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自分の子を断罪する?そりゃあ ボーも恐れるだろう 

 

なんていうか 
「なろう」の 悪役令嬢ものの話として良く出てくる
「家でも虐待され、婚約者にも蔑ろにされ、冤罪からのギロチンルート」
みたいな話であった。
(婚約者は登場しないけれど、なんなら婚約者も殺すよ、みたいな)

あらすじ
日常のささいなことでも不安になってしまう怖がりの男ボーは、つい先ほどまで電話で会話していた母が突然、怪死したことを知る。母のもとへ駆けつけようとアパートの玄関を出ると、そこはもう“いつもの日常”ではなかった。その後も奇妙で予想外な出来事が次々と起こり、現実なのか妄想なのかも分からないまま、ボーの里帰りはいつしか壮大な旅へと変貌していく。

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母の出産場面が匂わされ
それからセラピーの場面がある。
セラピストのやや強引な態度も、後から理由がわかる。
死体?も転がる治安が悪そうな、落書きだらけ、ゴミだらけの
汚い町に住んでいるボー。
音楽をかけていないのに夜中ずっと文句がきたり
それでも帰省しようとしたら、カギや荷物を盗まれたり
そうして、母親に電話する場面が出てくる。

「絶対」水が必要な薬を飲まなくてはいけないのに水道が壊れ
買いに行ったらカードが止められていたり
オートロックの入り口が閉まってしまい部屋に戻れなかったり。

何故こんな地域に住んでいるのか
仕事はしていないのか
金銭管理はどうなっているのか
なぜそんなことになっているのか

と考え始めると、母親が関与・管理していると気づいていくのである。

どこまでが母親の悪意で、どこからが周囲の悪意か
その区別が難しい。居住区域も含めて壮大な実験か。
(財力として、もっと良い場所に住まわせるのは可能だ)


どこも妄想とは思えなかった。ボーにとってはリアルだし。
彼が劇に入り込んでしまうのは、
自立するきっかけになるのかもしれなかったが、それも結局壊される。
セックスしたら心臓まひで死ぬはずの彼には、自分の子と巡り合う未来は
あり得ないのだ。(心臓麻痺で死ぬ、も母の刷り込みだ)

終わり近く、彼がモーターボートで逃げ出す場面は
胎内に戻ろうとしているようだったがトンネルを抜けてしまう。
トンネルを通って海に出るとしても、救いはないな と思ったが
もっと救いがない感じで終わった。

トゥルーマンショーでは、主人公は「外」に出ることができたが
ボーは食われてしまうのだった。
自立の芽を摘まれ続け、いろいろな、死への恐怖を植え付けられ続けて。

ボーに都合の悪い証拠しか示されないが、本当は
ボーの部屋に他人が入って部屋をめちゃくちゃにした映像もあったはず。
そんな話の前に弁護人は殺される。断罪ショー。

あの母親は異常すぎるがその周囲の人間もひどい。
いじめの被害者にとっては他者とはああいう感じなのではないか と
そんなことを思ってしまった。

もしも三回くらい生まれ変わっても、
ボーには言い返し、言い負かすことはできないのではないか。
他人を操作し支配するようなああいう感じの毒母から逃れるのは難しい。
自分で働いて引っ越すことができるようにならないと。


多すぎて少し心がマヒしているが
つい最近も、4歳を薬で殺した話があった。
子どもを愛せない親はいくらでもいるし、虐待は連鎖する。
アメリカでは
戦争によって心が壊された人でなくても、銃の乱射事件はよくある。

良く見ることはできなかったが
あの母親のポートレートを形作っていた写真の中には
あの、ワザとのように壁の薄いボーのアパートの周囲の住人や
医者、劇団の人たちもいたのかもしれない。
あの治安が悪い地区の完成時の写真もあったかも。

「哀れなる者たち」が解放の物語だとするならば
ボーの物語は、解放されない被支配者の絶望の物語だ。




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