見出し画像

ブラジル1部リーグに所属する「なでしこ版カズ」 藤尾きらら選手インタビューPart1

今回インタビューしたのは、ブラジル女子プロサッカーリーグ1部でプレーする、藤尾きらら選手。なでしこリーグのクラブからの誘いを全て断り、
サッカー王国ブラジルの女子プロリーグにチャレンジ。見事契約を勝ち取った。しかも、ブラジルにからオファーのない中でのチャレンジだったという。知り合いを通じて受けたのが、最初に契約した「スポルチ・レシフェ」の入団テスト。そこから、2回入団を断られるも諦めず、3回目の入団テストで見事プロ契約を勝ち取った。目標はブラジルのビッグクラブ「コリンチャンス」でプレーし、ヨーロッパでプレーすること。
そんなきらら選手が異国の地で感じるサッカーの違いや、文化の違いについて、感じることを話してもらった。その貴重な生の声を、2回に分けて書きたいと思う。

<プロフィール>

藤尾(ふじお)きらら。女子プロサッカー選手。ブラジル女子プロサッカー1部リーグ「アヴァイ・キンダーマン」所属。1998年(平10)11月2日生まれ、熊本県玉名市出身。高校女子サッカーの名門、「日ノ本学園(兵庫)」在学時には、2度の全国高校総体優勝や全日本高校女子サッカー選手権の優勝を経験。その後、ブラジル女子プロサッカー1部リーグ「スポルチ・レシフェ」と日本人初となるプロ契約を結ぶ。2019年には現在所属する「アヴァイ・キンダーマン」へ移籍し、プロ契約を更新。

ブラジルの指導者は何を教える?

華麗なテクニックで相手を翻弄するイメージがあるブラジルですが、技術どうこうで「あれをしなさい」「これをしなさい」というのは全くないんです。例えば日本だと、ボールの止め方とか、インサイドで丁寧にやれと教えられますが、止められばどこでもいいし、パスも繋がればどうやって出してもいいよと言う感じですね。最初は日本との違いにびっくりしました(笑)
場面でのイメージや、アイデアをくれるんです。
例えば、ペナルティエリアで相手が密集してたとしたら、こういうボールをここに入れたらいいんじゃないかなという感じで、選手の視野を広げるというか、選手にアイディアが沸くような指導が多いですかね。
技術はあくまで、ゴールという目的のための手段やアイデアであって、ゴールの実現手段は各選手に任せるよといった感じです。アウトサイドでもインサイドでも、成功すればいいんですよ!

画像1

ブラジルの指導者が見るところ

ポジションによって自分の役割が明確にあります
試合中は自分の仕事をしつつ、チームの目標達成のためにプレーしているか?を見られている感じがします。
各ポジションのスペシャリストが、自分のポジションでチームのために最高の仕事をするんです。
例えば、FWフィニッシャータイプので大きい選手がいたとします。
日本だと、そのようなタイプの選手でも、下がってボールを受けにきて、なおかつゲームに絡むことが求められたりしますが、ブラジルでは違います。
フィニッシャーの選手は、自分がゴールを取るためのポジショニングを常にしていて、余計なことはしないんです。

それぞれが自分の個性を生かして、得意なことでチームに貢献しようと考えます。そして、チームメイトもそれぞれの選手の特徴を理解し、お互いが味方選手の特徴を生かそうとゲームに臨んでいます。なので、自分の得意ではないことをしようとすると一気に流れが悪くなるんです。
また、それぞれが常に自分の得意なことをしているので、日本とはスピード感が違います。
スピード感とは急いでプレーしているということではありません。
基本的に彼女らは、自分の得意なことをしているので、意思決定とその実行スピードがとてつもなく早いんです。
ブラジルって個人技のイメージが強いですが、チームとしての連携がすごいんですよ。
ブラジルで感じたのが、「個」と、わがままなは違うということです。
日本だと、「個」と言われるとわがままなイメージだと思いますが、「個」というのは、その選手が持っている良いところなんです。
ブラジルでプレーしてみて、各選手が持っている良い所をチームに還元できるのが「個」の力なんだなと強く感じました。

画像3

ブラジル人のチームワーク

日本人は、よくいうと意図に合わせて行動できたり、空気を読んで人と同じ事ができるという傾向があります。しかしそれは、人の真似をしているだけであって、チームワークではないのではないかと思うようになりました。
意外かもしれませんが、ブラジル人は自分の良いところでチームに貢献しようとしているので、「自分はこうだから」と無理やり我を通すようなことはしません。自然体で自分ができることをする。
そして、それぞれの選手が各個人の良いところを理解しているので、みんなが違うことをしていてもスムーズに物事が進むんです。
それぞれが、「あの人はこうだから、自分のこういうところで協力できるな」といった感じで行動しています。
あとは、勝負に勝ちたい気持ちが半端じゃないくらいに強いです。
何がなんでも勝ちにいきます。というか、ブラジルで勝負の意識は標準装備ですね。

各チームそれぞれに、誰もが認めるリーダーがいるんです。
そういうリーダーは、上手いだけじゃないんですよ。人間性も素晴らしいんです。彼らが試合前に話すことが多いのですが、彼らはチームの根本的な考え方を誰よりも理解しています。対戦相手が格上の「コリンチャンス」や、「サントス」の時などには、強い相手に勝つために、どのくらいの力と集中力を発揮しないといけないのかまで考えて話すんです。それだけではなくて、戦術の話も理論的に話せるんですよ。
そういう選手が真のリーダーだなと感じますね。
感情に任せて怒鳴ったりはしないんです。
リーダーは常に他の選手とコミュニケーションをとりつつ、具体的な改善策などを理論的に説明し、プレーの中で示しているんです。
そうなると他の選手も「ついていこう!」と自然にリーダーについていくんです。リーダーは常に行動で示しているので、彼らが発言するとみんなしっかりと聞くんですよ。それを見ていると、口だけじゃなくて信頼されるに値する行動をしなきゃいけないと思いますね。

ブラジル人は、「自分がこうしたい」というよりも勝つことへの意欲が強いんですよ!意外かもしれませんが、選手の自意識があまりないんです。
みんな勝ちたいから、勝つためにそれぞれができる事をするという意識がとても強いです。自分はなでしこリーグでプレーしたことがないので分からないですが、目的達成のために自分の力を発揮できているか?という観点から見ると日本人はわがままだと思いますね。
自分の世界に入ってしまうんです。
チームで勝つというより、それぞれがやりたい事をやって、自分が納得できるプレーをする事を目指す人が多いとは感じますね。
目的が、試合に勝つではなくて、「自分がいいプレーをする」になってしまっているんです。それでは世界に追いつけないと思いますね。
もっと日本の選手個人が、自分の事よりも試合で勝つために自分の力を最大限発揮できているか?というとろを考える必要があると思います。

画像2

ブラジルで「価値のある選手」とは?

プロなので、まず大前提として、技術やフィジカルは標準装備だと思います。そのベースにプラスで、「最後まで諦めないで勝ちにいける選手」ですね。気持ちや感情を表現できる選手にもすごく価値があると思います。
日本だと、あまり感情を表現せずに黙って淡々とプレーする選手が多く、技術に目が行きがちなのですが、技術があるのは大前提ですね。
技術がある中で、諦めないで戦えたり、チームのためにプレーできる選手は重宝されます。サッカー選手なんだからうまくて当たり前。
そこにプラスで、チームのために何ができるか?どう戦えるのか?がブラジルではとても重要です。
ブラジルでサッカーは戦争のようなものなので。
上手いのはわかったから勝ってくれ!という感じですね。なので、技術がある選手というよりも、「勝負に勝てる選手」に価値があります。
うまいだけだと自己満足で終わってしまうんです。

ブラジルで活躍してる凄い選手の共通点

チームのトップ下のジュリア・ビアンキ選手と、右サイドバックのブルーナ・カデラン選手がとてつもなく凄い選手なので、何でそんなに凄いのか観察してみたんです。そこで気づいたのですが、彼女らは、よく状況や人を観察していて、物事を理解するのがとても早いんです。

どういうことかというと、彼女らって、他の選手の特徴を見抜くのが早いんです。そこ見えてたの!?という所によくパスを通したりするので、「なんでそこ見えてたの!?」って一回質問してみました。
その質問に対しての彼女たちから返ってきた答えが、「見てたというより、多分あいつならあそこにいると思ったから!」と言ったんです(笑)
その時は「超能力かよ!」と思ったんですけど、あるときハッとしたんです。それって、チームメイトの癖とか、行動、特徴を普段から観察しているから、感覚でもパスを出せるんですよね。見てから判断するんじゃなくて、ピッチに出た時にはもうすでに理解してるんです。
それってとても重要なことだと思うんですよね。
探して、考えて判断すると遅くなるんです。凄い選手は、判断もするんですけど、すでに分かってる状態でピッチに出るんだなと感じました。
練習が凄いとか、テクニックがすごいとかよりも、常に様々なことを観察しているんです。

一つ面白いエピソードがあります。
凄い選手って、チームできつい練習の後にやる軽めのトレーニングをサボるんです。来ないとかではなくて、練習には参加してるけど、その練習がそこまで大切ではないということを瞬時に理解するので、手を抜いて体の負荷にならない程度に流してトレーニングしているんです。
軽めトレーニングでミスが多かったりしても、しっかりとやらないといけないトレーニングでは全くミスがなく、いいプレーを連発するんですよ(笑)
彼女らは、いつ集中するべきなのか?ということをしっかりと理解しています。頑張りどころも常に観察してるんですよ。

いつ頑張るべきか、どこで、どのように自分の力を発揮すれば効果的かを理解するのが早いので、欲しい時に結果を出せるんだと思います。
それが生活にも活きているんですよ。面白いですよね。
何をどう使うとか、いつ何を、どのくらいの力でするのか、という時間の使い方もとても上手なんです(笑)
けど、「自分の力の出し方」は、教わったからできるようになる、という単純なものではないと思います。
自分の目で見て、全体の流れを想像しながら考えて動く。
日本人は常に頑張ろうとする文化ですが、頑張りどころを見極められるようになれば、もっと結果が出せるようになると思います。
私もそうでしたが、この話しからハッとすることって多いと思うんですよね。ブラジルのすごい選手を見て、私も「頑張り方」を意識するようになりました。最近私も「頑張り方」のトレーニングを始めました!
サッカーってめちゃくちゃ奥が深いですねよね!

Part2へ続く・・・・・


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?