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詩日記

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2023年2月の記事一覧

就活

就活

期待する、こうしたい。競争する、こうしたい。共感する、こうしたい。渇望する、こうしたい。虚偽する、こうしたい。夢見る、こうしたい。失望する、こんなはずじゃなかった。落胆する、こんなはずじゃなかった。反抗する、こんなはずじゃなかった。混乱する、こんなはずじゃなかった。脱力する、こんなはずじゃなかった。現実を見る、こんなはずじゃなかった。今日を生きる、こんなはずじゃなかったのに、ほんとうはこうしたかっ

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2月

2月

背中が見えなくならないように、必死になって追いかけているけど、とてつもない速さで逃げていく。もう少しで追いつけそうだったけど、角を曲がったところで、いつも寒そうにしていた後ろ姿は見えなくなっていた。そのかわりに紫色の花がひとつ小さく咲いているのが目に映った。走ったからか全身が温かくなって、花の横に座った。

間

点がひとつ

点がふたつ

その間にぼくがいる

点がひとつ

点がふたつ

その間にきみがいる

点がひとつ

点がふたつ

その間にぼくときみがいる

点がひとつ

点がふたつ

その間を

行ったり来たり

歩いたり転んだり

笑ったり泣いたり

点がひとつ

点がふたつ

その間が広がっていく

ナイフ

ナイフ

ぼくにとっての悪者は

あなたにとっての味方で

ぼくにとっての真理は

あなたにとっての虚偽で

ぼくにとっての正義は

あなたにとっての不義で

ぼくにとっての悲しみは

あなたにとっての楽しみで

ぼくにとっての幸せは

あなたにとっての不幸せで

ぼくにとっての怒りは

あなたにとってのナイフ

生きる力

生きる力

生きるだけ

ただ生きるだけ

ただただ生きるだけ

生きるのに力がいるもんか

力なんかなくても生きていく

生きられるということが生きる力

紛失

紛失

もっていなければなくならない

なくならなければかなしくならない

かなしくなければなくことはない

それなのに

もってしまうからなくしてしまう

なくしてしまうからかなしくなる

かなしくなるからないている

惰眠

惰眠

今日は昨日まで生きた命を惰性で生かすこと以外何もできない。明日は来る、明後日も来る、来年だって来るし、再来年も十年後もきっと来る、だから今日は、今日くらいは、惰眠を謳歌する。

蛙

泳げないぼくは井戸の中

雨水に流されて

泥水に流されて

清流に流されて

流されて流されて

流れ着いた暗い深海の岩壁で

きみとひとつになった

手袋

手袋

冬の夜

二人で歩く帰路

わたしの右肩とあなたの左腕が

当たったり当たらなかったりしながら

手を握ってほしくて気づかれないように

右手につけた手袋をそっと道に落とす

その横であなたは上を向いてオリオン座を探してる

ドーナツ

ドーナツ

おおきなまると

ちいさなまるが

かさなりあって

かたちをつくる

あなからみえる

わたしとあなた

ひとにやさしく

ひとにやさしく

なにかができるとか、なにかをもっているとか、なにかにかつとか、そんなこといらなくて、ひとにやさしく、あとじぶんにも。ほんとうはそれだけでいいんだ、ほんとうは。

眠れぬ夜

眠れぬ夜

朝が夜を追い越す

月がひとり空に取り残される

闇の隙間から一点の光が射す

それまでの間

じっと君を思う

憑依

憑依

好きな人といっしょに居る時に限って、嫌いな自分が自分の身に憑依する。嫌いな自分と好きな人がいっしょに居ることに嫉妬する。嫌いな自分を脱げない代わりに好きな人と離れる。

献身

献身

名前も顔も知らない何処か遠くにいるあなたのために、わたしは身を炭にして心を灰にして命を燃やすのです。