見出し画像

8.戦略 - はじめての通信販売&Eコマース

※本記事は2005年に作成し、自身のホームページ(Chikunai.net)で2016年ごろまで公開していた記事をnoteに転記したものである。私の管理不行き届きで、ホームページを失ってしまった。なるべく2005年の頃のまま転記するため、今読むと古臭さのある点は、ご理解いただきたい。このシリーズのトップはこちら→「はじめての通信販売&Eコマース

通信販売では、顧客属性・購買動向・広告効果などを分析業務で、顧客を図1のようにセグメント化して表すのが一般的です。


図1 顧客セグメント

見込み顧客はまだ購入は無いが商品に興味のありそうな顧客。新規顧客は1回購入のある顧客。リピーターは2回以上購入のある顧客。優良顧客は数十回以上購入のある顧客です。これらを顧客セグメントと呼び、通販システムから顧客の特性よって3、4以上の顧客セグメントを作ります。このセグメントを用いた分析をRFM分析と呼びます。

RFM分析は、顧客をRecency(最新購入日)、Frequency(購買頻度)、Monetary(購買金額)の三つの軸で分析する手法です。例えば、Fの頻度が高いにもかかわらず、Rでここ半年購入の無いお客様は、他のブランドへ浮気している可能性が考えられる。と分析します。

今度は、顧客セグメントを売上構成比に置き換えると、下図棒グラフのようになります。通販企業の売上の約8割を約2割の優良顧客とリピーターが占めています。これが通販企業の売上の実態なのです。そのため、永続的な成長を続けるためにも、優良顧客とリピーターの顧客セグメントのお客様とは長くお付き合いすること。見込み顧客や新規顧客のお客様から、リピーターや優良顧客になっていただくことが重要です。


図2 顧客セグメント毎の売上構成比

このような状況から、販売戦略を以下のように取ります。
全ての顧客セグメント(脱落、離脱顧客は除く)の顧客数が、常に増えるように販売戦略をとります。顧客数を増やす戦略は、前月比で常に見込み顧客と新規顧客がプラスであれば、将来リピーターや優良顧客もプラスが約束され売上も常に上昇していきます。一方、見込み客や新規顧客が減ると、近い将来リピーターや優良顧客の数にも影響し、売上の減少につながります。これを見誤ると会社が危機的な状況に陥ります。つねに数値の管理・監視が必要です。(※客単価は企業の特性によって価格は違いますが、大きく変動しないものとします。)
購入に結びつきそうな見込み顧客の獲得は、テレビ、雑誌などの広く訴えかける広告や、アンケート、懸賞、無料(又は安価)お試しセットの配布を使います。見込み顧客に対して販売促進を行い、1回購入のある新規顧客へ引き上げます。新規顧客に対して販売促進を行い、2回以上購入のあるリピーターへ引き上げます。リピーターに対してさらに販売促進を行い、最終的には優良顧客へと引き上げていきます。
大半の化粧品通販メーカーなどでは、見込み客獲得のために無料サンプルやトライアルキットを用意。優良顧客獲得のために、別カテゴリーの製品やワンランク上の高級ブランドをすすめるなど、顧客セグメントに合わせた商品ラインナップを展開しています。


図3 顧客セグメントの顧客数を増やす

各セグメント獲得にかかるコストは、見込み顧客ほど多く、優良顧客へ上がっていくほど獲得コストは減少していきます。優良顧客やリピーターは、購入によって通販企業への信頼度が上がっているため、販促活動を行わなくても自発的に買い物をします。一方、見込み顧客は企業を知らないため、様々な手で宣伝を行い認知させる必要があります。より多くの見込み顧客を集めたければ集めたいほど、広告費の高い公共的なメディアに頼ることになります。広告費をかければ高いレスポンス(CPR)と売上(CPO)があるとは限りません。そのためコストの構造としては、リピート購入2〜3回目以降で利益がでる仕組みが取られています。通販企業は、利益を出すためにもお客様にいかにリピートしていただくかが重要になります。

セグメント間の転換率の指標をCVR(conversion rate)という値で表します。見込み顧客は、とにかくかき集めればいいというものではありません。懸賞や無料サンプルの請求などは、お客様が軽い気持ち(ライト)であるため、CVRは低くなります。CVRを高めるには、売りたい商品のカテゴリに関心のあるターゲットに訴求していきます。

脱落セグメントは、通販システムならではの存在の分かる顧客セグメントです。なるべく増やさないよう脱落防止(離反防止)の施策を打ちます。健康食品や化粧品など定期的に購入する商品を持つ企業はよく使います。あらかじめ商品の消費日数がわかっているので、過去に購入があり消費日数を超えても購入の無い顧客は、他のブランドにスイッチした可能性が出てきます。そこで、消費日数を超えても購入の無い顧客リストを作成し、顧客に対してDMやメールを送り脱落を防ぎます。

神田昌典さんの本などをお読みの方は、別段目新しくも無いと思います。いきなり高額商品を買っていくお客様はいませんし、一見のお客様だけでは通販企業は食べていけません。しかし通信販売という業態は、いまどのような状況にあるのか明確に示してくれる手立てがあります。企業とお客様とのコミュニケーション(やり取り)は、全てコンピュータに蓄えられるためです。そこから情報を引き出し新たな戦略・戦術に活用できます。つまり経営の可視化ができるのです。これを使わない手はありません。

最近のトレンドもあり、このような顧客優遇、とくに優良顧客を優遇した戦略をとります。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?