新保信長

流しの編集&ライターです。「南信長」名義でマンガ解説も。著書『字が汚い!』『虎バカ本の…

新保信長

流しの編集&ライターです。「南信長」名義でマンガ解説も。著書『字が汚い!』『虎バカ本の世界』ほか。南信長名義では『現代マンガの冒険者たち』『マンガの食卓』『1979年の奇跡』など。『字が汚い!』に続くコンプレックスシリーズ第2弾『声が通らない!』が絶賛発売中!

マガジン

  • あのときの書評

    過去に書いた書評を順次アップしていきます。

  • 出版業界今昔モノ語り

    気がつけば編集・ライター生活も世紀をまたいで30年。その間、テクノロジーは大きく進化し、仕事で使う道具や仕事の進め方もずいぶん様変わりしてきた。この連載では、そんな出版業界の仕事環境の変遷を、道具=モノを軸に振り返ってみたい。(※「季刊レポ」のウェブ連載「ヒビレポ」に2014年~2015年にかけて執筆したものです)

  • 笑う入試問題

    本当にあった変な入試問題を集めました。

  • 不適切な表現

    「季刊レポ」発行のメルマガ「メルレポ」2012年7~9月配信分の記事を再構成したものです。

  • 専門雑誌プレイバック

    2002年から2004年にかけて連載した専門雑誌・専門新聞の紹介コラムです。

最近の記事

中崎タツヤ『もたない男』

※2010年12月掲載  年末の大掃除をきっちり済ませてお正月、という方も多いと思うけど、我が家はいつもどおり散らかったままである。いや、多少は掃除しましたよ。でも、床や机の上に積み上がった本が片付かない。だって、物理的に収納できる限界量を完全に超えてるんだもん。本棚の増設も限界で、もはや片付けようにも片付けるスペースがないのである。  だったら、不要な本を売るなり捨てるなりすればいいじゃん、って話だが、仕事柄、「いつか必要になるかも」と思うと処分できない。いや、それでも思

    • 天久聖一『こどもの発想。』

      ※2011年3月掲載  あまりのバカバカしさゆえ、逆に「あんたはエライ!」と賛嘆せずにいられない“天才的にバカな本”、略して「天才バカ本」を紹介する、というコンセプトで始めたこのコーナー。これまで紹介してきた本は、いずれもイイ大人がバカなことを真剣にやってるところに価値があるもので、バカと言っても本当のバカが書いた本(ビジネス書とか自己啓発本とかであるでしょ?)はもとより相手にしないのであった。  しかし、今回ご紹介する本は、ちょっと例外というか変わり種。正真正銘のバカが書

      • 田中宏和『田中宏和さん』

        ※2010年11月掲載  みなさん、自分の名前、好きですか? 私はあんまり好きじゃない。電話で「新保(しんぼ)です」と名乗っても「は?」と聞き返されたり、「じんぼさん」や「しんどうさん」ならまだしも「しんごさんですね?」ってオレは風見しんごか!みたいなことばっかりで、なかなかわかってもらえないのがイヤ。さらに「信長」となると、「本名ですか?」とか「やっぱりご両親が織田信長のファンで?」とか、いちいち面倒くさくてしょうがない。  まあ、だからといって、あんまり平凡な名前もつま

        • 安居良基『世界でもっとも阿呆な旅』

          ※2010年10月掲載  いつ、どういうきっかけで知ったのか、まるで記憶にないのだけれど、世界のどこかに「エロマンガ島」という島があることは、かなり昔から知っていた。中学生ぐらいのときには地図帳でその存在を確認して、ほかにもエロい地名はないか、みんなで探したりしたものだ。「スケベニンゲン」という地名を知ったのもその頃だったか。インターネットで検索すれば、エロマンガ島に関する情報もエロ画像も、簡単に手に入る今と違って、昔の男子中学生は「エロマンガ島」や「スケベニンゲン」という

        中崎タツヤ『もたない男』

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        • あのときの書評
          14本
        • 出版業界今昔モノ語り
          13本
        • 笑う入試問題
          11本
        • 不適切な表現
          13本
        • 専門雑誌プレイバック
          18本
        • モノ買う人々
          13本

        記事

          黒木夏美『バナナの皮はなぜすべるのか?』

          ※2010年8月掲載  もはや定番となった感のある「○○はなぜ××なのか?」式のタイトル。新書なんかだと、期待したほど中身がなかったりすることもしばしばだが、この本は違う。最初から最後まで、濃厚な具がみっちり詰まってる。ただし、『バナナの皮はなぜすべるのか?』というタイトルは、やっぱりちょっと内容を正確には表していない面もあり。  本書がまるまる一冊かけて追究したテーマ。それは〈バナナの皮ですべって転ぶ〉という古典的ギャグが、いつ、どのようにして生まれ、どのように普及してい

          黒木夏美『バナナの皮はなぜすべるのか?』

          内海慶一『100均フリーダム』

          ※2010年7月掲載  たまたま本屋をうろついてたら、目が合ってしまったのだ、この本と。正確に言えば、この本のカバー写真に使われているヘンなパンダと目が合った。  な、何だ、このパンダ……!? 質感からしてぬいぐるみではなく、いわゆるフィギュアの類のようだが、何かがおかしい。普通ならティアドロップ型のサングラスみたいな目の周りの模様が、『天才バカボン』に出てくる目ん玉つながりのお巡りさんみたくなっている。その中に人間っぽい目がくっきり描かれ、クールな視線を飛ばしてくる。しか

          内海慶一『100均フリーダム』

          名刺

           別に出版業界に限った話ではないが、社会人になって初めて自分の名刺を手にしたときに「ああ、大人になったなあ」と実感した人は少なくないのではないか。まあ、最近は学生でも名刺持ってたり、一昔前なら女子高生の三種の神器のひとつに数えられたりもしたわけだが、社会人の名刺とはやはり本気度が違う。  私の場合も、最初に入った会社で名刺をもらったときはうれしかった。何の変哲もない地味な名刺だったが、社会人の第一歩を踏み出した感があったものだ。のちに倒産した某出版社の名物社長に会いに行った際

          原稿用紙

           ほとんどの人がそうだと思うけど、初めて原稿用紙に文章を書いたのは、小学校の作文だった。細かいことは覚えてないが、普通の400字詰原稿用紙だったはずだ。中学のときには、夏休みの作文を手書き原稿のまま文集にするというのがあって、印刷すると罫線が消える原稿用紙が支給された。それは25字×25行×2段という変則的なものだったが、一般に原稿用紙といえば400字詰というのが常識であろう。  文学館に展示されている昔の作家の原稿も、だいたい400字詰だ。名前入りの専用原稿用紙を使ってい

          原稿用紙

          トレスコ

           もともとマニアックなテーマの連載だが、ぼちぼちネタも尽きてきて、さらにマニアックな領域に突入する。今回のネタは、ネット検索してもあんまり情報が出てこない「トレスコ」。正式名称はトレーシングスコープ(だと思う)。知らない人に説明するのは難しいが、イメージ的には超アナログなスキャナ&プリンターと思ってもらえばいい。いや、それより写真の引き伸ばし機のほうが近いか。といっても、引き伸ばし機だって、ある年齢以上のカメラマン(もしくは趣味で写真やってる人)しか知らんわな。  私も引き伸

          トレスコ

          カラーチャート

           通常のカラー印刷は、CMYKの4色で刷られている。ざっくり言えば、Cは青、Mは赤、Yは黄、Kは黒。Yは普通にイエローだが、Cはシアンで明るめの青、Mはマゼンタといって、いわゆる赤よりピンクに近い。黒がKというのは、BLACKをBLと略すとBLUEと混同して紛らわしいから末尾のKを取った……と思っていたら、そうではないらしい。調べたら「Key Plate」のKだというんだけど意味わからんし、現場で黒は「スミ」と呼ぶことが多いので、まあ、そのへんはどうでもいい。とにかく基本的に

          カラーチャート

          電話帳

           そういえばここ数年、タウンページの配布がないなあ、経費削減でやめちゃったのかなあ……と思って調べてみたら、まだちゃんとやってるらしい。じゃあなんでウチに届かないんだ、配達員がサボってんのか、と思ったら、タウンページNETの「よくあるお問い合わせ」に理由が書いてあった。 〈タウンページ・ハローページはNTT東日本・NTT西日本電話回線に加入契約いただいているお客さまにお届けしております。ご契約がない場合、無料でお届けすることができません〉  ……そうだった、ウチは数年前に

          コピー

           今となってはパソコンやインターネットなしには1ミリも仕事が進まないが、私ぐらいの世代(50歳前後)はまだ、どちらもなかった時代を経験している。しかし、コピーがなかった時代にどうやって仕事してたのかとなると、ちょっと想像しづらい。社会人になった時点で会社にコピー機は普通にあったし、仕事に欠かせないものだった。  ビジュアル誌の場合、レイアウトが上がってくると、まずコピーして、そこに赤ペンでどの原稿がどこに入るかの指示を書き込む。本割(レイアウトの原版)は写真やイラストと一緒に

          カメラ

           88年初めから91年秋まで、編プロと中堅出版社でビジュアル誌の編集をやっていた。当然、いろんな撮影の仕事がある。89年に腕時計のムックを作ったときには、巻頭数十ページ分のブツ撮りが大変だった。午前中にメーカーやショップから商品を借り出し、午後から夜遅くまでカメラマンのスタジオで撮影、深夜に会社に戻って昼間できなかった仕事をしてから少し寝て、翌日午前中に商品の返却と借り出し、そしてまた午後から夜まで撮影……の繰り返し。腕時計のような“光りもの”の撮影はなかなか難しく、ブツ撮り

          テレコ

           テープレコーダー、略してテレコ。  日本で初めて発売したのは、やはりソニーだ。1950年、ソニーの前身である東京通信工業がテープコーダー「G型」を発売(当時はテープコーダーと呼んでいたらしい)。オープンリール型で、写真を見るとコピー機ぐらいの大きさがある。価格は16万円。当時の都市勤労世帯の平均月収が1万3000円ぐらいというから、平均的サラリーマンの年収並みの値段だったことになる。  カセットテープが登場したのは1962年。ソニーではなくフィリップスが開発し、基本特許を公

          ポケベル

           ポケベルといえば裕木奈江である。  1993年に放映されたドラマ『ポケベルが鳴らなくて』で、妻子あるサラリーマン(緒形拳)と不倫する若い娘の役を演じた。タイトルからもわかるとおり、このドラマでは2人の連絡手段としてポケベルが印象的に使われているのだ。  とかいって、実はドラマ自体は一度も見たことないのだが、大ヒットした主題歌は覚えてる。〈ポケベルが鳴らなくて/恋が待ちぼうけしている/私の方から連絡できない/現実より愛している〉という不倫のせつなさを表現した歌詞は、秋元康作

          ポケベル

          携帯電話

           1995年1月17日午前5時46分、阪神淡路大震災発生。  あの日、私はちょうど『SPA!』の特集の入稿で編集部にいた。徹夜の入稿作業が終わり、ふと窓際に並んだテレビに目をやると、どの画面も炎上する町の空撮映像を映している。いったい何事かとボリュームを上げたら、神戸で大きな地震があり、大規模な火災が発生しているというではないか。  編集部に居合わせた人たちがテレビの前に集まってくる。詳しい状況はわからないが、とにかくとんでもないことが起こっているようだ。実家が大阪で、中学・

          携帯電話