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詩日記

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2023年7月の記事一覧

喜びと悲しみと

喜びと悲しみと

喜びはあなたと分け合いたいのに
わたしひとりで喜び満たされてる

悲しみはわたしひとりのものなのに
あなたはいっしょに背負ってくれる

喜びにも悲しみにも昇華しなかった
日常の破片がわたしとあなたを繋ぐ
細い糸を引き裂く

夜の帰路

夜の帰路

今日あった出来事と
今日言われたひと言と
今日悩んだ未来のことが
身体の内側から汗となって
滲み出て皮膚に纏わりつく

俯いて歩く夜の帰路
ふっと風が吹いて
数粒の汗が飛ばされる

歩けば汗が滲み出て
風が吹けば汗が飛ぶ
繰り返し繰り返す

バス停

バス停

木陰にあるバス停のベンチに座る

秋へ行くバスの発車時刻を時刻表で探す

時間はたっぷりあるので気長に待つことにする

冷たいアイス片手にヘッセの詩集でも読みながら

冷やし中華

冷やし中華

木のまな板を敷いて
きゅうりを千切りにして
トマトをざく切りにする

卵を二個割って菜箸で溶き混ぜる
鉄のフライパンに薄く油を敷いて卵を流し込む
表と裏と適度に焼いて細切りにする

醤油

みりん
を鍋に入れて火にかけて
沸いたら
砂糖

サラダ油
ごま油
レモン果汁
を入れて混ぜ合わせる

鍋に水を注いで火にかけて
その間にまな板とフライパンを洗って
沸騰したら中華麺を2分茹でて
氷水で冷や

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石と星と私

石と星と私

地を見下ろしても石が転がっているだけ
空を見上げても星が散らばっているだけ
それだけなのに石も星も生き生きと輝く
私だって生きているだけで輝いていたい

だれ

だれ

わたしはだれ?

朝、洗面台の鏡に映る歯磨きをするわたし

夜、ベランダの窓に映るハイボールを呑むわたし

夏、アスファルトに映る夕陽に照らされるわたし

冬、テレビ画面に映る毛布に包まるわたし

わたしは、だれ。

忘却

忘却

過去のことは全て
今の今までの全て
忘れてしまいたい

忘れたい事も
忘れたくない事も
忘れてしまいたい

良い事も悪い事も
忘れてしまった事さえも
忘れてしまいたい

忘れてしまってから
また今日を始めたい

凪

いつの日からか
風が吹き
波が荒れ
浜が汚れ
魚が消え
水が濁る
荒んだ海

ある日の朝
風が止み
波が泊り
浜が光り
魚が現れ
水が澄む
閑かな海

いつもと何ひとつ変わったことはない
海岸にあなたが立っていたこと以外は

これしかない

これしかない

これしかない、という希望と
これしかない、という絶望と
ともに歩き、ともに倒れ、ともに眠る

生温い風

生温い風

暑くて暑くて堪らず新宿の伊勢丹に駆け込み、エレベーター横に置いてあるベンチに座る。こういう人間のために置かれた自動販売機のコーラを横目にバッグの中で温くなった水筒の水をごくりと飲む。ひと息ついてから、エスカレーターで上がったり、階段で降りたり、あるいはエレベーターで屋上まで上がったり、誰にも縛られず方々を彷徨く。ここを出てから家に着くまでの間に感じるだろう暑さを紛らわせられるだけの涼を身体の中に溜

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気怠い夏のはじまり

気怠い夏のはじまり

湧いたやる気は汗とともに流れ、
咲いた好奇心は陽に焼けて枯れ、
描いた未来図は燃えて灰となる。
夏のはじまりは気怠く重苦しい。

矛盾

矛盾

下見ないと石に躓くし、
上見ないと涙が溢れる。

上見ないと夜に溺れるし、
下見ないと朝に呑まれる。

下見ないと影に殴られるし、
上見ないと光に逃げられる。

上見ないと生きられないし、
下見ないと生きられない。

線を描く

線を描く

点と点を繋げて線を描く。
線は消しゴムで消され、
線はハサミで切られ、
線は鉛筆で塗り潰され、
また点と点になる。
点と点を繋げて線を描く。
線を開いて線を伸して、
線を引いて線を広げて、
線と線を繋げて線を描く。

青いシーツ

青いシーツ

冷房を効かせた涼しい六畳一間の部屋
寝汗で少し湿った青い夏用シーツの上
小さく狭く暗く静かな海をひとり泳ぎ
息苦しくない水中を永遠に潜り続ける