肉じゃが

昨日も風呂に入らずに寝た。今年、風呂に入らずに寝た夜は何日だろうか。
来年の目標は毎日風呂に入ることだ。風呂に入らずに寝た日は、カレンダーにチェックを入れてみるのもいいかもしれない。

24日から26日まで、妹と私の友人の3人で2泊3日の京都旅行に行った。
26日は20時過ぎに家に帰ってきて、泥のように眠った。昨日も1日中食っては寝てを繰り返していたが、なかなか疲れがとれない。

今朝も旅行の疲れが抜けておらず、6時半に目がさめたがベッドから出れずに結局8時半頃に起きた。
1LDKの部屋の中は脱ぎ捨てた衣服と、開けっぱなしのトランク、中途半端に終わらせた片付けの残骸であるパンパンのゴミ袋が散乱しており、かなり荒れ狂っている。

「泥棒でも入ったんか!」
子どもの頃、母が散らかった私の部屋を見てはよくこう言って怒っていた。
ただし今は誰も何も言わない。一人暮らしは快適だ。

風呂を沸かし、米を研ぐ。こんだけ荒れ狂った部屋にいるのに片付ける気は起きなくて、ぼーっとしながら風呂が沸くのを待った。

風呂から上がると、米が炊けていた。濡れた髪もそのままに、炊きたての米を茶碗にふんわりと盛る。湯気がぶわっと立ち上がり、米の甘い匂いがする。炊きたての米のにおいが私は大好きだ。

米のにおいといえば高校の国語教師の授業中での発言を思い出す。
彼は授業の雑談中に「赤ちゃんのオムツを替える時のにおいがずっと何か似ていると思ったのですが」とおもむろに話し始め、「あれって炊きたての米の匂いに似ているんですよね」とニヤつきながら言っていた。

あれから毎回、米を炊くたびにあの国語教師の言葉を思い出す。
大して面白い授業をやらなかったくせに、米が炊けるたびに思い出してしまう。ちょっとした呪いではないか。
でも、私はやっぱり米の炊けるにおいが好きなのだ。それに、米が炊けたことを知らせる炊飯器の陽気なメロディ音も好きだ。

ガスコンロの鍋には昨日作った肉じゃがが残っていた。一人暮らし4年目にして初めて作った肉じゃがは、思いの外うまく作れた。
鍋に火をつけて温めるのが面倒なので、茶碗によそった湯気の立つ白米の上に肉じゃがをどっさりとのせ、台所で立ったままわしわしと掻き込む。
冷たいままのじゃがいもや人参、肉が口の中で熱々の白米とジュワッと混ざりあう。
米の上にのっている玉ねぎが米の熱でとろけだす。そこをすかさず箸でぐわっと掴み、口に放り込む。
ふと思いついて冷蔵庫から練り辛子を出し、茶碗のふちにぴゅっと辛子を出して肉につけて食べる。うまい。酒に合いそうな味だ。
茶碗が空になったがまだ空腹は満たされず、またもや茶碗に米を盛り、肉じゃがをのせて掻き込む。立ったまま台所で掻き込むご飯は、なんでこんなにも美味しいのだろう。

空腹が満たされたところで、そろそろ家を出る時間となる。
慌てて化粧をし、飛び出すように家を出た。今日は春から妹と犬と暮らす、家の掃除に行く日だ。

この家で一人暮らしをするのもあと20日くらいだろうか。
残りの時間も、わしわしと米を食べて、愉快に暮らしたい。
新しい暮らしは楽しみだけれど、大好きなこの家と、そして一人暮らしとお別れするのはやっぱりとても寂しくて、きっと引き渡しの時には泣いてしまう。

でもまあ、寂しいと思えるくらい、いとしい生活を送ってこれた。
明日は掃除をしましょう。

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