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【ちょっと昔の世界一周】 #13 《私の旅の必需品》

バスターミナルから宿へは順調に戻ることができた。

行きのことがあるので昼食を取りながら地図を確認していたが、よく見てみると宿の主人が言っていた【真っ直ぐ】行く道が違っていた。

私が通っていたのは街の中で一番広い大通り。
宿の主人が伝えたかった真っ直ぐの道は、宿を出て大通りとは反対に向かった先の通りの方だった。

確かにその道を通り戻ってくると30分もかからず見慣れた街並みが見えてきた。

昨日着いたとはいえ宿が近いというだけで安心感がある。

さすがに歩き疲れたので宿に戻り一休みしようかとも考えたが、明日にはサワンナケートから移動する予定。

昨夜、そして朝の食堂のようないい出会いがもしかしたらあるかもしれない。

そんなことを考えたら、せっかくならもう少し見て歩こうと思えてきた。

今度は迷子?にならないように宿を中心に歩いてみることにした。

とはいえ、大通りはさっき歩いたからなんとなく雰囲気はわかっている。
なら大通り以外を見て回ろうと思い路地を歩き出した。

ラオスはタイと同じように仏教が浸透している。
その為、街中にお寺のような建物がよくある。

街並みに馴染んでいる寺院は日本とはまた違う雰囲気がある。

『いい風景だな…』

カメラを取り出し撮っていると近くで子どもが遊んでいる声が聞こえてくる。

声のする方に目をやると数人の子どもたちが土手に集まっている。

手には紐の着いた木の棒。
雰囲気から察するにザリガニ釣りのようなことをしているようだ。

国は違えど子どもの遊びは似ているな…
自分の子どもの頃を思い出しながら様子を見ていると、向こうもこちらに気づいたようだ。

「サバイディー!」

声をかけると

「こいつ、挨拶してきた!」

といった感じで喜びながら集まってきた。

「何撮ってんの?」

とでも言いたいのだろうか。
みんなカメラが気になる様子。

撮った写真を見せると大喜び。

せっかくだからと思い、写真撮っていい?と聞いてみると、私たち?といった感じでかしこまってポーズをとっている。

何枚か撮り見せてみると、みんな大喜び。

考えてみれば、見ず知らずの外国人に写真を撮ってもらう。
大人からすれば色々と考えることがあるが、好奇心の塊である子どもたちにとってはとてもワクワクすることだろう。

こちらとしてもカメラマンでもなんでもない、ただの旅人の撮った一枚にこんなに喜んでくれる姿を見ることができて嬉しい気持ちになる。

朝の食堂でもそうだったが、言葉は通じなくともお互いがなんともいえない良い関係を持てる。
写真はひとつのコミュニケーションツールとして素晴らしいかもしれない。

時間にしてみればわずかだが、これまでの旅の中でもとても意味のある時間を過ごすことができた。

子どもたちと別れ、再び歩き出した私は温かい気持ちになっていた。

さらに進むと開けた場所にでた。

ラオスに入国してから、日本・さらにバンコクとは違い景色が透き通っている感じがしていた。

自然が多い、そして車やバイクなどの排気ガスがないことも影響しているのかもしれないが、こういった見通しの良い場所に来ると余計にそう感じる。

青空と草原。
なんとも心が落ち着く感じがして写真を撮っていると、後ろから
「ヘーイ!」
と声をかけられた。

振り返ると広場で遊んでいる子どもたちがいた。

先ほどの子どもたちとは違い、自分たちからグイグイ声をかけてくる。

「ヘイ!フォト!フォト!」

自分たちも撮ってくれないか。そんな雰囲気が漂っている。

試しに一枚撮って見せると、やはり大喜び。

道路と広場の間には柵があったのだが、所々隙間があるので何人かはさらに近づいてくる。

もう一枚撮って見せるとさらに大喜び。

「チャイナ?ジャパン?」

大人も子どもも同じ質問をするようだ。
そんなことを思いながらしばらく写真を見せていると、満足したようでまたみんなで遊び始めた。

子どもたちと接するとテンションの高さに多少は疲れるものの、元気をもらえる気がする。

『こういう街歩きもいいな…』

そんな気持ちになって歩き出すと、その様子を見ていた女の子二人組が

「フォト…?」

と自分たちを指差して声をかけてきた。

「OK !!」

もちろん撮って画面を見せる。

二人とも笑顔でサンキューと言い嬉しそうに歩いて行った。

その後も日陰で休んでいる人たちに挨拶しては少し話をする。
そんなことを繰り返しながら宿に戻ることにした。

気がつけばバスターミナルから戻ってきて2時間ほど歩き回っていた。

『楽しい出会いがたくさんあってよかった』

なかなかいい街歩きになったと思い、宿に戻る。

フロントには女将さんが赤ちゃんをあやしながらおしゃべりの真っ最中。

明日は出発が早いから、先に支払いができるかと思い話しかけてみると問題ないとのこと。

ちょっと待って。と言い帳簿を取りに行ってくれた。
その間赤ちゃんは女将さんの知人と遊んでいる。

赤ちゃんなりに自分たちとは違うと感じているのか、私の顔をジーっと見てくる。
すると、あやしていた知人がほっぺたをプニプニし始め喜び出した。

お前もやるか?そんな感じで赤ちゃんを私の方へ近づける。

赤ちゃんのほっぺたをプニプニするなんて、なかなか魅力的。
それにその子はそうされるのが好きなのか、私がやっても喜んでいる。

女将さんが戻ってくる頃にはすっかり上機嫌の赤ちゃん。

支払いを済ませ部屋に戻る前に先ほどまでの流れで一枚撮らせてもらった。

部屋に入るとすぐにベットに大の字になる。

はっきり言って疲れた。
今までで一番歩き回った日になった。

だが、ポケットからカメラを取り出し写真を眺めていると、そんな疲れが吹き飛ぶようだった。

『言葉が通じなくとも、気持ちは通じる。こいつ(カメラ)は自分の旅には必需品かな…』

はっきり言ってサワンナケートという街にあまり興味はなかった。
しかし私にとってサワンナケートという街は、不安も喜びも含めたくさんの経験をさせてくれた特別な場所になった。

次の目的地はパークセー。
果たしてどんな出来事が待っているのだろうか。

一つ言えることは、人との関わりが私にとって一番の旅の醍醐味なのかもしれない。
その為の秘密兵器とも言えるカメラを見つめながら、これからの旅を想像していた。

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