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ひとは、好きなものを選びたいけど選べない?~社会的証明について~

とあるコロンビア大学での実験。
研究者たちは、「ミュージックラボ」という模擬的音楽市場をネット上で、開設しました。 
このサイトでは、無名バンドによる誰も知らない曲を48曲聴くことができます。

14,000人のサイト訪問者の半数7,000人が、この48曲のなかで、一番好きな曲をダウンロードするように、研究者から依頼されました。

そして、残りの半数7,000人が、他の参加者が、各曲のダウンロードした回数を評価したうえで、曲をダウンロードするよう依頼されました。

結果、ダウンロードの回数は、よい曲がトップにたつと思いきや、最初の人気次第で、結果が決まったそうです。つまり、すでにダウンロードしている数字の影響を受けて、一番好きな曲を決めていました。
ダウンロードトップにたつ要因が、必ずしも曲のよし悪しではない、ということですね。

この影響力を「社会的証明」といいます。
その原理とは、「人は誰でも、自分でどうしたらいいのか分からないとき、まわりに目を向けて、他人の行動を手本にする」というもの。

この原理が、日頃活用されているということは、世の中には、選択肢が多すぎて、自分のほしいものを自力でみつけることが、意外と難しいからではないでしょうか。

他人の考えを自分が望む方向に誘導したいのなら

誰かによい証言をしてもらうのが、効果的です。

・授業をさぼる生徒を教師が説得する場合、当人によく似たタイプの生徒から、出席することのメリットを話してもらう。

・地元の美容チェーンの経営者にソフトウェアを売りこみたいのなら、ほかの美容室経営者が、そのソフトウェアを重宝しているという情報をおしえる。

・管理職が部下に新しいシステムを使うよう説得するならば、同じ部署で、すでに乗り換えに同意した人に証言してもらう。など。

正攻法で課題解決をするのではなく、他者がもたらす力を利用するのもいいそうです。

隣人たちの目の前で起きた殺人事件は、なぜ誰も行動に移さなかったのか?

1964年3月、ニューヨークで殺人事件が発生しました。
この事件は、だれもいない静かな場所で、発生した事件ではなく、35分のあいだ、路上で逃げ惑う被害者に対し、ナイフで襲っている姿を、38人の隣人が目撃していたうえに、誰も警察に通報もしなかったそうです。

この事件は、のちに、「なぜ38人もの人が見ていたのに、誰もなにも行動しなかったのか」と議論が巻き起こりました。そして、誰も行動しなかった理由として、人々の「社会的無関心」が強調され、この事件に関心を抱いた多くの人たちが、この意見に賛同しました。

しかし、その後ある二人の心理学者が、その意見に異論を唱えました。
「多くの観察者がいたので、誰も助けなかった」と。

つまり、助けられそうな人が、ほかに何人かいれば、個々人の責任が少なくなるからだということです。
いわば、「たぶん、誰かが助けるか、助けを呼ぶだろう。もう、すでに助けを呼んでいるはずだ。だから自分が何もしなくて大丈夫だろう。」という心理。

例えば、ある男性が道端で倒れていたとします。
その男性が、心臓発作で倒れているのか、酔いの果て、眠りこけているのか分かりません。
また、となりの部屋が騒がしいのは、犯罪ととらえられる暴行が発生しているのか、派手にやりあっている夫婦けんかなのか。

他の目撃者がどう反応するかで、その出来事が「緊急事態」であるか、そうでないか、になってしまいます。

いうなれば事態によっては、「社会的証明の原理」によって、無常にも、「緊急事態」でないと解釈されてしまう場合があるそうです。

振り返ってみて、どうでしょうか?
身の回りのこと、少し「社会的証明」を意識してみるのもいいかも。

ご興味がある方、ぜひ
『影響力の武器』シリーズ  ロバート・チャルディーニ 著 誠信書房
参照してみてください。

https://nog-0345.com/session1


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