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詩日記

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2023年6月の記事一覧

ひとにやさしく

ひとにやさしく

ひとに勝ちたい

ひとの上に立ちたい

ひとより前に進みたい

ひとを楽しませたい

ひとを喜ばせたい

ひとを笑顔にさせたい

ひとよりお金を持ちたい

ひとより知識を持ちたい

ひとより良い人生と思いたい

ひとにやさしく
それくらいしかできないのに

ひとはひとでなければならない

ひとはひとでなければならない

ひとはもっと自制しなければならない

ひとはもっと奔放しなければならない

ひとはもっと沈黙しなければならない

ひとはもっと対話しなければならない

ひとはもっと拒絶しなければならない

ひとはもっと許容しなければならない

ひとはもっと思考しなければならない

ひとはもっと探索しなければならない

ひとはもっと懐疑しなければならない

ひとはもっと信頼しなければならない

ひとはもっとひとでな

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折りたたみ傘

折りたたみ傘

突然雨が降ってきたら、
きみに「傘貸してあげるよ」と言って、
きみが「それなら一緒に帰ろうよ」と言ってくれて、
ひとつ傘の下を歩きたいから、
雨でも晴れでも毎日折りたたみ傘をリュックに仕舞っている

隣

隣にいる
隣に立つ
隣を歩く
隣を向く
隣に座る
隣を感じる
隣の幸せ
隣に幸せ
隣が幸せ

誕生日

誕生日

「誕生日おめでとう」って

あと何回言えるかわからないけど

たとえ

目が見えなくなっても

耳が聞こえなくなっても

字が書けなくなっても

言葉が発せなくなっても

呼吸が止まっても

思い続ける限り言う

「誕生日おめでとう」って

6月

6月

6月に入ってからずっと雨
一昨日も昨日も今日も雨が降る
雨と雨の間にまた雨が降る
止まない雨がずっとずっと降る

空は
雨に濡れて
雨に打たれて
雨に殴られた

海は
雨と悲しみ
雨と苦しみ
雨と泣いた

陽は沈んだまま
月は雲に隠されて
星は宇宙の穴に落ちて
6月の世界は光を失った

ただただ雨が降り続ける
それ以外にはなにもない

一昨日も雨が降る
昨日も雨が降る
きっと今日も

雨が止んだ

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なんにもない

なんにもない

なんでもある、のに
なんにもない

なんでもある、けど
なんにもない

なんでもある、から
なんにもない

なんでもある、くせ
なんにもない

なんでもある、ある
なんにもない

なんでもある、ない
なんにもない

人と人が交わる、
なんにもない

人と人がぶつかる、
なんにもない

人と人が光る、
なんにもない

人が話す
人が集う
人が叫ぶ
人が泣く
人が笑う
人が飛ぶ

人がいて人がいる、

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夏至

夏至

水筒とお弁当をリュックに入れて電車に乗った

乗り過ごしたら名前の知らない終点の駅に着いた

色とりどりの紫陽花をカメラに撮った

駐車場の陰で寝転ぶ猫としゃべった

曇り空の下砂浜をたくさん歩いた

靴と靴下を脱いでまだ冷たい静かな海に足を浸けた

雲の向こう側に霞む夏の太陽はなんだかやさしかった

残像

残像

長い間ずっと光ひとつない暗闇の中
足元だけ次に踏み出す一歩だけを見て
光に照らされない瞳に映らない一歩を
喜怒哀楽を失い足音の響かない一歩を
長い道のりをたったひとり歩いてきた

何も見えない何ひとつ見えない暗闇の中
高く聳え立つ雪山も広く穏やかな大海も
燦々と燃える太陽も美麗に光輝く満月も
自分以外の人間も自分自身のことさえも
何も見えない何ひとつ見えない暗闇の中

一瞬だけ光が射す
光は一瞬で

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祝日

祝日

今日の太陽は沈み
日付が一日進み
明日の太陽が登り
朝歯を磨きながらカレンダーを捲る
なんでもない日常の中で
今日だけ、今日だけは
無事に明日が来ますように
と一番星に願う

流れ星

流れ星

その場所は
陽の光が当たらない

その場所は
スポットライトを浴びない

その場所は
誰にも彼にも知られていない

その場所に
風も吹かなければ雨水一滴も落ちない

その場所からは
飛行機雲も北極星も見えない

その場所には
たったひとり生き生きしている者だけが在る

そのひとりのしあわせを流れ星に願う

伝えたい思い

伝えたい思い

伝えたい思いは伝わらない
強く思えば思うほど伝わらない
心の中で燃えて消える

伝えたい思いを
日本語にしても英語にしてもフランス語にしても
どこか遠くの国の言葉にしても
伝えたい思いは伝わらない

好きも嫌いも
喜びも悲しみも
ありがとうもごめんなさいも

伝えたい思いを言葉にしても伝わらない
言葉にすればするほど伝わらない
空気の中で溶けて消える

色を持たない

色を持たない

アスファルトに咲くたんぽぽも
駐車場の陰で寝転んでいる猫も
汗を流し自転車を漕ぐ高校生も
電車の車窓から見えるビル群も
雨と雨の間に顔を出す夏の空も

全部が明るくて
全部が鮮やかで
全部が眩しくて
全部が輝やいて
全部が色を持つ

夏の世界で色を持たないのはわたしと
花火が打ち上がったすぐ後の夜空

欲望

欲望

疲れたときに、疲れたと言いたいし
疲れたときに、疲れた顔をしたいし
疲れたときに、疲れなせいにしたい

頑張ったときに、頑張ったねと言われたいし
頑張ったときに、頑張った自分を褒めたいし
頑張ったときに、頑張った分ご褒美がほしい

嫌なことは嫌と言いたいし
好きなことは好きと言いたい

やりたくないことはやりたくないし
やりたいことだけやっていたい

いらないものは消えればいいし
欲しいものは好き

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