地下街ラバーズ

迷って迷って
結局折り畳み傘にすることにした。
 
地下街を歩くのに
長い傘は邪魔になりそうだし
どこかに忘れるかもしれないと思ったから。
 
地下街は意外と長い。
目的の買い物をするのに
端から端まで結構歩いた。
 
疲れたので休憩することにして
比較的空いている店に入った。
 
持ってきた本を何行か目で追ったが
気が乗らなくて閉じた。
コーヒーを飲みながら
道行く人たちを眺めていた。
 
しばらく眺めていると
男女二人組が手を繋いで歩いてきた。
 
小さくて可愛らしい女の子と
背が高くて優しそうな男の子。
お似合いの二人だった。
 
どうやら地下鉄の入り口に近い
ここでお別れのようだ。
見つめ合いながら名残惜しそうに
それでも笑顔で手を振り
別々の方向に歩き出す二人。

女の子に
どうかそのまま振り向かずに行って欲しいと願った。

でも女の子は振り向いてしまった。
男の子は真っ直ぐ振り返る様子もなく
歩いて行ってしまったのに。
 
女の子はしばらくその方向を見ていたが
諦めた様子で踵を返そうとした。
   
彼女と目が合うのが怖くて
急いで本を開いた。

2016年6月26日 日曜日


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