金魚掬い。

暗がりに誰かが佇んでいた。気になり、そいつの正面に立つ。少しずつ目先にある何かが発光を始めた。耐え切れず、目を細める。そこには金魚のマスクを被った男。無言で僕を見つめている。
「あの……何ですか?」
「金魚掬い」
彼の言葉で目が覚めた。思わず、能面を手に取る。そうだ。夏が始まった。

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