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日記【 シロクマのことは考えるな 】

もうコオロギが鳴き始めた。
おかしい。
ツクツクボウシまで鳴き出した。
ツクツクボウシといえば、夏休みが終わる不安を煽ることで有名なやつだ。私の中で。
私は夏休みの宿題をためてしまう属性の最上位なので
8月末日など目も当てられない有様だ。
好きな読書感想文と防災ポスター、工作を早々に済ませるものの、「ドリル」。これが進まない。むしろランドセルに入ったまま夏休みの後半までじっと息を殺している。もう少しなにか言えよと思う。
自由研究はというと、夏休みもそろそろ終わろうかと言う時に
積み重ねてきたデータに大きな欠陥がある事に気づいてしまい、白紙に戻る。姉に泣きついて(文字通り涙ながらに)パクリの許可を貰う。
さあてんやわんやだ。親に小言を言われながら
漢字ドリルは一日で済ます。手がめちゃ疲れる。
算数ドリルは解答をまるごと写す。自分で丸つけだ。よりリアルにするために、あえて数問間違えたりする。
絵日記は嘘八百で朝顔の観察日誌なんかほぼ妄想だ。
あとはなんだっけ?

最近は自由研究のキットが沢山販売されいて、むしろ大人がやってみたいものも多い。
でも、あんなものを売ってしまったら、
自由研究、絶対誰かとかぶるよね。

子供の頃って、何もかもが一大事で。
夏休みの宿題が終わらない、ということが恐ろしくまずいことだと思っていた。
大人になってみると、休みに宿題とか出すなよ休ませろよ先生も休めよ、と思うし、宿題が終わらなくても小学校は卒業できるし、何も思い詰める必要は無い。
でも、子供の小さい身体や時間感覚や初めてばかりの人生の中には、何か一つでも取り零せば将来がどうにかなってしまうのでは?
という不安が渦巻いて、夏休みの宿題を泣きながらこなさざるを得なくなるのだ(個人の感想です)。

どうなんだろうね。子供に
そんなに思い詰めなくても、夏休みの宿題が終わらなかった位で将来を棒に振るようなことは無いよ、と教えるべきか、
それとも、
こういう小さいところがちゃんと出来ないようであれば
大人になってもろくな人間にならないぞ、と教育すべきなんだろうか。

子供の不安をいたずらに煽るような親にはなりたくない。
私はいつでもあなたの味方だ、という最大の支援が出来る親でありたい。
まあ未来永劫、子供なんて居ないんだけど。

カウンセリングで、
もし私に子供がいたら、なんて話をしたことがある。

「自分の母親のようにはならない、私はちゃんと子供を愛す」

本当にそれだけだ。

そこにカウンセラーさんは、
「それは、苦しいよね。」と優しく言った。

そうだ、それは苦しい。

親のようにはならない。
そう考えれば考えるほど、頭の中は「なりたくない親像」でいっぱいになる。嫌な記憶で、いっぱいになる。
シロクマのことを考えるな、といわれると考えてしまうのと似ている。
呪いのようなものだ。

親のようにはならない。
そうやって無理している事を子供は感じ取って傷つくと思うし、
結局自分の親と同じ事をしてしまって罪悪感を抱く結果に終わる可能性もある。
想像するのは、子供を一生懸命愛せば愛すほど、
「いいな、この子はこんなに愛されて。なんで私は愛されなかったの」という悲しみ、自分に愛されている子供への嫉妬、果ては憎悪を抱く自分だ。
負の連鎖は止まらない。
だから私は、子供なんて持つべきじゃない。
欲しいと思ったことは無いし、ましてや結婚したいと思った事も、一度もない。

「アイツのようにはならない」

これは結局、親への復讐、つまり執着。あるいはアイツのような親になってしまうのではないかという不安。そういうものからくるのだと思うし、
自分が、「私は私」ではなく
「アイツの子供」という存在のまま大人になれず、親から自立できていない、呪縛から解き放たれていないという事なのだと思う。

両親とも機能不全家族で育ったので、
私たちに、「アイツのようにはならない育児」をしようとしたのかもしれない。
しかし残念ながら2人とも「アイツの子供」のままであり、
結局、負の連鎖を止めることは出来なかった。

親の時代は、「結婚」と書いて「ゴールイン」と読む時代だった。
結婚は善、子供は当たり前。
母は長男の嫁だ。では男の子を産んで家を継がせなくては。
うちの親はその時代に流されて、私たちを産んだんだろうな。
で、蓋を開けたら三人女。
母は肩身が狭かっただろう。
もしかしたら私達が女に生まれた事を恨んでいたかもしれない。

私達が三姉妹なのは、親が子供を沢山欲しがった訳ではなく、
男が出るまでガチャを引き続けた結果、ハズレが貯まって諦めた。そういうことなんだと思う。


なんの話ししてたんだっけ?
ツクツクボウシの話じゃなかった?

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

朝晩が涼しく過ごしやすくなった。
やっぱり、秋が近づいてきているんだなぁ、と思う。

ところで、
ツクツクボウシって
「ツクツクボーシ!ツクツクボーシ!ツクツクボーシ!
ツクツクボウシボウシボウシボウシッ、ジィーーーーー…」
って鳴くと思うんだけど、
その「ボウシボウシボウシボウシ」の部分がどうしてもラピュタのゴリアテタイガーモスが飛ぶ音に聞こえて
モデルなんじゃないかと半ば本気で思っています。


まだまだ暑いので、何卒ご自愛ください。

のがの

*トップ画は、釧路市動物園で人気のシロクマです。

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