夕暮れのエイリアンズ

その日は天気のいい休日だったけど
友人の家でお茶をしながら
「今日はどこにも行かないでおこうね」と決めていた。
 
でもやっぱり気持ちよさそうだったので
買い物ついでに散歩をすることにした。
   
ブラブラと意味のない会話をしながら歩いていたら
住宅街で小さな路地を見つけた。
 
「あそこの隙間、通る?」
返事をしないまま
その小さな路地に入った。
 
「 ねぇねぇ、『隙間通る』ってさ
カタカナで書いたらなんか妖怪の名前っぽくない?
『スキマトオル』ほら」
「トトロの 『まっくろくろすけ』的な?」
「あーそうそう、それ」
「んー、まあ わからなくもないかな」
「スキマトオルって何色かな?」
「えー、色ー? んー…何やろ」

そのあと何色と言われたのかは覚えていない。
ウケ狙いで変な返事が帰ってきたことは覚えているが
全然面白くなかったので
ちゃんと 「全然面白くない」という顔をした。
   
結局何色なのかという最終結論は出なかった。
というよりも
架空の「スキマトオル」について
大人の女が語り合うことではないし
実際そこまで興味もなかった。
   
川沿いの公園のベンチで少し休んだ。
ボーッとしている間に飛行機雲を三回見た。
 
川岸にポコポコと穴が空いていて
海が近いから蟹がいるのかな
などと話した。
 
少しの間 黙っていた。
 
キリンジの歌を思い出したが
そのことはもう言わなかった。


2017年5月23日 火曜日

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