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リフレクションと対話とシステム思考 【週刊新陽 #51】

先週、進学コース2年生を対象とした『キャリアを考える焚き火会』が、ハッシャダイソーシャル様と鈴木商会様のご協力のもと実施されました。

学校のグラウンドで焚き火を囲んだ対話の会を実施する予定でしたが、悪天候のため体育館で"焚き火のない焚き火会"に。それでも、焚火台を置いたりスピーカーで焚き火の音を流したりして、焚き火感が演出されていました。

年度末が近づき、成果発表会や1年間の振り返りを行う様子も見られる中で、リフレクションと対話が新陽高校のカルチャーとなりつつあることを感じます。

さて、今週の週刊新陽は教職員のリフレクションと対話の場『中つ火を囲む会』の今年度最終回の内容をレポートいたします。

教員も学ぶシステム思考

これからの時代、課題解決やイノベーション創出に欠かせないのがデザイン思考システム思考だと言われています。

そこで今月の『中つ火を囲む会(以下、中つ火)』では、システム思考を教職員が学ぶことにしました。

システム思考とは、物事の全体像を捉え、さまざまな要素とのつながりや相互作用に着目し、効果的な解決法へ向かうアプローチのこと。マサチューセッツ工科大学のピーター・センゲ氏の著書『学習する組織』によれば、「木も見て森も見る」という考え方です。

冒頭、熊平美香さんからシステム思考に関するレクチャーがあり、事例やツールを紹介いただきました。

システム思考を実践するためのツールやフレームはいくつかあるのですが、今回は『ループ図』と『氷山モデル』を試してみました。


規則をテーマにシステム思考に挑戦

実は、この『中つ火』を開催した日は、校則見直しについて生徒・保護者へ確定版を公開した日でもありました。

校則見直しは、3ヶ月かけて教職員で議論し生徒や保護者にも意見を募る形で進めてきましたが、もっと遡ると、実はここ数年のあいだ校則の見直しやあり方についての問いが何度かあがってはいたようです。

でも、議論は生まれるのにいつのまにか立ち消えてしまう・・・それはなぜか?

その問いに対して、システム思考を使って学校の規則に関する物事のつながりやメンタルモデルを紐解いてみようというのが今月の『中つ火』のテーマ。

対話は、熊平さんファシリテーションのもと、3ステップでグループワークと全体共有を繰り返し進んでいきました。

Step 1 : 規則がないとどうなるのでしょうか。生徒の幸せと先生の幸せの両面から考えてみましょう。

Step 2:フィージビリティ・スタディという考え方で「コロナ禍の私服可」の出来事を振り返ってみましょう。何が起きましたか。生徒の視点、先生の視点、両方で考えてみてください。

Step 3:皆さんの議論の背景にどのようなメンタルモデル(価値観やものの見方)がありますか。それは、どのような経験に支えられているのでしょうか。

グループによって「規則のあり方」「生徒への指導」「社会の目」「高校生とは」など様々な視点での意見が出たようです。

特に興味深かったのが、3つ目の問い「どんなメンタルモデルがあるか」。

先生たちが、それぞれの高校時代を振り返ったり、海外での体験をもとに国民性や地域性について触れたり、新陽の長い歴史の中での生徒や社会の変遷が語られたり・・・様々な経験やそれに紐づく感情を互いに共有しながら、同じビジョンに向かってどのように生徒と接していくのがよいのか、深い対話が生まれていました。

今回、ループ図をつくって繋がりを見える化するまでは至りませんでしたが、まずは全員でシステム思考を体験してみる第一歩を踏み出せてよかったと思っています。

1年間の中つ火を振り返って

今年度スタートした『中つ火』。全11回、改めて振り返ってみるとずいぶんと色々な対話をしてきたなぁと思います。

1年間のリフレクションとして「増やしたいと思う行動」を一人ずつ挙げてもらいました。

やはり「リフレクション」「対話」「聴くこと(傾聴)」が行動として多く挙がったことや、アンラーンやシステム思考などツールを実際使ってみたいという声も出ていたことは『中つ火』の成果のように思います。

ほかにも、生徒とも『中つ火』をやってみたいとか、外で実際に焚き火を囲んで『中つ火(外つ火?笑)』しましょう、との提案もあり、次年度以降につながるリフレクションとなりました。

***

終了後、ファシリテーター&企画メンバーの熊平さんと福田さん、そして『中つ火』のオペレーションを支え続けてくれた櫻庭先生とゆるやかな振り返りトークを。

「最強のオペレーター!おつかれさまでした」

櫻庭先生に感想を聞いてみると、「はじめは、zoomやJamboardに慣れない先生もいてオペレーションで手一杯だったのですが、皆が徐々に使いこなすようになって、自分もグループでの対話に入れるようになりました。普段あまり話さない先生ともいろいろ話せて楽しかったです。」とのこと。

そして、最初の頃はブレイクアウトルームで分けてもメインルームで居残る人(耳だけ参加やzoomには入っているが画面はオフにして違うことをやっているなど)が一定数いたが、だんだんそういう人が減り、主体的に参加している人が増えた感覚がある、と話してくれました。

熊平さんも「みんな、話しているとき楽しそうですもんね。新陽の先生たちは、振らなくても話してくれて協力的。」と。

熊平さんは、今回のシステム思考ではループ図作成まで行けず、中途半端かと心配したそうですが、「先生たち一人ひとりの頭の中にシステムができていたような気がする。それぞれがつながりを描いていたように思った。」と仰ってくださいました。

「問い」に対して簡単に「解」が出ないのもシステム思考の醍醐味。そして、こういうワークショップをすると「答えがない終わり方が嫌だ」という人たちもいる。でも、新陽の先生たちはそういうことがなく、(解が出ることよりも)自分の考えが深まったということについて満足していたように見えた、とのこと。

ちなみに、あるブレイクアウトルームでは、「(校則の見直しは)もう走り出したからみんなで走るしかないよね。走らないのはリスク。」という話になっていたそうで、熊平さんは「それが新陽だなぁと思った」そうです。

福田さんからも、「1年経って、違う意見についての受け止めの許容度が上がった感じがしますよね。メンタルモデルを知ったことで、表出している意見や事象だけでぶつからず、なんでそう思うの?という会話が成り立つようになったのだと思う。」と。

最後に、次年度に向けての相談や、この取り組みが他校や全国に広まるにはどうしたらいいんだろう、などとアイデア出しをしながら、今年度の『中つ火』がすべて終了しました。

【編集後記】
1年前、「どうなるかはわからないけど、絶対にやる意味はある!」と信じて始めた中つ火を囲む会。一緒に取り組んできた先生たちと、導き支えてきてくれた熊平さんと福田さんに、本当に感謝しています。
最後のリフレクションで、「こういった取り組みが、新陽では、全体でシステムとして動いている感じがする。それが他とは違うところ。」と熊平さんが言ってくれたのが、個人的には一番の発見と喜びでした。

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