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戦略参謀(2):経営立て直し物語

昔から「参謀」が力は発揮するのは「平時より有事」
兵力や軍備が足りずに圧倒的に不利な状況、それこそ四面楚歌の状況から、どのような戦略を立て、実戦において勝機を見出していくかに、名参謀としての評価が問われます。

企業における「戦略参謀」の真価も、やはり経営不振の企業や成長力の落ちた企業をどう立て直していくかにあると思います。

ミスミグループ名誉会長 三枝 匡 さん

この分野の第一人者と言えば、真っ先に三枝匡さんが上げられるでしょう。
BCGやベンチャーキャピタルをご経験後、1986年に自ら「事業再生専門家」として個人事務所を立ち上げています。

その集大成として(株)コマツ 産機事業本部の事業再生のストーリーを
2001年「V字回復の経営」として書籍化されています。

また、その後、2002年にミスミグループに移られ、元々は金型用部品商社だったミスミをFAや精密機械部品の開発・製造にまで広げ、10数年の在任期間中に売上高6倍以上、営業利益4.8倍以上、従業員も340人からグローバル1万人規模の国際企業へと大成長させました。
この経緯を書かれたのが「ザ・会社改造」です。

いずれも企業変革において、それまでのやり方に囚われ、会社が自然死的衰退に落ちていくのを自責ではないと静観している保守層・抵抗勢力、熱い思いを持って改革を推進していくと変革型人材・改革派の間で巻き起こる社内論争のやりとりがリアリティを持って語られています。

元産業再生機構COO 冨山 和彦 さん

つぎに紹介するのは現在、(株)経営共創基盤(IGPI)CEOの
冨山和彦さんです。

産業再生機構時代の企業再生の話を中心に、IGPI設立後、2007年に出版されたのが「会社は頭から腐る」
2012年に出されたのが「結果を出すリーダーはみな非情である」です。

刺激的なタイトル名だったので、覚えてらっしゃる方も多いかと思いますが、実際に講演等で話をお聞きしても、低成長に甘んじている日本企業への指摘はかなり辛辣で厳しいものでした。
経営状況がどん底までいった企業、修羅場の再生をこれまで長く担ってこられただけに、その言葉一つひとつに重みがあります。

RE‐Engineering Partners代表 稲田将人 さん

前回紹介した「経営トップの仕事」を書かれた稲田将人さんも、ストーリー仕立ての経営立て直し物語「戦略参謀」を書かれています。

紳士服チェーン「しきがわ」の経営改革を外部から招聘された経営企画室長と若き営業マンで担っていく話ですが、抵抗勢力というより改革をつぶそうと陰謀をたくらむ専務とのやりとりはまるでサスペンス物語です。

実際の中堅企業やオーナー企業の現場や幹部の間では、こういったドロドロした話が経営改革の成功の半分を占めるのかもしれませんね。
 (稲田さんは社内に潜む「地雷」「憑き物」と名付けています)


元ブリヂストンCEO 荒川詔四さん

最後に、コンサルタント出身ではなく、大企業の秘書室や経営企画部門、グループ会社で参謀として活躍され、その後、ブリヂストンのトップになられた荒川詔四さんの「優れたリーダーはみな小心物である」「参謀の思考法」を紹介しておきます。

ブリヂストンと言えば、1988年に米国2位のタイヤメーカー「ファイアストン」の買収が有名ですが、当時、荒川さんは社長秘書課長として本件に関わられていたそうです。
その後、タイ法人、ヨーロッパ法人、そして本社CEOの経験から紡ぎ出された、グローバル大企業の参謀・経営トップとしての考え・思考法は、一般の企業人にとっても非常に参考になるのではないでしょうか?

参謀の思考法 【目 次】から
 第1章 上司は「機関」と考える
 第2章 すべては「合目的的」に考える
 第3章 「理論」より「現実」に学ぶ
 第4章 「原理原則」を思考の軸とする
 第5章 人間関係を「達観」する

最後に

前回のnoteに書いた「問い」ですが、皆さんご自身はどうでしょうか?

皆さんはどのタイプの戦略参謀になりたいですか?
それとも、規模は小さくとも経営トップを目指したいですか?

ちょうど、Predsident オンラインに参考になる記事がありました。

アドラー心理学カウンセリング指導者の岩井俊憲氏はこう切り出す。
では、その違いはどこにあるのか。
「ひと言で言うと、
 将は猪突猛進型の『ドライバー』人間機関車のようなタイプ。
 対する参謀は自己抑制的な『コントローラー』で、完璧主義者という
 特徴があります」

当然、リーダーシップにも様々なタイプがありますので、一概には言えませんが、将と参謀の絶妙な組合せによって成功している企業は昔から数多いようです。
皆さんも一度、自己分析されてみてはいかがでしょうか?

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