残像
長い間ずっと光ひとつない暗闇の中
足元だけ次に踏み出す一歩だけを見て
光に照らされない瞳に映らない一歩を
喜怒哀楽を失い足音の響かない一歩を
長い道のりをたったひとり歩いてきた
何も見えない何ひとつ見えない暗闇の中
高く聳え立つ雪山も広く穏やかな大海も
燦々と燃える太陽も美麗に光輝く満月も
自分以外の人間も自分自身のことさえも
何も見えない何ひとつ見えない暗闇の中
一瞬だけ光が射す
光は一瞬で消える
瞬きをする
目を開く
目を閉じる
残像が見える
目を閉じたまま
暗闇の中を歩き出す
瞳の中だけに残る光は
これまでの道もこれからの道も
照らすことはないけれど
今ここにいることを
明かしてくれている
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