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ネット広告、の未来。

デジタルマーケティングの”中の人”として、今まさに、「変革期」にあることを感じます。個人情報保護を目的に、ネット広告の仕組み自体に規制が施され、これによって何ができなくなる、どう対応する、など大騒ぎなのですが...この点を少し違う角度から眺めてみます。

Cookie規制という現実

テレビ広告や新聞広告など、いわゆる「マス広告」と呼ばれるものとの対比として、ネット広告の特性として語られてきたのが、「ターゲティング」。テレビCMのように「広く浅く」ではなく、企業側が「広告を見せたい人たちにだけ」広告を配信すること。これにはCookie(クッキー)という仕組みが使われてきました。例えば、掃除機のページを見ていて、その後ニュースサイトに言ったら、さっき見た掃除機の広告が!!って体験をされた方もいらっしゃるかと思います。これは一度訪問した「掃除機ページ」がクッキーにより保存されていて、「そのページを見た人(厳密には、見た「ブラウザ」)に広告を出そう」と意図的なターゲティングが行われているわけです。あるいは「掃除」に興味関心がある、という印がつけられ、他の掃除関連商品の広告がでてくる可能性もあります。
つまりWEB上の「履歴」が残されていて、それをもとに「この人は何を見ている=何に興味を持っている」と識別され、広告企業側はそれを元にターゲティングが可能でした。
それが「個人情報保護に照らしてヤバくね?」ということになって、「じゃあ、やめようぜ」という流れになっています。確かに「特定の広告」に追いかけられるのも、同じような広告ばかり出てくるのも「気持ち悪い」ですからね。当然の流れ、なのかもしれません。

ちなみに私は「誰」なの

この世界の王者Googleもこれらの「データ」を駆使しています(今後は「規制」もしていくようです)。Googleの主軸は広告収入なので、その効率をあげて企業側にたくさん広告をだしてもらうよう、データの量と質を飛躍的にあげてきました。Google広告を使うと、「誰に広告を出すか」がかなり細かく設定できるのですが、では、「ユーザーとしての」私が、Googleからどんな人と印をつけられているか、ちょっと公開してみます(Googleアカウントを持っていれば誰でも知ることができます)。

Googleから見た、nochimochiはこんな人

55歳、男性、日本語をしゃべりますw ジャパネットは1年前にエアコンを買ったときに見に行きましたが...ゲームも映画もあんまり興味がありません...

この下にもたくさんあるのですが、
・自動車、ホンダ、サイクリング  ...確かに最近見たな
・サッカー、メイク、果物・野菜  ...ニュースで見たり、仕事上見たりしたけれども
・確定申告、司法、保険 …うわ、ごく最近だよ、見たの

私は、これらに「興味がある人」とGoogleさんは印をつけています。確かにみたけれども..興味があるから見た、かどうかは別ですけど。

さらに、
・既婚、住宅所有、子供あり
なんてのもありますが(間違っていません)
・世帯収入:高
う~ん、あっているのか間違っているのか、あくまでGoogle先生がそう思っているだけなので...

規制によって、どうなる

こういったカタチで、過去のWEB上の行動履歴、訪問履歴を元に広告配信側のAIが、「どんな人か」をジャッジしていくことができた、つまり「ターゲティング」できたのですが...そもそもの「行動履歴を取る、残す」こと自体ができなくなります。なので、「ターゲティング」できなくなる。じゃあどうなる?マス広告との違いがターゲティングであって、ネット広告の強味がターゲティングであってのですが、それができなくなると...
※勝手な推測ですが、「これは個人情報取得にあたらない、クッキーとは違う仕組みだからね」という新しい手法が産みだされるのでしょう。そして数年後、それも規制され、さらに新しい手法が...という繰り返しかもしれません。
※前段の「Googleがどう見ているか」の例からもわかるように、「ターゲティング」なんて、実は、「そんなもん」です。当たっているものもあれば、そうでないものもある。そもそもそんなレベルだし、人間の行動はルールに基づいているわけではないから、AIにも限界があるってこと。だから規制されてもそんなに大きなことではないかもしれません。

ちょっと待って、その前に

新しい手法が出てくるまでは、「ブランド」を意識した訴求や、まずは「認知度」向上を目的とした広告がでてくるかもしれません。(これって「マス広告回帰」??)
でも、この規制の波をいい機会と捉えて、これまでのネット広告を見直すことも大切だと思います。
マス広告の配信側、つまりテレビ局や新聞社などと比べて、ネット広告の配信側は、「出せる広告の基準」が曖昧で、新聞などと違い「ダメなら変えられる」意識もあって、正直「上品ではない」広告も少なくないのが実情です(とても残念に思っています)。例えば、
・「痩せる、生える、黒くなる」に代表される、大げさな(場合によっては根拠のないことを謳っている)広告
・定期購入なのにそれを明示しないで、(定期の1回目として)安く見せる広告
・広告を消そうと、[x](閉じる)ボタンを押そうとするとクリックしたことになっちゃう広告(ダミーの[x])
・動画を見ていたのに途中で急に出てくる広告/読もうとした記事の上にかぶさっちゃう広告

どれも残念ながら、「ダメな広告」ですよね。広告を見ること、クリック・タップして商品を見ること、その商品・サービスを買うこと、全てが「ネガティブなイメージ」になりかねない広告が、残念ながら少なくないのが、今の状況。
これを改善していくことが(改善する意識そのものが)、大事なのではないかと、この「変革期」だからこそ、考えたりします。本来は、クッキー規制とか無関係に取り組むべきところですけど。

個人的に、「広告を見る側」で見ていると、一番イヤなのは「上品ではな...」(いや、直接言いますね)「下品な広告」です。その商品・サービスを使いたい気持ちはもちろん浮かばないし、そんな「下品な」手法を取る企業自体、いいイメージを持てません。

広告出した、すぐ売れた、という時代は過去になりつつあります。「正しい」「上品な」広告を出し続けて、長い目で見て効果がある、というスタイルに変えていくことも必要なのかもしれません。
あ、これ、「ブランド」の考え方と近いですね。


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