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7年後のストーリー

2021年3月29日(月) 晴れ  

7年後のストーリーを作ってみた。取材を受けたとしたらこんな感じになるのかな。

最難関の国家試験といわれる司法試験に60歳で合格し、弁護士として活動を始めた男性がいる。川崎市の元建設作業員、大西信秀さん(62)。「新人」ながら落ち着いた声と表情で、一件一件、依頼人の悩みにじっくりと向き合っている。

 たまプラーザ駅近くの10平方メートルほどのシェアオフィスに、パソコンや法律関係の書類が所狭しと並ぶ。今年〇月、大西さんが開設した事務所だ。「小さな所帯だけど、まずは一歩を踏み出せたかな」

 大阪府出身。司法の世界とは縁遠い半生だった。地元大阪の工業高校の電気科を卒業後、同じ高校の先輩が起こした会社に就職。地元の中堅商社に入社し、バブル経済まっただ中、営業マンとして、また電気技師として、製造用機械の制御装置の設計や販売を行ってきた。その後いくつかの転職を経験し、無線通信施設の鉄塔などを建設する建設会社で長年働いた。

 転機となったのは52歳の時。建設会社を辞めてコーチングを事業とした、フリーランスとして独立した。しかし上手くいかずに借金だけが残った。もう無理か?とそう思ったとき、ある人を介して「自己破産や個人整理ではなく、きちんとした法律によって救済される道がある」ことを教えてもらった。もっと法律に興味を持ち「わずかでも知っていれば、もう少し損しない生き方が出来たのではなかったか?」。法律に目覚めた瞬間だった。そしてこの時、自分の残り人生を数えたときにやり遂げたいことが頭をもたげた。「憲法改正」である。

 55歳の時、中央大学法学部通信教育課程に入学。月~金の仕事が終わってから3時間、週末の日曜日は10時間勉強にあて、在学中に司法準備試験に合格。卒業後も独学を続け、昨年司法試験に合格。1年間の修習期間を終え今春、弁護士登録にこぎ着けた。仕事を終えてからの3時間の勉強を、4年間休みなく続けることは、本当に困難なことであった。

 法務省によると、今年の司法試験合格者の平均年齢は28・8歳。現行の試験がスタートした2006年以降、合格者の最高齢は71歳で、大西さんはこれに近い年齢での合格となる。

 今のところ友人らが紹介してくれる債務処理の手続きや契約書作成の相談が主な業務だが、国選弁護人として刑事裁判の法廷にも立つようにもなった。やりがいは「法律という大きなものを、悩んでいる個々の人に当てはめて解決出来る」こと。大切な人生の時間やお金をなるべく裁判などに費やしてほしくないと、「法廷闘争に発展する前に未然に防げる弁護士」を目指す。そして憲法改正に向けての運動もおこなっている。

 間もなく65歳。多くの人が定年を迎える年齢では、と問うと目を細めた。「一生現役。生きているうちに憲法改正をして、子供、孫、その先の人々に、この国を未来永劫残したい。その為に我が命を賭して、この国に少しでもお役に立ちたい」

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