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【上沼恵美子さん執筆「犬も食わない」感想】これは夫婦版「羅生門」だ!

関西主婦が支持する "スーパータレント" 上沼恵美子さん
旦那様は関西テレビの元テレビプロデューサー、元テレビディレクターの上沼真平さん

個性の強い二人は、よく喧嘩します。時にはレストランで腹を立てた上沼(妻)さんが、メニューを食べずに退席することも。

そんな夫婦の喧嘩ヒストリーを綴るエッセイが、「犬も食わない」

妻の目線、夫の目線で振り返る構成がユニーク


このエッセイの面白いポイントが、一つの喧嘩を妻の目線、夫の目線で振り返っていること。それぞれの見え方が全く異なっている点がユニークです。

例えば、旅行先のヴェネチアを歩いていた夕方。サンマルコ広場を通っていたら、若者が喧嘩! 妻は巻き込まれる危険を感じ、夫にここを離れようとお願いします。すると夫は「いや待て待て。こんな派手なけんか滅多に見れるもんじゃない」と歓喜。

この時の夫の言い分は、まるでミュージカルのようだから見るべき。「ウエストサイド物語」の大ファンである夫は、目の前で繰り広げられる乱闘が、かの名作のダンスパーティーのようだとロマンに浸っていたのだ! こんな楽しいものを生で、しかもタダで見させてもらっていることに感謝する夫。

喧嘩は危ないものと捉える妻と、幻想に浸る夫。現実を見つめる女性と夢見る男性という真逆の思想が見え隠れしています。夫婦漫談が面白いのですが、同時に物事の捉え方が人によって違うんだと痛感させられます。さながら夫婦版「羅生門」(映画)を読んでいるかのような気分です。

現在は別居中の上沼夫妻だけど・・・


このエッセイの出版時の2011年は同居していたけれど、現在は別居中の上沼ご夫妻。しかし、妻は夫に怒りを感じているものの、深い情があるようです。その証拠に上沼恵美子さんはインタビューでこのように答えています。

たとえるなら、あの人は甲斐性のない石原裕次郎。でも、私にとってはまぎれもなく石原裕次郎なんです。(中略)恋焦がれて息ができなかった、星を見ながら彼を思って泣いた私も私ですから、そこも大事にしてあげないとね。言うたら、私の一番よかった時代を作ってくれたのは彼ですよ。あんなに好きになった人はいません。

今、はっきりわかりました。夫は私にとってまだ《大事な人》なんです。一生で一番関わった人ですもん。今日まで離婚していないのは、やっぱり何やしらん縁があるということなのでしょうね。

婦人公論.jp

ということで夫婦とは何かを知れる「犬も食わない」は、夫婦関係に悩む人にとって必読な書籍です(私は結婚したことありませんが)。

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