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遠くへ行きたければ、みんなで進め〜「前進をつなぐ」という仕事 【週刊新陽 #153】

今週の『週刊新陽』は、元プロ野球選手の杉谷拳士さんが1年前に設立された会社と新陽高校の話です!

昨年4月、ZENSHIN CONNECTx新陽高校で
業務委託契約を締結しました。

「前進」をサポートする会社

2023年4月7日夕方、杉谷拳士さんが設立を発表した『株式会社ZENSHIN CONNECT』。

ひとりではできなかった前進が、
誰かのチカラが加わることでできるようになる。
その誰かになろうとする会社です。
前進とは、目標ができること。目標にむかって挑戦すること。
スポーツや教育の分野で、地域社会で、国を越えて。
ひとりひとりの前進をバックアップし、
また次の前進へ、別の人の前進へとつないでいきます。
すみません。前進、前進、としつこくて。

ZENSHIN CONNECT 代表 杉谷拳士

ZENSHIN CONNECT Webサイトより

ZENSHIN CONNECTでは、4つの分野で、さらにはこれらの分野を掛け合わせて、『ZENSHIN ビジネス』と称した事業を展開しています。

この中の一つ、教育分野で行っているのが「学校における"前進"の支援」。新陽高校もご一緒いただき、まもなく1年が経とうとしています。

「ZENSHINビジネス」4つの分野
(ZENSHIN CONNECT Webサイトより)

新陽が支援いただいていることは、契約書によれば

(1)入試広報活動に係る助言・支援業務
(2)その他、両者で別途合意した業務

とシンプルですが、実際には幅広く、WebサイトやSNSの情報発信に関すること、入試関係の資料配布や資料請求対応に関すること、入試イベントの実行支援、などなど。

さらに、(2)のその他、というのがミソで、生徒会に関わる事務処理や、学校の寄付募集に関すること、さらには先生たちの相談対応(若手の悩み相談やベテランからアイデアを求められる)など、新陽がビジョンに向けて進む中で遭遇する様々な問題を乗り越え"前進"するための支援をしていただいています。

例えば、12月の業務はこんな感じです。
(ZENSHIN CONNECTさんの実施報告書より)

ピンチはチャンス

ZENSHIN CONNECTは、杉谷さんと、新陽の教員だった高石大道さん(2023年3月退職)が一緒に作った会社です。

国内外の一般企業で働いた経験もある大道さんは、他の先生とは少し違う視点を持ち、フットワーク良くかゆいところに手が届く人。

新陽の特色の一つである「出会いと原体験」が定着したのも、前校長の荒井ゆたかさんが広いネットワークを活かして持ちこんだ様々な外部との繋がりを大道さんのような先生たちが生徒の活動と結びつけ、カリキュラムや学校の仕組みの中に埋め込んだからだと思います。

私が校長に着任する前から、大道さんは地域や企業と学校をつなぐCCコミュニケーション・センターの略:呼び名はシーシー)という分掌の担当でした。それを2021年度以降、生徒を含む学校組織を縦にも横にも、さらに外部ともつなぐ学校運営のハブとして位置付け、実は学校にたくさんあるプロジェクト的な業務をまとめて担当することにして、大道さんにCC長になってもらいました。

(2021年度当時のCCについてはこちらの記事を参照ください▼)

ちなみにCCは新陽独自の分掌で、いくつかの記事で紹介するなどしているうちに他校からも「CCについて教えてください」「うちもCC作りたい」という問い合わせが来るようになりました。

私たちも、CCによって学校全体が滑らかに動いたり、他の分掌からこぼれ落ちそうな業務を拾えたり、CCの意義を感じて「どの学校もCC作ればいいのにね」などと言っていました。

と同時に、CC長を務めていた大道さんと相談していたことがあります。それは、「CCの仕事は先生じゃないとできないのだろうか?」「CCはプロパー(直接雇用されている職員)である必要があるか?」ということ。

旧来の学校組織に縛られず、CCをさらに発展した形にできるのではないか、と考えていた頃、大道さんから「会社を立ち上げるため退職します」と言われました。そして「事業の一つに学校向けのサービスを置こうと思ってるんです」と。

新陽が挑戦している「高校教育の再創造」に大道さんは欠かせない存在であり、その大道さんが新陽を去ることは大きな痛手ではあったのですが、同時にチャンスだと思いました。外部からの関わりによってCCがさらに前進するチャンスです。

CCから生まれたミドルオフィス構想

学校の先生はだいたい、教科指導をし、クラス担任(新陽の場合は各ハウスのメンター)をしながら、教務、進路、生徒指導・・・といった分掌業務を行うという3次元の仕事をしています。どの業務も生徒の学びを設計し実践する上で大切な役割ですが、そもそもこの3次元の業務構成が、教員一人一人が個性や特性を活かしきれないこと、あるいは教員が多忙であることの一因にもなっているのではないか、と常々思っていました。

新陽ではCCという新たな役割を置いたことで、分掌業務のあり方を根本から問い直すことができました。そしてそこから、学校における「ミドルオフィス」という考え方が生まれました。

ミドルオフィスとは、投資銀行やコンサルティングファームにある部門の名称です。直接クライアントとやりとりするフロントと、経理・法務・人事など事務実務を行うバックオフィスに対して、調査や分析、報告書の作成などフロントを支援するのがミドルオフィス。顧客と直接は接しないものの、ミドルの提供してくれる情報やアウトプットが顧客に提供するサービスの質に大きく影響する、と感じていました。

その経験から、分掌業務を「生徒に直接関わるフロント的な業務」と「フロントをサポートするミドルオフィス的な業務」に分けて考えることができるのではないかと思ったのです。

さらに海外で視察した学校を参考に、ミドルが担う仕事を中心に、教員免許を持っている人ではなくていい業務やプロパーでなくてもいい業務があるような気がしました。むしろ教員がやらない方がいい業務がある、空いた時間を教員は生徒とのコミュニケーションや教材研究に使うべきだ、と。

そんなこんなで、いよいよ4月からミドルオフィス構想が始動します。CCから発展したミドルオフィスという考え方、そして、すべてを教員がやるのではなく事務職員や外部と連携する可能性を、もっと広げていきたいと考えています。

学校改革を加速するナナメの関係

ミドルオフィス構想が現実味を帯びたのも、この1年のZENSHIN CONNECTさんとの協業があったから。契約は業務委託ですが、何かを外注するというよりは協創したり伴走してもらっている感覚です。

前述のとおり、ZENSHIN CONNECTさんとの契約内容はかなりざっくりしていますが、だからこそやっていく中で「こういうこともやってもらえる?」とこちらから相談したり、あるいは「こんなこともできそう」と提案を貰ったり、可能性を探りながら進めてきました(もちろんZENSHIN CONNECTさんだからできる、という部分は大きいのですが)。

その結果、外部に委託できること、授業を持っていなかったりメンターではなかったりする人がやった方がいいこと、教員と外部が連携するから良い成果がでること、など少しずつ見えてきました。

さらに、業務的支援だけでなく、「外の人」となった大道さんという存在が極めて重要な役割を果たしてくれています。

上下関係や利害関係がない適度な距離感のおかげで、大道さんが同僚だった時よりさらに相談しやすかったり、仲介機能を果たしてもらうことができたりするようで、個人の成長や組織の心理的安全性にも貢献してくれていると感じます。現在進行形で新しい教育を創っている新陽の教職員にとって極めて貴重な存在です。もちろん、私自身にも。

子どもにとって、保護者や先生ではなく、また友達でもない「ナナメの関係」や「第三の大人」という存在が良い役割を果たす、という話がありますが、大人にもこのナナメの関係は重要なのかもしれません。

次年度も、新陽は「高校教育の再創造」への歩みを止めず、校内外の心強い仲間と共に前進していきたいと思います。

【編集後記】
3月24日放送の『ボクらの時代(フジテレビ系列)』に、杉谷さんが、NEWSの小山慶一郎さんと元サッカー日本代表の槙野智章さんと出演されていました。「明るく野球をやりたいという思いが子どもの頃から変わらない一方、周りから批判されたこともあり悩んだ時期があった。栗山監督に呼ばれて、「お前最近なんだ?全然楽しく野球やってないじゃないか。拳士は拳士らしく前に進みなさい。人のことなんてどうでもいいんだ。楽しく明るく野球やっている姿、それが杉谷拳士だろ」って。悩みが全てぶわーってなくなり、このまま自分の道を進もうと思った」と語っていた杉谷さん。最近はタレントとしてのご活躍が目覚ましいですが、ZENSHIN CONNECTでは学校教育の支援のほか地方創生や子どもたちのスポーツ指導なども幅広く展開されています。そのすべての根底にあるブレない「前進」マインドは、栗山監督によって後押しされ今に続いているものだったんですね。

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