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伝統と革新の間で

仕事としてのデザインに携わったことはなく、だから漠然とした憧れがあるのだけれど、デザインという言葉はいかようにも解釈できるんだなぁ、と、ふと考えました。

人間を例にしても、髪型や服装、アクセサリーや振る舞いなどなど、デザインしようと思えばそれこそ無数にデザインできますし、果ては「トータルコーディネート」と言えば隅から隅までデザインのしようがあります。

でも、人間は無機物では無いので、例えばいざヘアデザイン(髪型)を変えようとすると、感情のYesを取らなくてはなりません。「我が校の野球部員になりたければ坊主にしなくてはならない」と言われて、「そういうものだよね、坊主にします」とみんながみんなそうできるかといえばそうではなくて、「じゃあ辞めます」なんてこともあるでしょう。あるから、ニュースにもなったのでしょうし。

「坊主が伝統だから」と言われても、「いや、髪型で野球のレベルは変わりませんよ、古いなぁ」と思う人のほうが多いのではないでしょうか。そんな風に、今までの当たり前を見直してデザインを革新するとき、それぞれの立場から議論が起きるのは必然でしょうし、今回のJリーグでも、そんな議論の末に導いたこの度の結論なのだと思います。

議論が尽くされたうえでの決定であるなら、そこに異を挟むのは間違っていると思います。ただ、このような見解を示されてしまうと、「最初から変更ありきだったんだな」と正直感じてしまいました。

「商品サービスの改善、改良は消費者のライフスタイルの変化に合わせて適用していくもの」

ライフスタイルの変化、というのは、おそらくここでは「DAZNの進出」を指しているのだろうと思われます。これについては未だに色々な意見が燻ぶっていますが、リーグへの投資の恩恵や海外へのブランド展開など、どちらかといえば好意的な声が多いように、個人的には感じています。その反面、今回の決定のように、大スポンサーの意向を汲まなくてはならないことへの弊害も起きてしまうこともあります。

大スポンサーの忖度、のように聞こえてしまっていたら恐縮ですが、しかし、このデータが本当に基になっての議論なのだとしたら、そう思うのも仕方がないのではないでしょうか。

Jリーグの集計によると2013年から18年、各クラブの背番号や選手名に関する視認性不良の報告はのべ45件。おおむね年4〜5件のペースで発生していた。

この報告が誰からどのようなルートで上がっているのかが不明なので推測の域は出ませんが、Jリーグのファン全体を母数としたとき、対応が必要なデータ数と言えるでしょうか。

全てのチームが視認性不良を起こしているのならまだしも、おそらくそれは特定のクラブであって、そのクラブにおいてもデザインを探る中で試した一手であるでしょうし、それは翌シーズンへの反省という形で改善することも十分可能なはずです。

上記は例としても、そのような対策を講じた上での今回の決定なのでしょうか。そうなのであれば、その辺りの情報も添えたうえで発信頂けると、ファン・サポーターの理解も得られるのではと思います。但し、そうでないのだとするならば、先に述べた通り、大スポンサーや関係取引先への忖度、決定ありきでの動きだったのではと言わざるを得ません。

ユニフォームデザインは各チーム、毎年、改良を加えていて、お披露目会を楽しみにしているサポーターも多いと思います。たかが数字、されど数字。背番号も含めてのユニフォームであり、そこのデザインに制約を課してしまうことで、どれくらいのチームに影響が出てくるでしょうか。

少なくとも、ゲキサカで言及されている通り、ジェフユナイテッド千葉にとってはある種のアイデンティティとも言える部分です。

ライト層への配慮。その一点で、いままで支えてきた方々の思いがないがしろにされてしまうのならば、それは悲しさを覚えてしまいます。ユニフォームだけではない、タオルやマフラーにも、そのフォントは残っています。レガシーといえば聞こえはいいですが、受け継いでいくことすらできなくなってしまうような結果に至ったことはシンプルに残念です。

Jリーグだけですよ、そのほかの大会では制限しませんからね、と言われても、その国のトップリーグの占める割合を考えれば、「はいそうですね」とは簡単には言えません。

せめて、どのような議論の末に至ったのか、結論だけではない、オープンな発信があることを願うばかりです。

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