夜が来る前に。

「街から出たいんだろ? 案内してやるよ」
兎のマスクを被った男が歩き出した。路地裏、居酒屋、駅……色んな夜が遠ざかっていく。黒猫が鳴き、彼が止まった。
「ほら、行けよ」
とん、と優しく背中を押された。
「こっから先は、お前の道だぜ」
顔を上げる。オレンジ色と藍色。帰ろう。夜が来る前に。

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