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はじめて、会社のパンフレット制作担当者になった人が読む本 Vol.2 〜制作の目的を定めておかないと失敗しますよ〜

『何のためにパンフレット作るの』に答えられますか?

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この記事は、企業の広報担当者が読んでためになる記事です。

前回の記事に続き、より具体的なノウハウを丁寧に細かく解説していきたいと思います。

みなさん、5W1H(ゴーダブリュイチエイチ)はご存知でしょうか?随分前に、新人研修で習ったなぁとか、新人の頃に読んだビジネス本に書いてあったなぁとか、多くの方がぼんやりと頭に思い浮かべたことでしょう。

5W1Hとは、

「When:いつ」「Where:どこで」「Who:だれが」「What:何を」「Why:なぜ」「How:どのように」

これら英単語の頭文字を取ったものです。

誰かに伝えたい内容を、この要素に沿って考えを構成すると、効率よく情報を整理でき、第三者に伝わりやすくなります。結果、コミュニケーションが円滑に進みますので、ビジネスの現場では基本の考え方として用いられています。

当然のことながら、多くのビジネスパーソンは、当たり前のように、この5W1Hを用いて物事を考え、伝える習慣がついていることでしょう。

実は、会社案内パンフレットやカタログなどの、会社の販促ツールを作成するときにも、この視点を用いて、より具体的に制作の目的や用途をまとめることが、非常に役立ちます。

私たちは、日常のデザイン制作の現場にて、会社案内パンフレットの制作を任されたという企業の担当者様に、かならず、制作の目的を確認します。まず最初に、必ず聞くといっても過言ではありません。

その際に、この5W1Hに沿って尋ねてみますが、明確にお応えいただけないケースも多々あるのです。
そこで今回は、会社案内パンフレット制作の目的の定め方について、具体的に解説していきたいと思います。

実は、ここ(制作の目的)がぶれてしまうと、最終着地点がぶれてしまうので、最初に明確に設定すべきポイントです。

たとえば、目の前の芝生の上に着地しようと思ったのに、明後日の方向にある、冷たい池の上にポッチャンと落っこちてしまったらガッカリしますよね。実は、制作の現場では、このような失敗例が、しばしば起こります。

これは避けたくないですか?

よって、Vol.2では、会社案内パンフレットやカタログ制作をはじめる際に、一番最初にきちんと抑えておきたいポイント、『制作の目的の定め方』について解説していきますので、ぜひ、最後までお読み下さい。最後に、パンフレット制作の目的を定めるためのチェックシートも掲載しています。

プロジェクトがスムーズに進行できるようになると思いますので、ぜひ、全文お読み下さい。

(全文の文字数:6,221文字)

制作の目的と目標は違う

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まず最初に、会社案内パンフレットまたはカタログ(以下、パンレットと略します)の制作の目的について説明していきます。

ここで抑えておきたいのは、目的と目標は異なるという点です。

極めて単純な国語の問題ですので、その言葉の意味の違いは異なることは、誰もが想像できるでしょう。

しかし、『目的はなんですか?』『目標はなんですか?』と尋ねると、わりとお答えいただけない場合があります。これまで、パンフレットの制作の目的や目標など、定めた事が無いというのが真実なのでしょう。

必ず、会社案内パンフレット(またはカタログ)を作ろうと考えたキッカケがあるはずです。

例えば、

●顧客に質問された時にお渡しするために必要だから。
●会社案内パンフレットくらいはないと困るから。
●上司に作れと指示されたから。
●営業マンが顧客に持っていくため必要だから。

などなど…。

上記のようなキッカケで作る事が決まりますが、この時に、より具体的な目的設定が必要です。

しかし、この目的設定がちゃんと明文化されずにプロジェクトが進行している様子を、よく目にします。冒頭でも説明しましたが、最終着地点を定めずダイブすると、だいたい明後日の方向に行ってしまいます。

パンフレット制作の現場でも、一番最初に目的と目標の設定がもっとも重要なのです。

それでは、ここから、目的や目標の定め方を具体的に解説してきます。

ちゃんと目的を定めよう!

パンフレットの制作の目的の定め方

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この章では、制作の目的の定め方を説明いたします。(長くなりますので目標の定め方は次回の記事に回したいと思います)
企業のパンフレット制作の担当者さんは、できる限り、下記の内容で目的をまとめてみてください。

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それでは、最初に述べた5W1Hに沿ってまとめていきましょう。

「When:いつ」「Where:どこで」「Who:だれが」「What:何を」「Why:なぜ」「How:どのように」

Ⅰ.When:いつ
そのパンフレットは『いつ』配布するものなのか?


まずは、営業のステップをイメージしてみましょう。

新規顧客もしくは既存顧客(以下、顧客)から新たなお仕事の問合せがあり、そのサービス(もしくは製品購入)が成約になるまでのステップには、いくつものハードルがあります。

  1. 顧客に製品やサービスについて口頭で説明する

  2. 興味を示したらメールなどで資料を送る

  3. または、郵送にて資料を送る

  4. ステップメールなどを送る

  5. ダメ押しで電話でセールスする

これらのように、いくつものアプローチの山を乗り越え、顧客に納得いただき、顧客の気持ちが温まった段階でようやく成約へのステップへと進みます。

この一連のステップの中で、顧客の気持ちはユラユラと揺れ動き、売り手側は、まだかまだかと、機が熟すのをひたすら待つばかりです。

そのため、その一連のステップの中の、どのタイミングで配布するパンフレット(カタログ)なのかによって、その内容は大きく異なります。

例えば、顧客の気持ちが、まだ温まっていない段階で分厚い取扱説明書のようなカタログを送ったら、顧客はどうでしょうか?ちょっとした軽い気持ちで資料請求したのに、読み込まなければ理解できない資料を受け取ることで、急に熱が冷めてしまうかもしれません。

それよりも、最初は、サービスや製品の概要が簡単に理解出来、顧客自身が得られるメリットが簡単に想像できるパンフレットのほうが、最初のステップには適している場合もあります。

次に、途中で顧客に渡すパンフレットは、他社の活用事例やお客様のレビューなどがまとめられたものが効果的な場合があります。最初にお渡しした資料よりも、より具体的なサービス(もしくは製品)の像がイメージできるようになります。

このように、大事なのは、どのタイミングでお渡しするパンフレットなのかを想像して「When:いつ」を設定することです。

まずは、今取り組もうとしているパンフレットを、『いつ』配布するものなのかを定めてみましょう。

どのタイミングで配布するのか、決めよう!

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Ⅱ.Where:どこで
そのパンフレットは『どこで』顧客に配布されるのか?


次に『Where:どこで』の設定をしていきましょう。

そのパンフレットは、どんなシーンで顧客に手渡されるものなのかを具体的にイメージしてみます。顧客にパンフレットを配布するシーンはいくつかありますが、概ね、以下のシーンが考えられます。

  1. 新規顧客に郵送で送る

  2. 新規顧客に手渡しで渡す

  3. 街頭配布する

  4. 展示会でばら撒く

  5. 既存顧客に郵送、もしくは手渡しする

  6. 飛び込み営業で新規顧客に手渡す

配布方法は①郵送と②手渡しに分けられ、ターゲットは①新規顧客と②既存顧客③不特定多数、に分けられます。

このように、配布の仕方によって、ターゲットも違えば、受け取る相手の条件も異なります。特に、貴社の事を全く知らない相手に渡すのと、すでに取引があり貴社をご存知の方に渡すのでは、相手の印象もまるで異なるでしょう。

特に注意が必要なのは、郵送の場合と手渡しの場合の違いです。

郵送が多いパンフレットの場合は、基本的に相手との距離は、かなり遠いと考えるべきです。しかし、目の前の相手に手渡しするのであれば、その場で発生した質問にも、すぐ回答できるので、相手との距離は近いと考えます。

とくに、相手との距離が遠い場合は、できるだけ具体的にわかりやすい内容にするべきです。その場で、口頭説明できないので、顧客が読み進めていく中でストレスを感じない程度に文章をまとめる必要があります。

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Ⅲ.Who:だれが
そのパンフレットは『誰が』顧客に渡すものなのか?


これは、2の『Where:どこで』のシーン設定にも重なります。

会社案内パンフレットとは、概ね、新規取引を増やすために活用するツールです。そのため、必然的に、使うのは営業に携わる方が多いことでしょう。

しかし、営業担当と一言でいっても、様々な立場の人がいることを想定しておかなければなりません。

企業には、新人営業マンからベテラン営業マンまで、様々なスタッフが営業に携わります。

それゆえに、それぞれのスタッフの知識の量により、顧客への説明はマチマチになってしまいます。もちろん、経営者であれば、サービスや製品を隅々まで熟知していますので、『どんな質問でももってこい!』かもしれません。

しかし、常に豊富な知識を持つ営業担当者がパンフレットを使って説明できるとは限りません。

そのため、どんな立場の人が使う事が多いパンフレットなのかを、ちゃんと定めて作成することが必要です。サービスや製品知識の少ない(新人の)営業担当者が使用しても、パンフレットが彼らに代わって説明してくれるようなパンフレットになっていなければなりません。

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Ⅳ.What:何を
そのパンフレットは『何を』説明するものなのか?


次は、いよいよ内容に触れる『何を』について説明していきます。

よく、お客様から、パンフレットの内容は何を入れればよいか分からないといった質問や相談が多く聞かれます。パンフレットは必要なのだけれど、いざ作ろうとすると、その内容を吟味するのは、とても難しいものです。

入れたい内容が多すぎたり、逆に、入れる内容が少なすぎて伝わりにくかったりと、ちょうどよい内容まで吟味するのは、意外に骨が折れます。

そんな時は、『何を』説明するものなのかを、一度整理することが必要です。

  1. 会社の概要を説明する

  2. 求人情報を説明する

  3. サービスを説明する

  4. 製品を説明する

  5. キャンペーン商品を説明する

概ね、内容は上記の5つに分けられます。会社の概要+製品の紹介など、複数の目的をもって作成される場合もあります。まずは、このパンフレットは何を説明するものなのかを、ちゃんと定めましょう。

その目的にあわせて、掲載する内容を絞り込んでいきます。
具体的な内容の絞り込みの方法については、かなり説明が長くなりますので、次回以降で順次説明していきます。

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Ⅴ.Why:なぜ
そのパンフレットは『なぜ』作成するのか?


パンフレット(もしくはカタログ)は新規成約の獲得を目的として作ることが多いでしょう。(リクルート用に作成の場合は、この章では触れません。次回以降で解説していきます)

ここで改めて『なぜ』作るのかと再定義する必要もありません。
しかし、『なぜ』作成するかのちゃんと定めておくほうがよいでしょう。

  1. 新規顧客への売り込みのため

  2. 既存顧客への売り込みのため

  3. 社内での情報共有のため

  4. 採用活動で求職者に売り込むため

『なぜ』作成するのかは、これまで触れてきた内容を再整理する程度かもしれません。しかし、上記の1〜4については、ターゲットが明らかに異なりますので、ちゃんと定義しておきましょう。

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Ⅵ.How:どのように
そのパンフレットは『どのように』使うのか?


最後に、パンフレットをどのように使うのかについて定義します。

『どのように使うか』とは使用用途です。

これまで、説明してきた「When:いつ」「Where:どこで」「Who:だれが」「What:何を」「Why:なぜ」を総括して、最終的にどのように使うのかを具体的にイメージしておくと目的が明確になります。

例えばこうです。

新規顧客から資料請求依頼がきた時に、最初に郵送で送るパンフレット。遠方の見込み顧客であっても郵送にて送ることができるため、より多くの人にサービス(もしくは製品)の特徴を伝えることができる。より成約率をあげるための販促ツールとして使う。

また、展示会などで不特定多数の来場者にばら撒きで配布するツール。その場で商談に導く事を大きな目的とするが、万が一、商談に結びつかなくとも、後日、改めてメールや電話などでの問合せに結びつくことを目的とする販促ツール。

などです。

ここまで、5W1Hに基づき、4つのWをまとめていくうちに、すでに制作の目的が定まって来ているかと思います。それらをまとめて、最終的な制作用途としてまとめることで、制作の目的が明確になることと思います。

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まとめ(チェックシート)


最後に、これらの5W1Hに基づく目的の定め方を以下のチェックシートにまとめてみました。下記のヒアリングシートを参考にして、制作の目的を定めてみましょう。まとめたものを制作会社さんに渡せば、速やかなコミュニケーションがとれることでしょう。

※当てはまるものを○で囲みましょう。(複数回答可)

1.内容は以下のどれに当てはまりますか?
 1. サービス(製品)の紹介
 2. 会社概要
 3. リクルート用

2.ターゲットは誰ですか?
 1. 新規顧客(見込み客)
 2. 既存顧客(リピーター)
 3. 求職者

3.配布方法はどのようにしますか?
 1. 郵送
 2. 手渡し
 3. ばら撒き
 4. メール添付
 5. 店内設置

4.3で手渡しとした場合、どんな人が手渡ししますか?
 1. 営業マン
 2. 事務スタッフ
 3. 経営者
 4. パートナー企業

5.配布のタイミングはいつですか?
 1. ファーストコンタクト
 2. 追跡フォロー時
 3. 既存顧客の掘り起こし用として
 4. ばら撒き

みなさんのパンフレット制作の参考になれれば幸いです。次回以降も、より具体的な販促ツール制作のノウハウを投稿していきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

執筆者:株式会社ノーブランド 取締役 後藤ようこ
看護師として大学病院に勤務後、看護学校の教員として教壇に立つ。2000年よりWebサイト・印刷物プロデューサーとして数千件以上の制作に関わる。医療職を通して学んだ、心理学・教育学・人間関係論などをベースにした”見る人に伝える”提案型のコンサルテーションを行う。医療系の出版社からの依頼で、定期的に医療記事の執筆も行い、医療ディレクターとしても活躍中。

https://www.no-b.co.jp/





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