる、それがわかって、嬉しくなったのだ。

そして、美月自身も。
新しい自分になれた気がする、これから前に進むんだ!

生まれ変わるって、こういう事を言うのかも?と思いながら、美月はカバンの中の人形を取り出す。
渡せなかった人形、いや、渡さなくて良かったんだ。


首にかけたアルミの指輪を外してポケットにしまう。
人形はベンチに座らせ、美月はその場を去った。


その人形を
美月は振り返ることなくホームを後にした





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イメージ楽曲
乃木坂46
「ありがちな恋愛」
2019年発表  「帰り道は遠回りしたくなる」収録

楽曲参加メンバー
秋元真夏、生田絵梨花、伊藤理々杏、井上小百合、梅澤美波、大園桃子、齋藤飛鳥、斉藤優里、
桜井玲香、佐藤楓、白石麻衣、新内眞衣、高山一実、星野みなみ、堀未央奈、松村沙友理、
山下美月、与田祐希

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