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ウェブショップで豚を売るのなら〜やってわかったECのコツ 商品づくり編〜

前回、ウェブショップにおける出品について書いた記事の続編です。

今回は商品作りをテーマに書いてみます。

私の場合は豚肉を素材・商材としており、商品作りも広く捉えると

どの部位を、どれだけ、どんな形で用意するのかから始まり

発展して横に広げると加工品はどんなものを作るべきか。
例えばハムやソーセージなどの馴染みのあるものから
アイスバインやポークジャーキーなどの変わり種
レトルトカレーなどの商品

と、様々です。

通常、商品を作るにあたっては
・皆が求めているものを作る(購入者起点)
・作りたいものを作る(製作者起点)
の二つの考え方があります。

これは、あくまで私の考えですが

みんなのために作ったもの、というのは基本的に凡庸にはなります。
「みんなの為は、誰のためでもない」という思考です。
みんなのためになるものは、すでに多くの人や大きな会社が作っています。
そう言ったものを小規模・零細事業者が作るにあたっては
他にそう言ったものがなく、画期的に利便性が高いなどの理由がない限りは
展開が難しいと考えています。

又、私の場合、素材が固定されていたこともあり
いかにしてその素材につなげ、需要を創出しうる商品を作るか、を考えました。
基本的には多少尖っていても「良い」と思うものを作った上で提示して、それを受け入れていただくことを目指す。
つまり後者寄りの発想です。

その商品は世の中に適合しているのか

まず、自身の持つ商品は届ける人にマッチしているかを考えます。

相変わらず、「豚肉」をテーマに考えますと
現在は、人口は減少傾向にあり
共働き世帯が多い。
→自炊や家庭での料理は少なくなっている

ただでさえ、家庭での消費が減っている中
どうやって、スーパーより遅く、高い商品を注文してもらえるのか
その日のご飯の食材を考える人にとって、
配送に少なくとも1日かかるウェブショップでのお買い物はもはや考慮のゾーンにすらいません。
明確に劣勢なのです。

ただ、ただの食材から「楽しみに待つもの」「お取り寄せ」「ギフト」「簡単に食べられるもの」と、商品の立ち位置を変えていく事で活路は見出せます。

又、同時にウェブショップにはつき物の配送で言うと
宅配便の受け取りというのもストレスになっている事もあります。

現在(2020/04/19)はこの情勢が一変しています。
皆が外出自粛によって家にいる。
この行動変容も大きな要素です。

・宅配便の受け取りができる
・家で食事をする機会は増えている
付け加えるなら
・人に会う事ができない代わりにギフト需要が増える
・帰省が憚られる中で離れて暮らす家族への贈り物を
など、様々なことを想起します。

そして、これを契機に一定数の会社は「リモート」の導入から
今後在宅率の変化は一時的なものではなく、定着するかもしれない。
こう言った人や社会の行動変容や情勢の変化にアンテナをはって
柔軟に変化していくことも非常に重要です。

ボトルネック(問題要因)を探そう

ここからは、今ある商品の中で問題となる要因(ボトルネックといいます)はなんだろう、と考えることにします。

まず、私が豚肉を販売しようとした時気付いたこと。
それは
・パッと見どれも同じ
・食べないと違いがわからない
・売り文句がどこも同じ

と、、絶望的な状況でした。
本当に、こればっかりは食べていただかないと分かってもらえない。
なのでまず、少しずつ配って試食していただこうと、そう思いました。
ボトルネックを洗い出しました。

豚肉の持つボトルネック
・冷蔵/冷凍必須
・日持ちしない
・持ち歩きには向かない(かえって迷惑)
・2-300gはないと試食としても十分でない
・精肉の中でもメインの部位が必要
・どう食べられるかわからない(調理が委ねられる)
→味や旨味を正しく伝えられるか不明

全くもって非効率で、流石に無理だと判断しました。

このようにして、今ある商材や、作りたいものが持つ課題点を把握することは
先の課題解決において重要な部分です。
これを把握した上で、新たな商品づくりをします。

目的を持って商品を作る

何か、新たな商品を作るときには目的を持って取り組む事が重要です。
なんとなく、作ってみた。でも売れる事がないわけではありません。

しかし、なぜ(why)、なんのために(for what)、どうやって(how)といった思考を持って自問自答を繰り返し
商品を企画することは基本として持っておくべき考え方だと捉えています。

先ほどの豚肉をサンプリングする(美味しさを知っていただく)という一つの目的に合わせて実際に商品を制作しました。

冷蔵保管が不要で、日持ちして、比較的安価な部位を少量で、、というボトルネックを解決してくれるにはどう言ったものが良いのか

様々な要因を加味した上、多種多様な中での取捨選択をしていかねばなりません。

結論、私が行き着いたのは

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「レトルトカレー」でした。

常温保存できる
持ち運べる(バッグに入れられる)
一点当たりの肉量は比較的、少なくてすむ
メイン部位でなくても良い、むしろそのほうが適性がある
味付けや加熱が済んでいるので、一定のクオリティを保持できる

加えて、明確に一人一食の量を提供できる。
お渡しした時、ポケットティッシュやティーバッグとは違い
保存は効くけど、ほぼ必ず食べてもらえるであろう
「受け取って困ることはない」とはっきりわかるものでした。

「価値創出」が商品作りのキモ

商品作りは
素材を組み合わせたり形を変えて新たな価値あるものを作る
という事です。

その際気をつけたい事は
元のものの価値と新たな商材の価値の差が重要であるという事です。

今回例に挙げているカレーも
精肉サンプルでは焼くことを前提とする為、バラ肉などの主要部位が必要でしたが
レトルトカレーは加圧して煮込まれる為、比較的硬い部位の方が向いていたし、そのほうが安価だったわけです。加工賃なども考慮せねばなりませんが。

精肉として高価格な部位として知られるロースをハムにするよりも
精肉の端材や、精肉としてはあまり出回らない(=比較的安価な)モモやウデを挽いてウインナーを作る事
の方がより効率的なプラスを生み出す可能性を秘めていると思います。

このようにして、加工だったり商品に転化する事でどれくらいの価値が生まれるかを試算すること重要だったりします。

他の形もあって、
突然ですがみなさん「豚トロ」はご存知でしょうか?

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今や、皆が知る部位ですよね。「ピートロ」とか「ネック」とも呼ばれます。

元々、この部位は捨てられていようなものでした。
こうした「価値のないもの」に価値を見出し、
ブランドをつけたり、呼び方を変えたり、食べ方を変えたり
そういった工夫で、何をするでもなく商品を生む形もあるわけです。

私の記憶では、焼肉チェーンの牛角が豚トロを全国区に広めたのではないかと思います。

胡椒も、中世では貿易によって移動することでヨーロッパでは金以上の価値を生んでたりしたわけですから、商品の特性や可能性を深堀りして考える事は大いに意味があります。

小さい力で大きなものを動かす「てこの力」

ペンチはグッと握るだけで硬いものを曲げられるし
缶のプルタブや、釘抜き、様々な道具に応用されている、てこの力。

これはつまり、小さな力でより大きな力(成果)を生み出すというものです。
この考え方を意識することが商品作りをより良いものにするか、徒労の多いものにするかを左右する部分です。

このレトルトカレーにも「てこの原理」が効いている点が多くあります。

・小さい力(労力)
比較的安価な部位
1パック(1食分)の肉量
(OEMなので)電話や発注書で製作ができる

・大きい力(成果)
一度に比較的多くの量を作れる
出来上がった時点でパッケージが完成されている
在庫として保管できる→注文からすぐ発送できる
賞味期限が長い
「食べられる名刺」としてのサンプル機能

同時に、日持ちすることや手軽に美味しいものが食べられる事は購入してくださる方にとってもメリットになります。

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食品やモノ以外の例を挙げてみます。
私の友人でもあるピラティスインストラクターの関さん
ご自身でピラティスのスタジオを経営されています。
そして二ヶ月ほど前に「オンラインピラティス」という取り組みをはじめました。

週に1回、配信でピラティスのレッスンを行う、という形式です。
結果、関さんご自身がこれまで発信をしていて多くの人からの信頼が集まっていたこともあり、枠が開くたびに満員で、現在会員は250名を超える大人気ぶりです。
現在の外出自粛の社会情勢にも見事にマッチしていると思います。

しかし、この取り組みの素晴らしい部分はご自身の稼働が一人につき大きく増えるものではない点です。
実際のレッスンでは1時間でレッスンできるのは10人とかが限界かもしれません。
しかし、オンラインの配信に限界はないのです。
1度のレッスンを100人でも、1000人でも受けることができる。
これはすごい事です。
そして、参加者はより安価な会費でプロのレッスンをリアルタイムで受けられる上、過去の動画を見返すこともできる。
小さな力で、大きな成果の好例です。

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ただ、何事もメリットデメリットは表裏一体で、リスクはつきものです。

例えば、
作ったが全く売れない→原料費、製作費、大量の在庫という負債

美味しくない→ネガティブなイメージを伝える形となり、評判が広まればより悪い方向に進んでしまう。

など、元手以上のマイナスを生んでしまう事になります。

だからこそ、慎重になる部分でもあります。
適切かつリスクが小さい形で、いかにこの「てこの力」を使うかが重要だったりします。

無知は罪

さて、レトルトカレーを作ることにしたものの。

どこで作るの…?というスタートです。
元は農家が直販をしていたくらいなので、食品加工業界は全くつてがありません。

そういった、門外漢が新たな領域に手を出すに必ずする事は

必ず勉強すること。

学校ではないから、誰が面倒を見てくれるということはないし
何が起こるかわかりません。
相場であったり、やりとりであったり、必要な書類…と学ぶ事がたくさんあります。

私は裸一貫で突撃し、色んな失敗を重ねたからの言葉ですが
一定の知識(リテラシー)を備える事は身を助けます。

海外旅行に行って、言葉がわからない人はカモにされるように
素人が値踏みされるというのはある種当たり前のことです。

一般的に良しとされる純朴さや無垢は商売における無知、愚鈍です。

信頼できるサービスやコンサルティング会社を挟むなども一つの方法です。

(こう言った面でトラブルがあった話、実際よく聞くので少し強い言葉で書いたことをお許しください。)

自身で製造に携わる場合は製造の許認可についても確認しておく必要があります。
勿論販売についても同じです。

色々あってご縁をいただき、最初の制作に漕ぎ着けました。

生かすも殺すも自分次第

ただ依頼して作ればいいというものではありません。

サンプルにすることには
・肉が旨い、ということを知ってもらう
・その商品から認知してもらう
・その先の、精肉に興味を持ってもらい販売につなげる

という役割を果たさねばいけません。
レトルトカレー屋さんではなく、あくまで豚肉の為の商品作りであることを忘れず、というように起点の軸はブラさない事が重要です。

当たり前ですが全く知らないところからいきなり精肉を買おうとはならない。
狙いは、そのハシゴとなる存在としてのレトルトカレーを作ることでした。

私の伝えた要望は
・とにかくスタンダードで、美味しいカレーを作りたい
・工場でできる限りの肉量を入れたい
・豚脂も使いたい
 というものでした。
「脂が美味しい」と言われていた中で旨味、を生かすために豚脂から旨味のエキスを抽出して入れることをお願いしました。

そして、サンプルとしての役目を果たした上で、これも商品です。
豚肉から、レトルト食品という新たな市場にフィールドが変わります。

この中でも、選ばれる便益を考えて作らねばなりません。

その独自価値は、奪われない価値は

では、他にもポークカレーがある中でなぜ我々のカレーを選んでもらえるか
十分に考える必要があります。

美味しいことは当たり前として、
・豚肉を存分に楽しめる肉量
・原料がはっきりしており、原料自体を持っている(握っている)事
・脂という、忌避されがちな素材をあえて付加すること
・生産農家が自身でプロデュースをすること
→素材ベースの物作りをしていること

最初から確実な勝算を持てる商品というのはなかなかありませんが、
狙いや、販売の時にどんな言葉で振り返ってもらえるかを考えて
多少なりとも特異点を見つけ出す必要があります。

「トレードオフ」という考え方も大切で、いわば取捨選択ですが
販売価格(コスト)や品質(クオリティ)の中で何をとって、何を諦めるかの選択が重要です。

・安く作る
・美味しく作る
・パッケージにこだわる
・添加剤/保存料などを入れない
・日持ちする

全てをクリアすることはできない中で何をとって、何を捨てるか。

そして独自価値とは真似ができない、自分たちだけが持つ強みです。

ブランドが持つイメージも独自価値でしょうし、
今回では、素材は「山西牧場の豚肉」という自分たちだけが持っている強みでした。
商品としてパッケージ化する事で精肉単体より明確に「偽物がない」ということも一つのポイントでした。

商品の回転スパンを考える

一つの商品はどれくらいの期間で消費されるかも考慮しておく必要があります。

食料品は食べたらなくなります、毎日とは言わずとも短い周期で購入が繰り返されます。
調味料はすぐには消費されないので、もっと長い周期で購入されます。
電化製品の購入は数年に一回程度でしょう。

ターゲットに狙いを定める

作るものによって、ターゲットは変わります。

豚肉を買って食べる人は、家で料理をする方が中心ですが
レトルトカレーを買って食べる人は、逆かもしれません。
どちらかといえば、調理をしたくない人向けでしょう。

自社の熱狂的なファンであれば、違うかもしれませんが
商品の形態や特長が変われば届ける先も変わります。

改めて、商品特性や制作目的から一度離れて
単体としてどんな人に刺さりうるかを考えておくことが重要です。

そして商品を作る時には、特性によってどんな人を対象にするのか、どう異なるのかを考えておく必要があります。

例として精肉と加工品とレトルトカレーの三つで様々な文脈で捉えます。

添加物に対して抵抗がある人→精肉
添加物に対して抵抗がない人→精肉、加工品、その他

家で料理をする人→精肉、加工品
家で簡単な料理はする人→加工品、レトルトカレー
家で料理をしない人→レトルトカレー

など、商品の特性によって狙う層は変わります。

レトルトカレーを選ぶ理由も色々あります。
・その味が好きだから
・料理をしたくないから
・備蓄しておきたいから
・贈り物に使えるから
・レトルト食品が好きで食べ比べているから
など。

このように作るものを届ける先を明確にしておくことが重要です。

好ましくない例

商品作りにおいてもったいないことは
本来持ちうる最大の便益を打ち消してしまうことです。

よく喩えに出すのは、ジャムです。
例えば、とても美味しいイチゴを作っていて、それ単体の商品価値が高い中で
B品を使って何かを作ろうという企画が持ち上がったとします。

そこで、ジャムを作ったとしましょう。
ジャムに使われるのは大量の砂糖です。
結果、本来その素材が持っていた果実由来の甘みを思い切り打ち消した代物になってしまいます。

その商品を食べることで規格品の販売につなげたいと思っていたら、その素材由来の良さはなかなか感じられないでしょうし、
その商品が多くの人に刺さるであろう良さが立ちません。

素材や技術があるのならそのものが持つ「独自価値」=「ならでは」のものを作ること、元来持っている価値を失わずに増幅するものを考えることが重要です。

販路は、ありますか?

自身が商品を作った時に届ける先、はっきりいうと売る先があるかを考えねばなりません。

その商品は直接買い手に届けたいのか
小売業の方へ卸したいのか
既存の買い手は受け入れてくれそうか

自身の販路がどこにあるのかをよく確認しておかねばなりません。

新たにウェブショップを販路に用いて販売するのであれば
基本的には言葉、画像、動画を用いて十分に便益が伝わりうるか
見栄えはどうかなども意識する必要性があるでしょう。

最悪のケースを想定する

販路を考えてみて、これから始めようという人はその見込みは0かもしれません。

だからこそ、失敗を計算に含めて考えることが重要です。
モノが売れることに保証などありません。

どれほど見込みがあるものを作っても、
急に情勢が変わるかもしれない
欠陥が見つかって回収になってしまうかもしれない
同種のより良いモノが他社から出てそちらに多くの顧客を奪われるかもしれない

勿論、だからこそ、信頼であったり独自価値を考えることが重要ですが
一番は失敗を組み込んでトライすることです。

1度きりのトライで生きるか死ぬかに賭けるのは身を投げるようなものです。

ライト兄弟の例をあげます。
世界初の有人動力飛行に成功したライト兄弟は、飛行機の飛行実験においては
墜落しても死んでしまうことがないよう、崖ではなく、下が砂地でした。

これは、予め失敗することを組み込んだプランを彼らは持っていた。ということです。
トライ&エラーを繰り返す中でエラーによって次のトライが絶たれてしまっては元も子もありません。

だからこそ商品制作においても
予算に余裕がある中でのロットで製作できるか
無理なオプションを組み込んでいないか
などを考える必要があります。

そして在庫を抱えるわけだから、
その商品の消費期限や保証される期間の間である程度の量を販売し切れるか
などの試算をせなばならないでしょう。

私の場合は最低の1ロットで2700袋のレトルトカレーを賞味期限1年半、
少なくとも1年で販売しきる必要がありました。

これなら、サンプリングをすることや販売を考えた上で
仮に最悪の事態で全く売れなくても死ぬことはないと判断して制作に踏み切りました。

まずは、一つを

最初の商品の印象が大事です。

一つ目を十分に販売もせず、評価も得ず、次の商品に入ろうとするのは
あまり良い策ではありません。

「売れなかったから次に行ったのかな」と見えるかもしれません。
節操のなさが目につくのも考えものです。

十分に練って製作した上で、これは良い、と自分が信じて届けることが全てです。
もしそこに改善点があるならその一点と向き合って、向上に努めることを忘れてはいけません。

カモネギ構文を作る

製作物が何かとセットになることで利便性が上がるなら、合わせて販売することも手法の一つです。

お肉に合うタレ、塩、調味料があると味付けの悩みを解消できたり
食器などと合わせてそのシーン(食卓)をデザインしたり
お肉に合うパンとか、横に並ぶであるものを用意したり

オイシックスのミールキットなどは一食分が無駄なくデザインされていますよね。
それを買って仕舞えば食卓が出来上がる、というもので
店を回って買う必要も、食材を切る手間も、ゴミもない。
利便性があって無駄はない、個食や少人数で食べる今の暮らしにあっているように思います。

自社製品として製作されていて一貫性があると何よりですが
コストや組み合わせに無理がないか、相乗効果があるかをみて判断するのが良いと思います。
無理に自社製品を製作しなくても良いものを仕入れて売るという道もあります。

私は調味料についてのお問い合わせがあった中で、「これは美味しいし、とても合う!」と感じた塩やマスタードを合わせて販売しています。

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ラインナップを揃えよう

次の一手、を考えます。
いくつか例をあげます。

・既存のものとは違う、新しいもの
例:アイスクリームの次にかき氷
・一つ目の商品の別タイプ(横展開)
例:バニラアイスの次にチョコミント味
・一つ目の商品をアップグレードしたもの
例:コーンの次にワッフルコーン

大元の素材が同じなら、比較的親和性はあります。
しかし、あまり垣根を越えると元の製品についた顧客がついて来れないので
あくまではじめのうちは近いところに落ち着いた方が良いと思います。

こうして商品が複数に増える時横展開のバリエーションがあると
買うか、買わないか。という捉え方から
Aか、Bか。という選択の文脈が生まれます。


松竹梅の法則

少し話がズレますが、コラムくらいの気持ちで私の昔話にお付き合いください。
最初のカレーを制作した時、ある方から

「それを、違うグレードで3種類作りなよ」と言われました。

最終的に実際3種類を作ったのですが、これの意図したところは
「松竹梅の法則」というものでした。
松竹梅といえば、コースなどでよく使われますが

こう言った高価格、中価格、低価格の三種類が提示された時
人は中価格のものを選ぶという法則があります。(極端の回避性)

勿論、これは場合によります。
私の販売しているレトルトカレーは三種類ありますが、中価格のものが一番か、というとそんなことはありません。(なんということだ)

あくまで、近しい価格の三種のなかで選ばれやすいのは真ん中、ということだそうですがこう言った法則性を学んでおくのも商品つくりから、価格付けの際に役立つかもしれません。

中庸から、抜け出そう

序盤でお話しした通り、「普通のもの」というのはなかなか小さな会社が小さな量を作ってもなかなか目を向けてもらえることはありません。

大きな会社のブランド(マーク)の持つ信頼の力が強いからです。

だからこそ小さな会社、いわば弱者は大手がやらない、できないことにトライする理由があります。
少し手間がかかっていたり、少量だからできることだったり。
実験的なアプローチだったり。
刺さるためにトゲを作ること、よく使われる言葉が「差別化」です。

差別化しよう!となって失敗する例が
ニーズのない突飛なものを作って、受け入れられないどころか
変なイメージだけ残ってしまうパターンです。

あくまで路線は踏み外さずに、特長を生かして「こういうの、実は欲しかったのではないか」というニーズを掘り下げて制作に当たることを意識しました。

レトルトカレーは世にあるけど、お肉がこれでもかと入ったものはない。
お肉がたくさん入っていても、硬かったり
途中で気持ち悪くなったり胃もたれする

などの課題点に対して
インパクトがあるくらいこれでもかとお肉が入っていて、そのお肉が美味しいこと
脂がさっぱりしていて、お肉も柔らかいメインの部位
さっぱりと食べ切れるスープ状のテクスチャー

そういった工夫を凝らして作ったのが塊肉のカレーです。

DSCF9356のコピー

これは自身が生産という立場、素材の質、小規模だからできた
振り抜き方だったかなと今は思います。
トレードオフとして価格は高くなってしまったものの、良い評価をいただくことができました。

ウェブショップは信頼の前借りである

原点となるウェブショップの話をしますと

リアルとウェブショップの何よりの違いは
現物が見れない事
これに尽きます。

食べ物なら試食はできないし
服なら試着ができない。
ガジェットなら使用感や手の馴染み、実際触った時のフィット感

個体差のある商品なら、尚更です。
私の豚肉ですと、まさに個体差がある商材で
一つ一つで脂の入り方、判の大きさ、様々な違いがあります。
ロース、と言ってもリブロースとヒレ下と部位が分かれるし
一つの商品の中に包含される細分化されたイメージの中にズレが生じる可能性は大いにあります。

お試しができない中で、初めてその商品を購入するということは
購入者の気持ちに立ち返れば期待と不安の中で賭けに出てくださったようなものです。
そんな中で、商品をつくり販売する者の責務は
期待を超える価値を感じていただくこと、満足していただく事に尽きます。

過剰な煽りの紹介文や現物から乖離した写真、広告費をかけて有名人に紹介されるなどで購買にこぎつけても
結果届いたものにがっかりされてしまえば次の受注は間違ってもありません。

息の長い販売をしたいと思うのなら矜恃を持って、製作や販売に取り組み、借りた信頼や期待を満足で返すことを心がけることが重要かなと考えています。
ここまでお話ししたことを下にまとめてみました。
ご活用いただけたら幸いです。

商品づくりチェックポイント

(1)人や社会の行動変容や情勢の変化に合わせて商品化しよう。
(2)商材や作りたいものが持つ課題点を把握しよう。
(3)商品が提供できる価値や目的を予め明確にしよう。
(4)小さな資源を大きな価値に変えられるようにしよう。
(5)商品をつくる際に、他業界に関わる際はしっかり調査しよう。
(6)商品は、何を強みとして何を弱みとするか、取捨選択の決断をしよう。
(7)商品の特性からそれが受け入れられる層はどこかを想定しよう。
(8)自分たちだけが持つ強みを活かした商品づくりをしよう。
(9)商品はどれくらいの期間で消費されるかも考慮しておこう。
(10)商品が売り出される販路も想定しておこう。
(11)全く売れないなど、最悪のケースを想定しておこう。
(12)まずは1つの商品をしっかり作り上げよう。
(13)商品をよりよくできる組み合わせが無いか考慮しておこう。
(14)1つの商品をラインナップとして横展開できないか考慮しておこう。
(15)商品の特長を生かした特異点を作ろう。
(16)お客さんが先払いするからには期待を裏切らない商品を届けよう

終わりに そして、伝えよう

今回は商品を作るにあたって私が学んだコツや注意すべき点を書いてみました。

何より大事なことは作ったものを販売することです。
どれだけいいものを作っても知られなければ、伝えなければ、届けねば、その先に繋ぐ事はできません。

死後評価されても、遅いのだから
作ったら、しっかり販売につなげる事

そのために自身の商品を、その魅力を、そして想いを伝えることが重要です。
前回のnoteにも書いたようにウェブショップの商圏は世界中です。

勿論一人ひとりに伝える事こそが、最もはっきりと伝えられるし、聞いてもらえる方法です。
それと同時にSNSには、限りなく多くの人の目に触れる可能性を秘めています。
次回は、そんな販売に向けた話をしたいと思います。

ちなみにレトルトカレーはこちら↓

続編はこちら

自己紹介

倉持 信宏(くらもち のぶひろ)

株式会社山西牧場 代表取締役
1990年生まれ。明治大学農学部卒。卒業後家業の山西牧場に籍を置いた上で農場勤務、1年のスペイン留学。帰国後ハム工場での研修を経て自社生産豚肉の販売事業・OEMでの加工品製作に着手しました。
2018年5月に自主制作での自社サイトおよびウェブショップを製作しwebでの販売を開始。
2019年、自社サイト製作、リブランドを目的としたクラウドファンディングを実施後、2020年3月に農場直送ブランド「三右衛門/3 é mon」を立ち上げて今に至ります。
商品企画からマーケティング、営業、オンラインストア展開など、商品が生まれるところからお客様の手に届くまで全ての工程に携わっています。

もしよろしければ弊社のウェブショップも覗いてみてくださいませ。

主にTwitterで発信しています。


ちょっと、いいコーヒーが好きです