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新規参入B3クラブがBリーグ記録を超えて「9295名」集めた話

10月9日、有明アリーナで行われたB3リーグホーム開幕戦の入場者数が9295名で、10月8日にアルバルク東京が動員した9167名を超えて、B1,B2,B3の最多入場者数を記録しました。

10月10日の二日目も8120名に入場いただき、合計17415名に来場いただきました。


そんな東京ユナイテッドバスケットボールクラブのプロモーションマネージャーとして主に広報をしている私が備忘録的に、これまでやってきたことをnoteに書きとどめていきます。
各種スポーツチーム・団体の参考になって、日本スポーツ界に貢献できたら幸いです。



東京ユナイテッドバスケットボールクラブって?



東京ユナイテッドBC(以下、TUBC)とは、どんなクラブなのか。
江東区を拠点とする男子プロバスケットボールクラブです。
企業の実業団でも、地域リーグから昇格したチームでもなく、有明アリーナというハードレガシーから生まれた世界でも稀有なクラブです。
2021年9月9日にB3リーグ参入1次審査合格(内定)するまで、選手0、スポンサー0、ファン0という状況からのスタートでした。
※チームロゴも12月にリデザインしたほどまだ何も決まっていないクラブでしたw

前途多難な新規参入チームとしてのプロモーション

2021-22シーズンに新規参入した長崎ヴェルカ、アルティーリ千葉のプロモーションは常にウォッチしていましたが、長崎ヴェルカは伊藤HC、松本健児リオン選手らをシーズン前から獲得して、プロモーション活動をやっていました。
アルティーリ千葉は豊富な資金力でB1級の選手を次々に獲得し、選手ファン層の獲得および、千葉市など自治体連携で開幕時の千葉駅ジャックなどの該当広告など際立つプロモーションで集客に成功していました。

一方のTUBCは豊富な資金源があるわけでもなく、前チームとの選手契約が切れる2022年6月30日までは選手を使用したプロモーションが出来ない、有明アリーナも改修中でオープンする8月まで全く使えないというプロモーション的には絶望的な制約条件の中でのスタートでした。

そんなTUBCがチーム立ち上げから開幕までどんなプロモーション活動を行ってきたのか。
つらつらと書いていきます。

地上戦と空中戦のプロモーション活動

1.地道なグラスルーツ(草の根)活動

①アカデミーへの注力

限られたリソース(人・商材)のなかでまずは地域の子供たちに注力していきました。
2021年3月にコロナでバスケが出来なかった小学校6年生の江東区・中央区のミスバスチームを募って、卒団式となるTUBCメモリアルカップを開催いたしました。

最後には子供たちから保護者の方々へ手紙を送るプレゼントも企画し、皆様に喜んでもらいました。
この大会が初めてTUBCが世の中に出た瞬間でした。

2021年5月にもミニバスチームを招待したTUBC スプリングカップ、そして、2021年6月にアカデミースクールを開校、8月にはサマーキャンプやサマーカップを実施し、アカデミーに注力をしていました。

少しずつミニバスチームや関係者、学校の方々から信頼を得ていきました。
そして、12月には豊洲北小など地域の学校の体育の授業でのバスケ教室を行ったり、ダンスアカデミーの開校など、地域の子供たち、保護者の方々に少しずつ認知をとっていきました。

今では、バスケスクール(新木場校)、ダンススクールではキャンセル待ちの状態となっています。
2022年9月にはバスケスクールの有明アリーナ校を開校し、生徒数を増やしています。

②大事な大事な地域イベント

TUBCのビジョンの一つとして、「TOKYO BASKETBALL PARK」を掲げています。

地域の日常の中に屋内・外のバスケットコートを作るなど、バスケをできる環境を増やし、自分と異なる世代と異なる地域の人々がともにプレイして、つながりあい、世界を広げていく場を作っていきます。

https://tubc.tokyo/club/

川崎ブレイブサンダースさんの「KAWASAKI BRAVE THUNDERS COURT」のような、自前で街中にコートが出来たら最高ですが、地域住民の方々にバスケに対するタッチポイントを増やすことを目指しています。

その中で、地域イベントに参加させていただき、ミニゴールなどを設置し子供たちにバスケの楽しさを知ってもらう活動をしています。

2021年7月の有明ガーデンで行われた有明まつりに参加したところを皮切りに、江東区を中心に約1年で30以上の地域イベントに参加してシュートチャレンジなどを行ってきました。

イベントの一部抜粋

当然、最初は認知度0でしたが、回を重ねるごとに、この前も参加しました!応援してます!といった声が少しずつ増えていくことを実感してきました。

③地味でしんどいチラシ配り

7-8月には、選手にも参加いただいて早朝7時・夕方に拠点となる地域でチラシ配りをしました。
数十枚・数百枚を配り切るのも心身ともに削りながら実施いたしました(笑)

チラシ配りは、最も非効率な方法ではありますが、スポンサー活動につながったり、ファンが出来たり、地域住民との交流を持つために重要なファクターの一つであるのは間違いありません。


④江東区とのスポーツ協定

TUBCは地域に根差したクラブとして、有明アリーナのある江東区との連携に向けて早い段階から動き出していました。
「スポーツと人情に熱いまち」をブランドコンセプトに掲げている江東区にプロのクラブが出来るということで区役所の皆様も非常に協力的でした。12月の会場を有明スポーツセンターにできたのも、江東区のご支援があっての関係でした。

2022年7月にはスポーツ協定締結し、開幕戦には山﨑区長にもスピーチをしていただきました。

また、江東区広報板という所謂、地域の掲示板でも開幕戦のポスターを掲載いただきました。

余談にはなりますが、ユニフォームの袖部分は江東区のマップをあしらったデザインとなっており、江東区に根差したチームを表現するためにユニフォ


2. 極めて難しいデジタル戦略

地上戦だけではなく、SNSなどデジタルの空中戦でもしっかりと戦力を練っていかなければなりません。
立ち上げ当初はプロスポーツチームでありながら、選手0という状況のなかでプロモーションをしなければならないという超過酷な状況でした。

①大人気マスコット秘話

まずは、エンターテインメント要素としてマスコットは必須と考えました。
アイドル的存在としてのマスコットを目指して、「有明→月→うさぎ」、「バスケ→跳ねる→うさぎ」、2023年の干支、Bリーグクラブにウサギのマスコットがいないという理由で決定いたしました。

3月に発表し、5月には地球に降り立ってくれました(笑)
そこからはチームのアイドルとして精力的に活動してくれています。
※ただし、夏場はあまり稼働できませんw

SNS上でも、地域イベント等での子供たちからも人気は絶大で、Jリーグの東京ドロンパ、Bリーグのサンディーくんを超える踊れるマスコットになってもらいたいと思っています🐰

是非TikTokのフォローもお願いいたします🐇


②「りなぴー誕生」動画コンテンツ戦略

川崎ブレイブサンダース出版の書籍「ファンをつくる力」は非常に参考にしています。

https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00647/00002/?n_cid=nbpnxr_twed_new

TwitterとInstagramに関しては、シーズンが始まって試合関連の投稿をしていけば、ある程度フォロワーが増えることは想定していたので、それほど焦っていませんでした。

一方で、認知・興味を持ってもらうためにはYouTubeやTikTokなどの動画コンテンツを戦略的に進めるかつ、時間がかかる作業でありつつも、今後絶対に取り組まなければならないコンテンツとして考えていました。

そこで、広報大使として「りなぴー」(小貫莉奈さん)を迎え、YouTubeを始動していきました。

選手紹介や、ユニフォーム製作やチームの裏側、アンダーアーマーさんとのコラボなど、少しずつではありますが、動画をアップしています。
(編集できるメンバー大募集中です←)

そして、ショート動画も出していってますが、TikTok、Instagram、YouTube shortsで同じ動画をアップしても反応が全然異なります。

ある程度ナレッジが溜まってきたので、今後は動画を出し分けながらアップしていくことを検討しています。

③フルスクラッチのファンクラブ・チケットサイト

ファンクラブの総称を「BLUE RABBITS」としました。
TUBCの親会社である、「株式会社スポーツITソリューション」が自社開発したサービスとなります。

UI/UX上改善の余地はあるものの、自社開発であるが故、会員情報を一元管理ができること、そして、フルカスタマイズで実装できることなど、他社にはない強みがあります。
(エンジニアの方には、開幕戦ギリギリまで、そして今も頑張っていただいていますw)

そして、他社サービスを使用していないため、ご来場していただいた方の代表者へはダイレクトアタックするマーケティングツールを持っていることになり、ここも武器の一つになると言えるでしょう。

開幕戦直前には、チケットのご案内を行い、DMの形で最終的な試合告知を行うこともできました。

④ メディア戦略

江東区に本社を持つスポニチさんやバスケットボール界のメディアのバスケットボールキングさんや、balltripさんにはB3参入内定のタイミングから、記事を出していただきバスケ界へのリーチを広めていただきました。

各メディアに要所要所のイベントなどを記事としてアップしていただくことで、クラブとしての価値を少しずつ高めていくことができました。
メディアに取り上げていただくことは0からのクラブにとっては非常にありがたいことでした。

3. 開幕戦集客施策

上記は前提となるプロモーション(認知獲得)に向けた施策を記載してきました。
ここから、お待たせ?いたしました。
開幕戦で2日間で1.7万人を集客した施策について記載していきます。

前提で述べたとおり、0からのクラブで認知度もない中で、いきなりお金を払って来場していただくのは難しいだろうというなかで、無料招待施策を行いました。
ただ、タダ券を配布するのではなく、今後のプロモーションにつながるための顧客の情報取得をしながら、無料招待をしていきました。

当然最初は、何人来るか一切予測すらできないなかでのスタートでした。

①ターニングポイントとなった学校招待

2022年7月7日までリーグから開幕戦の日程発表がないため、なかなかクラブとして開幕戦の告知をすることができませんでした。

そうしたなか、江東区の教育委員会ご協力のもと、7月と9月には江東区立の小中学校の生徒約3.6万人に開幕戦の案内チラシを配布することができました。

案内にあるように、我々の戦略としてTUBC公式LINEの友達登録、会員の登録を必須としました。

会員管理・クーポンコードの管理を行っているため、会員数、招待数をウォッチすることができます。応募期限を区切ることで、施策の妥当性・有効性を検証しながらプロモーションを進めていました。

今回の約3.6万人への配布に対して、正直想定以上に動きがありました。
7月時点で10月の試合への興味の高さに驚きました。

【成果】
学校招待:X組

②怒涛のマンション招待施策

有明近郊となる東京ベイエリアは新たな居住施設が年々増加しています。
2022年3月独自調査では、86マンション、総計42,269戸がありました。

江東区はタワーマンションが多く、ポスティングを行うにもマンションのデベロッパーや管理組合への承認が必要となります。

複数のキーマン、スタッフが尽力し、60棟近いマンションに対して承認を経て、江東区・中央区のマンションなど約7万戸にポスティング配布を行いました。
学校招待同様、LINE友達・会員登録必須とした招待施策としました。
ポスティングの反響率は0.01~0.03%が普通と言われているなかで、こちらもかなりの反響がありました。
【成果】
マンション招待第1弾:X組
マンション招待第2弾:X組

ポスティング:X組


③やはりインパクトのある区報

江東区報でも、招待施策を打たせていただきました。
江東区民の26万部へのアプローチが出来るツールとして、効果は抜群でした。
LINE流入→会員登録とは違うフローだったものの、こちらも多くの反応がありました。

グラスルーツ・自治体連携に関しては、社内外の方々やキーパーソンの方々にご尽力いただき、人海戦術にて大きな成果を得ることができました。

【成果】
区報 X組

④最後のひと押しSNS招待施策

有料でチケット購入いただいた方もいたこと、上記施策で各日1万枚以上の配券ができていたことでSNS上では無料招待施策に関してはなるべく出さない方針でいました。

当然、この段階で最多入場者数のことは意識していました。
クラブ主管では2022/5/4 沖縄アリーナの8263名が最多であったため、超える可能性が高いと見込んでいました。しかし、我々の開幕直前の10/7-8のアルバルク東京の代々木第一体育館での開幕戦で両日チケット完売、最多入場者数更新の可能性が高いということが分かりました。
最後のカードとして、Instagram、Facebook、Twitter、LINEでのSNSでの招待施策でした。

いまや元選手やお笑い芸人よりも集客力のあるSNS界のインフルエンサーたち。

子供たちに大人気のインフルエンサー、ウンパルンパさんに来場いただけることになりました。
発表できたのが9/30で、開幕戦10日前というところで集客力にはギリギリのタイミングでした。

そして、9/30に7000人以上の友達がいる公式LINEにて初めて、開幕戦の案内のプッシュ通知をしました。

さらに、SNSでの広告およびウンパルンパさんに呼びかけ投稿をしていただきました。

こちらもすぐに効果が見えたため、各種SNSでクリエイティブサイズが異なったり、導線先を変えたり、試行錯誤を繰り返しながら試合直前まで広告を回し続けました。

結果として、この施策の数百人が来てくれたおかげで最多入場者数を超えることができたので、深夜まで葛藤してよかったなと思いますw

「どうやって9千人集めたのか」 考察・まとめ

江東区を中心に、10万人以上に人海戦術で開幕戦告知のリーチさせることができました。
さらに、SNS上でも同数近い数字にリーチを行ないました。
招待ではないですが、江東区の企業様にもテレアポとして数百社に連絡を取り、オフィシャルパートナー・サポーティングカンパニーとして50社以上にご協賛いただいています。

チームの構想自体は私が入社する前の2019年ごろからはじまっていますが、実際に動き出してからの約1年半で、何もないところからここまで走りぬいてきました。

「どうやって9千人集めたの」と多くの人が疑問に思ったと思います。

これまで述べた通り、クラブとしてやるべきことをやっていて、特別な突拍子なことをやって集客できたわけではありません。

一方で、自治体や商店街との連携はまだまだこれからにはなりますが、クラブとしてやらなきゃいけないことは最低限やったとも言えます。
※出来ていない部分も多々ありますが、、、

有明アリーナという集客ツール

クラブとしてやるべきことをやって、10万人にリーチして集客を行なってきたクラブはたくさんあるでしょう。
何が違うのか?

一番は有明アリーナのオープニングのタイミングであったからと言えるかもしれません。

モーメントをキャッチして、プロモーションすることで人が動いてくれるというのはパデルで一度成功体験がありました。

有明アリーナはオリンピックのバレーボール、パラリンピックの車いすバスケの会場でしたが、誰も中で観ることができませんでした。

2022年8月に有明アリーナはオープンし、「Perfume」「ビリーアイリッシュ」のコンサート、パラリンピック1周年記念イベントは開催されましたが、TUBCの開幕戦が地元住民にとっては初めての有明アリーナで気軽に訪れることができる機会となりました。

深川エリア・城東エリアの下町と湾岸エリアの人口増加都市の融合という特殊な江東区においても、江東区をホームエリアとするプロスポーツチームが
昨年リーグワンに参入した清水建設江東ブルーシャークスさんしかありませんでした。
地域の象徴としてのスポーツチームを応援したいといったニーズがあったなかで、TUBCを応援しよう(観に行ってみよう)!という機運があったのは間違いありません。

Twitterでも書きましたが、タダ券を配ったから来てくれるほど甘くはありません。
特に都内は楽しめるコンテンツは無限大にあるなかで、バスケを観に行こう・有明アリーナに行こうと思ってもらう必要がありました。

大事なモーメントをキャッチし、人間心理を理解し、計画的・戦略的なプロモーション活動が出来た結果、2日間で17415名にご来場いただくことができました。

本当にありがとうございました。

新規参入の3部のクラブの開幕戦で、1部のクラブの最多入場者数を超えた事例は全世界・全競技をみてもTUBCだけでしょう。

そんなクラブを0から創り上げる瞬間に立ち会えて、会場では子供たちが必死に応援してくれる姿、ワンプレー毎に上がる歓声、そして、笑顔の人たちをたくさん見れて非常に幸せでした。

TUBCにとってはこれがゴールではなく、スタートです。
バスケファンだけではなく、スポーツ界に東京ユナイテッドBCの名が今回知れ渡りました。プロモーションとしては大成功ですが、期待値が上がったここからが本当の勝負です。

そして、非常にシビアな世界です。

開幕戦以上の絶景を見るのはいつになるのか。
有明アリーナが1.5万人満席になる瞬間が来るのか。

これからどんな世界が待っているか分からないですが、これからも全力で戦う広報として走り出します。

長文で、まとめ切れていない文章ですが、最後までお読みいただきありがとうございました!!!


具体的な数字がどうしても知りたいという方は備忘録用で掲載しているのでよろしくお願いします。

ちょっとでも参考になった、頑張ったと思っていただけたら、スキ♡をお願いします!

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