「ポトフ 美食家と料理人」
12月15日(金)から公開される「ポトフ 料理人と美食人」を試写で。
「青いパパイヤの香り」や「ノルウェイの森」のトラン・アン・ユン監督が、19世紀末のフランスを舞台に、料理を芸術にまで昇華させた美食家ドダンと、そのレシピを忠実に再現する女性料理人ウージェニーとの愛の物語を描いた作品。
とにかく食べることが好きな人にはたまらない作品。
かつて彼の監督デビュー作「青いパパイヤの香り」で(30年前!)、むせ返るような雰囲気の中作られた炒め物やスープ、パパイヤのサラダが登場するのを見て、まだ当時、ベトナム料理店なんてほぼなかったので日本橋の方にあったタイ料理店でソムタムや空芯菜炒め、生春巻きを食べて思いを馳せていた頃を今作を見ながら思い出したなぁ。
オープニング、野菜の収穫からの、丁寧に料理が作られる様が描かれるんやけど、これがしっかり長回しで、女優のジュリエット・ピノシェ自身が作っている。その段取りや手付き、捌きが見事。
そして今作の料理監修をしている三ツ星レストランのオーナーシェフ、ピエール・ガニェール自ら出演して、皇太子のメニューを読み上げるシーンの料理名(例えばウズラのクイン風ソースとザリガニ、キジバトのプーペタン、アンコウのヴェスタ風、マスのシャルトルーズソースとか)にどんな料理だろうと想像を掻き立てられ、それに合わせるワイン名(カルボニュー、ランゴン、ムルソー・プイィ、サン・テステフ、アルヴォワジー、ラタフィアなどなど)も、好きな人にはさらに妄想が肥大する。
あと、こっそりズアオホウジロという希少な野鳥を食べるシーンは、お皿を覆うように頭からすっぽりナプキンを被って食べるという儀式めいた食し方を見ることができたり(香りが飛ばないような意味があると思う)、びっくりするような大きなブリオッシュを美食家爺さんたちが引きちぎりながら頬張ったりと、食にまつわる興味深い場面が挟まれお腹が空く。
なんかこの料理のワクワクは「パペットの晩餐会」や「料理長殿ご用心」なんかを思い出した。
多幸感溢れる食の映画。もちろんそればっかりではない展開なんやけど、その先にある光も好き。
何年かに一回見る「バベットの晩餐会」と並んで、好きな作品になった。
それにしても美食家・ドダンを演じるブノワ・マジメルも、ええおっちゃんになりはったなぁ。しかも元パートナーのジュリエット・ピノシェと20年ぶりに共演するってのも大人。フランスって感じがする。
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ちなみにピエール・ガニェール東京店では映画の中に登場した料理が食べられるそうな。
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